.運命による交響曲.
短編が苦手なので、変な所はご了承下さい。
―旅の始まり― 鬱蒼とした木々の葉などの間から見える夜空に輝いているのは幾千もの星。輝かしい星達とは裏腹に今、その下で数人の盗賊に追われて死に直面している一人の少女がいた。
「………はぁっ……はぁ……っ」
走り過ぎて炎症を起こして熱く焼けそうな喉からの荒い呼吸は苦しげに繰り返されて。
棒になったような脚が悲鳴を上げるように痛む。
あれからどのくらい走っただろうか………。気にはなるが、今はそんな事を考える気にはならない。―――いや、考える暇がない…。もう今は盗賊達から逃げるのが最前線で。
「待てえぇぇえっ!!」
背後からの罵声に身体を震わせるも少女は必死で走って。
しかし滔々、追い込まれてしまった。後ろに後退れば………。
そこはとても深く高い……崖。
「………」
少女は蒼白の顔で崖を見て……。――これで、終わり……。
そう思うと涙が溢れて――…。
盗賊達にどうこうされるのなら、死んだ方が増し……。
少女は瞳を閉じて、崖から落ちる準備をした……。
―――…っ……。
宙に身体が浮いた時、少女の意識は闇に呑まれ――…。
「…………ん…?」
確かにあの時、私は崖に落ちた。
意識が飛んでいたせいで、崖に落ちた頃から、意識を取り戻すまでの記憶が無くて。
でも、その間に何かがあったから、私はこうして生きてるのよね…。――でも、どうして……?
あんな所から落ちたら普通……。少女は、ふ、と上を向いた。
とても深くて…とても高い……こんな崖から落ちて死なない訳がない。
と、少女が周りをキョロキョロ見渡していると……。
「……やっと起きたか」
そこにハスキーなハイトーンボイスの声がして。
ふ、と声がした方向に目を向けると、そこにはとても美しい少年のエルフの姿があった。
「……大丈夫か?」
気をつかうエルフの少年に少女はしどろもどろしながら、答えた。
「…は、い……」
―――この少年が助けてくれたのだろうか……。
「……あ、あの……」
「――いきなり、崖から落ちて来て……危なかったんだからな」
少年は前髪を掻き上げて、大きな溜息を深々と吐いた。
と、少女はその少年の仕草を見て何故かその少年を懐かしく感じた。
―――小さい頃、お家の事情で何処か遠い所に引越してしまった、幼なじみ。その子と似ている…。淡い月光のような、金の髪。とても綺麗な宝石の様な、エメラルドブルーの瞳……。
本当にそっくりで………。
――って、まさか!!
「………もしかして…シオン…?」「……ああ」
シオンは少し不機嫌そうに言葉を返した。勿論、不機嫌なのは少女のせいなのだが…。何故ってそれは………。
「……全然、変わってないんだな、クノン。どうせ……余計な事に首突っ込んで、また盗賊に追い回されたんだろ」
見透かした様にシオンは呟く。
勿論、シオンの言った事は、当たっていた……。
―――首を突っ込んだつもりはなかったんだけどなぁ……。
そんな、しょんぼりしているクノンをみて、シオンは苦笑した。
突然、笑い出したシオンをクノンは口をぽかーんと開け見つめる。「………へ?」
「……ククッ…。そうだ、お前に言う事があった。叔母さん達は?」「………へ?」
クノンは質問の意図が分からず、首を傾げた。
―――お母さんの事…?……
お母さんは……。
「………お母さんは、10年前に他界しちゃった。お父さんはその時に私を置いてって何処かに行って…だから、一人暮らし」
―――そう。私には家族がいない。ずっと、10年前から一人ぼっちだった。そう、ずっと。
「………そうか…」
シオンは突然、知らされた事実に残念そうに呟いた。
どこと無く、悲しい表情のクノン。しかし、彼女は直ぐに、笑顔を取り戻す。
「だからって言ったって、悲しみに浸ってる暇がないんだけどね」
曇りのない、太陽のような笑顔と、真っ直ぐ前を、見る瞳。それを見ると自然にシオンも笑顔が零れて。「…お前らしいな。で、頼みたい事がある」
「……なぁに?」
「……だから―――」
「いたぞ!!あそこだっ!!」
シオンの声は、大きな罵声に掻き消された。
反射的に後ろを振り返るシオンとクノン。振り返った先には、先程、クノンを追い回していた盗賊達。
それを見た、クノンは深く溜息を吐いて。
「………また?有り得ないわよぉ……はぁ……」
クノンは、途方に暮れた表情で、肩を落としシオンを見上げた。
シオンはその視線に気付くと、クノンを背に隠して、腰に掛かっていた、鞘から両刃の剣を引き抜き、構えた。
あっという間に、二人の回りにどんどんと、盗賊が集まっていく。始めは数人だった盗賊達が、今では数十人という盗賊の数になっていて。
「クノン、動くなよ」
「あ…、うん」
そんな二人を、盗賊達は獲物を狙う虎の様な、顔付きで睨んで。盗賊達は、じわりじわりと間を詰める。
「その女を…寄越せっ!!」
盗賊の一人がシオンに向かって走り剣を構え、振り下ろす。
シオンはそれを、予め構えていた剣で受け流して。
それと同時に、盗賊達は武器を構え、シオンに切り掛かった。
多勢に無勢の筈だが、シオンはそんな事を思わせない剣捌きで、軽く盗賊達を遇っていた。
そして、あっという間に決着は着いて。
盗賊達は全員、地に転がり気を失い、とても、情けない状態でいて。
シオンは、そんな盗賊達の姿を見て笑いを殺しながら、キィン、と金属音を鳴らし、剣を鞘に戻した。
「………ふぅ…」
クノンは緊迫感から解放され、ぺたん、と地に座り、安堵の声を上げた。
「…よかった…。ありがとね、シオン」
シオンは突然、自分に向けられた言葉に目を見張るも、直ぐにクノンの微笑みを見て、その目は細められた。
幻想的な月明かりの下、爽やかな風が吹いて…。
二人の再会を祝福するように…。
……この出会いはきっと運命だったから……
こんな感じです。続編を書いて欲しい方は評価欄に書いて下さいまし。