異世界チケット使用4枚目。その3
脱字がちょいちょい見つかり凹みます。
その都度直してますのでご了承ください。
いったいどれくらい駆け抜けたのか、山を抜けると急に開けた場所に出た。
きちんと周囲を石で組んだ壁に囲まれていて、村と言うにはかなり立派だった。
文化的にも魔法の世界よりは発展してそう。
狩猟民族なんだろうか、村の人はみんな狩人のスタイルだった。
そして全員おなかがリンゴみたいにコロコロしてる。
男女関係ないってことはこの体型が標準ということか…異世界って本当に不思議がいっぱいだ。
そして、村の施設や住居など確かに立派なんだけど…全体的に小さい!
とにかくいろいろスモールサイズ。小人族だから仕方ないけど、あちこちで頭を打ちそうでちょっと不安になる。
さすがに村に入ってからは速度を落とし、パカパカとゆったりと進む。
大きい私たちが珍しいのか、すごく注目されてる。特にンチャックさんに対する注目がすごい。
村にいる知り合いと関係があるのかな?
「ゲンジさん、どこに向かってるんですか?何も聞かされずいきなり馬に乗せられたし…ンチャックさんも具合悪いし、先に休めるとこに行きたいです。」
もはや口も聞けないイケメンさん。
血を見て目を回した挙げ句、暴走馬に振り回されダウン状態なイケメンさん。
今にも砂になりそう、体を鍛えたんじゃなかったの?って大いにツッコミたい。
「あぁ。心配すんな、嬢ちゃん! 長老んちで挨拶済ませたら、そのまま兄ちゃんも休めるぜぇ。長老んちじゃねぇと、村の宿じゃ小さすぎてお前ら絶対頭打つぜ。」
ゲッゲッゲと笑いながら村の奥へと進む。
すると、目の前にいきなりスモールサイズじゃなく、逆にかなり大きな建物が見えてきた。
なんというかアパートのような集合住宅っぽい感じ。この村じゃ珍しい建物じゃないだろうか…
「あれが最長老他、俺らより身長が大きい奴らが住む家だ。馬を繋ぐから待ってな!」
ひょいと馬から降り、馬を繋いでイケメンさんを肩に担いだ。次いで私も降りる。
かなりの強行軍で尻は痛いわ腰は痛いわ、早く体を休めたい…乗馬なんてしたことないんだから!
「よっしゃ、こっちだ。お~い!長老!長老いるかぁ?長老の親戚連れてきたぜ!ゲッゲッゲ」
また扉を豪快に開け、ドカドカ中に入るおじさん。
「なんだ?うるさいぞ!あぁ、ゲンジか…背中に担えた奴とそちらのお嬢さんは<旅行者>か?こりゃまた珍しい。」
長老と呼ばれ出てきた人は…イケメンさんよりさらに背の高いダンディなおじ様だった。
おなかまわりがゲンジさんと同じで、残念なことになってるけど。
雰囲気が似てる、イケメンさんと同じ世界の人だ。
「まずはようこそ、小人族の村<スモーラ>へ。君達を歓迎する。私は最長老のハチェット・ツハイダーだ。そこでぐったりしてる若者もツハイダーだろう? あぁ、君が想像する通り彼と私は同じ世界の者だ。ただ親戚とかではなく…。」
頭をポリポリかいて唸っている。
「それはあとで説明するとして、とにかく彼を休ませた方がいいな。来客用の部屋を貸すから使いたまえ。こっちだ」
ゲンジおじさんからイケメンさんを受け取り、部屋へ案内してくれた。
イケメンさんをベッドに寝かせ、頭に冷やした手ぬぐいらしきものを乗せる。
「済まない…少し休んだら、マシになるとは思うんだが…」
「気にしなくていいですよ、その代わり、私が倒れたときには看病してくださいね!」
異世界移動を繰り返し、一緒に行動してるうちに…、なんだか放って置けない存在になってしまったなぁ…恋愛要素は皆無だけど。
「ああ、その時は豪快絢爛に看病してあげよう! 任せてくれたまえ。」
顔色悪い人に言われてもまったく嬉しくない。
「ほほう、ずいぶんと仲がいいんだな? ひょっとして恋仲か?」
いきなり会話にハチェットさんが入ってきた。
イケメンさんが真っ青な顔から、真っ赤な顔に変わった。
「きき、杏子さんはぼ、僕の恋人探しにつきあってくれてる異世界のゆ、友人です。こ、恋仲なんてそんな…」
ベッドの上でモジモジするイケメンさん。
吃りすぎだし、なぜ顔を赤くするの!いつそんな恋愛フラグ立った?立ってないよね!
