異世界チケット使用4枚目。その4
同郷出身の長老、うんちく好きでした。
ここで、おなかがりんごみたいにぽよんぽよんの謎が解けます。
安全ではあるけど、生きていくには結構厳しい世界です。実力主義な世界。
長老ハチェットさんとゲンジおじさんは来客用の部屋からでていき、未だグッタリしているイケメンさんと二人きりになった。
私も疲れた…あんな暴走馬なんて日本で乗ることはまず有り得ない。
「杏子さんも少し横になるといい。仮に寝ても誰か起こしてくれるさ。僕を必死に支えてくれていただろう?助かったよ、ありがとう。」
「そうだね、腰とか痛むし少し横になるね。」
来客用のソファーにお尻が下にならないよう体を横に向けて休むことにした。
かなり疲れていたのかそれからゲンジおじさんにたたき起こされるまで爆睡した。
ゲンジおじさんにバシバシ叩かれ、私とイケメンさんと三人で食堂に向かう。
「ひどいです、あんなにバシバシ叩かなくても起きますから!」
「ゲッゲッゲ! すまねぇな、嬢ちゃん。力加減が難しくてなぁ」
扉をバーン!とまた豪快に開け中に入る。
中にはすでに長老ハチェットさんがいた。
それに妊婦さんがいる、ゲンジおじさんの奥さんかな。
「よし、揃ったようだな。では、席に着いたら乾杯しよう。ンチャックくん、杏子さん、ようこそ<スモーラ>へ。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「二人に紹介しよう、ゲンジの奥さんのタマヨさんだ。もうすぐ赤ちゃんが生まれる妊婦さんだ。」
「ゲンジの妻のタマヨといいます。イノウサを捌くのを手伝ってくれたそうで…ありがとうございます。普通なら今日は山に泊まって帰って来ませんでしたから。お二人が来てくれて嬉しいです。」
ニコニコと話すタマヨさんは、ガサツなゲンジおじさんとは正反対でおっとりしてる。
うん、すごくいい人っぽい。
それにしてもずいぶん若い奥さんだな。小さくてかわいいし、性格も良さそうだし…ゲンジおじさんってもしかしてすごくモテるとか?なんか信じられないわーとかブツブツ言っていたら
「こらぁ、嬢ちゃん!聞こえてんぞ! これでも俺は村ですごくモテるんだぜ! ゲッゲッゲ」
地獄耳だった。
「ははは、杏子さんの世界ではゲンジはモテないタイプのようだな。じゃあ、どういうタイプがこの世界でモテるのか話しあげよう。まず、小人族は男女ともにお腹まわりが素晴らしくデップリしていればいるほど、モテる。さらに狩猟ができれば文句なしの有料物件と言える。基本的に狩猟民族だからだ。
顔や性格なんかは二の次だよ、とにかくお腹まわりのデップリ感が大切なんだ。なぜかというと、この世界に来て太陽を見れたか?曇って見えないだろう?」
確かに真っ白で空が見えない。
「で、原因はいまだに不明だが、不定期に霧が濃くなり過ぎるんだ。今日の霧は、まだ濃いとは言わない程度だ。霧が濃くなる日が続くと狩猟ができない、そうなると食べ物が無くなり飢えていく。
だが、この世界の人たちは独自に体を進化させた。そう、お腹まわりに脂肪と生命エネルギーを蓄え…霧が濃い時期をその蓄えたエネルギーで、少しずつ使いながら不猟期を乗り越えるんだ。余剰分は他人に分け与えることもできる。だからゲンジのようにはちきれんばかりの体型は、女性からは憧れの対象。すごかったよ! ゲンジの争奪戦は。」
えー、そんなにモテモテだったんだ…。
「それにタマヨさんはああ見えて弓の達人でね、お互い狩猟の名人同士のお似合い夫婦だ。で、今まで話しをして気がついたんだが…ンチャックくん、君は検索をかける時に、自分が女性にモテる世界という選択肢を入れなかったのか? その方が恋人が見つかる可能性は高いと思うが。」
長老ハチェットさんが、ほとんど息つぎなしにモテる秘訣など話してくれた。
早口すぎて、ほとんど理解できなかったけど、この世界でイケメンさんが女性にモテるのは難しい、てのは分かった。長身だけど、どっちかっていうとガリガリだもんね。
「あぁ!」
突然叫ぶイケメンさん。
「あ?」「あ?」「え?」
みんなキョトン。私だけ激しくデジャヴュ。展開が読める…
「あぁ~! またすっぽり抜けてた~なんてことだ…」
やっぱり…女性優遇洗脳教育のせいか、恋愛のことに関してまず基本的なことから教えないとダメかもしれない。こんな調子じゃ、理想の恋人探すなんて残りのチケットの数じゃ絶対足りない!前途多難…
うわぁ~と頭を抱えるイケメンさんを、まあまあと宥める長老ハチェットさんとゲンジおじさん。
でも二人とも顔が笑いたくて引き攣ってますよ!もう、いっそ笑ってあげて…
こうして騒がしい夕食会は、またまたイケメンさんのドジぶりを披露して終わった。
料理は、お肉メインでとてもおいしかったです。騒がしくてあまり食べた気はしなかった…
明日は、村を案内してもらえるみたいで楽しみ!では、おやすみなさい!
長老、説明お疲れさまでした。半分もできてないけどね!いつまでふたりがこの世界に滞在するかわからないのでとりあえず最低限教えました。
イケメンさん、いろいろ常識が抜けてます。女性に尽くすことが素晴らしいと称賛される世界だったから、自分が好かれるという可能性を想像できなかった。
好意にどう対応していいかきっとわからないでしょう…杏子のことも憎からず思ってはいるようです。恋愛と友情の狭間で揺れてる。そして杏子は…彼がまったく恋愛の対象外(笑)彼女の恋人は、脳内に住んでいる架空の人物の疑いアリ。そういうのもおいおい出していきたいです。
明日は二人で村の見学です。