ギッと私はイケメンさんを睨んだ。
そのやり取りを見てハチェットさんが爆笑していた。
「ははは、からかって済まない。やはり同じ世界の者はからかいやすいな! ぶははは!」
ハチェットさんが笑いのツボにはまったらしく、プヨプヨなお腹を抱えて悶絶している。
なんだろう、このデジャヴュ。イケメンさんの世界には残念なタイプしかいないんだろうか…
「ああ、そういえば君の名前はゲンジから聞いたよ。ンチャック・ツハイダーだったね。年齢はいくつか数えているか?」
急にキリッと話し出した。切り替えがすごい。
「年齢は100を越えた辺りから数えてないです、多分300はいってないとは思いますけど。」
からかわれてムッとしていたけど回復してきたみたい。
年齢を聞いて、ふむ…と少し考えてからこう切り出した。
「じゃあ、君が崇拝していた女性はイザベラか?」
「「!!」」
私とイケメンさんは目を見開いた。
「やっぱりイザベラの被害者か…どうせイザベラに無理難題吹っかけられて、挙げ句振られたか約束を破られ自棄になって異世界旅行にでも出てきて恋人探しでもしようと思い立ち、巨体な女性しか恋愛対象に見れないと思い込んでるから、検索条件はそうだな…たぶん<巨乳で巨体とか体重200キロ以上とかの女性がたくさんいる>じゃないか? どうだ、アタリだろう。じゃないとこの世界にはなかなか<旅行者>は来ないからな」
どうだこの推理!と言わんばかりのいい笑顔でイケメンさんを見る、どこの探偵ですか!しかも全部アタリだし。
「なぜ僕に起きた事柄を見てきた様に…」
茫然とするイケメンさん。そうだね、私もびっくり!
「答えは単純さ、私が似たような状況でこの小人族の世界に来たからだ。ここにいるゲンジは<旅行者>である私を保護してくれたんだ。ここに来る前、一緒に旅行中のイザベラに殺されかけてね、とっさに帰還用に隠し持っていたチケットで移動したんだが、移動に精一杯で山の頂上付近で倒れてたらしい。随分前の話だが、思い出すだけでも忌々しい。」
苦々しい表情で当時を思い出しているんだろうか…かなり怖いです、最長老ハチェットさん。
というかゲンジさん、奥さんのとこに行かなくていいの?お肉が痛みますよ…
イザべラ、殺人未遂容疑か…待てよ?確かチケット使って帰ってこない人たちが結構いるって言ってたよね、ってまさか…まさかだよね。私がグルグル考えているとハチェットさんが話の続きを始めた。
「じゃあ、どうして親戚でもない私と彼が同じ名前なのかそろそろ話してあげよう。多分聞いたらかなり不愉快になるかもしれないが…いきさつはこうだ。イザべラは、昔から究極に面倒くさがり屋だ。いちいち言い寄ってくる男の名前を覚えるのも面倒くさがる。そして、彼女はこう考えた。名前を統一しようと。たまたま当時の一番のお気に入りが私だっただけで、イザべラ担当の彼女に関わるものすべての名前は「お気にのツハイダーで統一ねー!」と勝手に決めたんだ、いい迷惑だったよ。1000人以上の男たちといきなり名前を統一されたからな。それは誰にも知らされてない事実だ。そしてそれを聞いた他の女性も真似して、世界の名前が極端に偏ることになった。女性崇拝教育には邪魔だから秘密にされてるが。それを変だと思うものも誰一人いないんだ。腐ってる、あの世界は。」
ケッとやさぐれる長老。ちょい悪長老ですね!
でも話してすっきりしたのか
「じゃあ、彼の体調がよくなったら食堂に来てくれ。いっしょに夕食を食べよう。食べながら、この世界のことを話してやろう。」
と言い部屋を出て行ったのだった。
ものすごく傍若無人な元の世界の女性たち。なにか罰が当たってもいいと思う。
へたれで残念な性格は代々受け継がれるのかもしれません。女性には逆らえない呪いでもかかっていそう。
次回、長老がしゃべくります。