異世界チケット使用4枚目。その1
次は、イケメンさんの恋人探しのための世界に行きます。
世界の探索の前に少し休憩を挟みます。
霧に囲まれたところに放り出されました。ここは治安はそれなりですよ…
異世界チケット4枚目使用
<検索条件:体が大きいのが普通、男女平等に存在。体重制限なし。治安はそれなり>
移動用のぐにゃぐにゃ空間から出てきた私たち。
は~、全力疾走なんて学生時代以来だわ、息を整えながらとにかくぺたんと座り込む。
まわりを確認する力が出ず、さっきの追いかけっこの理由を問いただす。
「もうっ、なんで舞台に上がってカツラをばら撒いたんですか? 普通に寄附すればよかったのに!」
「いや、最初は気前よく寄附して祭を見て次の世界に行くつもりだったさ。ただ袋の中身を確認した人が統治者を呼びに行ってね。そこから次の統治者になってほしい!とか言われて困ったんだよ。そこで舞台にエントリーした者として上がり、カツラをばら撒いた隙にこっそり逃げようかと…そしたら、あんな騒ぎになってしまった。まさか追いかけてくるとまでは僕も思わなかったよ…。」
珍しくグッタリしてるイケメンさん。
なるほど、あれだけ大量のカツラを見て後継者にって思っちゃったのね…ってそれって私が魔法で出したカツラだから、もし捕まってたら私が後継者だった?!…危なかったぁ。
次の異世界に無事に来れて本当によかった…しかし霧がすごくて隣にいるイケメンさんしか見えない。よく見えて1メートル先まで、真っ白。
「で、ナビさん。僕が選んだ世界はどんなところかな? ここに着いた時から感じていたけど、空気が少し薄いんだが。霧もすごいし」
----霧のせいでうまくシステムが作動しないようです。この世界の詳しい内容が不明瞭です。原因を調べてますのでお待ちください。それとここは少し標高の高い山の頂上付近です。郊外で安全な場所がここしかありませんでした。近くに山小屋がありますから、まずはそこで休まれてください。現在は狩猟シーズンではないため山小屋には誰も近寄りません。下山すれば麓に村があります。そこに検索条件に当てはまる女性がいるかと思われます。----
「んー、とにかく霧が晴れないことには動けないか…。とにかく山小屋を探そう。」
手探りで付近を探すと小さな山小屋があった。
カギなどもなく避難場所も兼ねてるみたい。
中に入ると小さな暖炉があり、簡易二段ベッドもあった。
霧が晴れないと最悪ここでお泊りかなぁ?
テーブルと椅子もいくつかあったので、埃を掃って座る。
しかし小さいなテーブルと椅子。小学校サイズくらい? なんかあまりいい予感がしない…
このへたれ泣き虫イケメンさんと、強引に異世界旅行するはめになった彼の恋人探しで…気になることがいくつかあった。
霧が晴れるまで暇だし、この際全部聞いてみよう。
「あの…、いくつか聞きたいことがあるんですけど…質問に答えてもらえますか?」
「ん? 別に構わないが、どんなことを聞きたいのかい?」
長身なイケメンさんに、小学校サイズな椅子は辛いらしくずっと立って外を見ている。
「まずひとつ目は、どうして超太めな女性にこだわるんですか? 見た目だけでなく、性格も重要だと思いますよ? 仮に見た目が叶っても、我が儘な性格や傲慢で高飛車なだったら恋人や伴侶とするにはオススメできません。」
35歳独身女にだって彼氏がいた時はあったのだ。
そして人は外見より内面が大切だとしみじみと実感した。男運が無いとも言うけど。
「そうだねぇ…改めて聞かれると返事に困るな。何しろ生まれてからイザベラや、僕の世界で生きてる女性たちはすべてにおいて美しい! と教育されてきたから…どんなに巨体でも理不尽で我が儘で傲慢でも、それを許す度量の大きさが男らしさだと…だからこだわるというより頭に刷り込まれてるのかもしれないね」
「なんですかそれ! 世界ぐるみで洗脳じゃないですか! ンチャックさんの世界の男性たちが不憫過ぎます…」
なんか泣けてきた。
「杏子さんが泣くことはないよ。本当にキミは優しいね、ありがとう。確かに女性を神聖化し過ぎるって女性優遇反対派もいるにはいるけどね。圧倒的に女性優遇派が反対派を上回るから。イザベラに振り向いてほしくて、どんな無茶苦茶な要求もこなしたよ。最後はお姫様だっこできたら一緒に異世界旅行に行ってくれる約束だったんだ。だから僕は体を鍛えに鍛えて400キロのイザベラを見事にだっこしたさ! なのに気まぐれで約束は破られた…あの時みっともなく泣いてしまったのは、長年知らず知らず溜まった鬱憤が吹き出したんだろうね…」
泣きそうな表情でグッと堪えているイケメンさん。
「…みっともなくなんてないです! 悪いのはイザベラで、ンチャックさんは少しも悪くない!」
あまりに報われないイケメンさんに抱き着いて号泣してしまった。
彼は優しく頭を撫でてくれている。こんなに一途な(洗脳された一途さ)イケメンさんを翻弄したイザベラに憎悪と嫌悪感がさらに増した。
許すまじイザベラ!とその他の女達!
「あ、もうひとつ聞きたいことがありました。ンチャックさんって、長命種族じゃないですか。恋人になる人が長命じゃなかったらどうするんですか? というか、検索条件に同じくらい長命ってのも入れた方がよかったんじゃ?」
と言った途端、ピシッと固まってしまった。
「…あ」
「あ?」
「すっぽりそのことが抜けていた! なんてことだ…」
イケメンさんは私から離れ、ヨロヨロとへたりこんでしまった。
やっぱり…だいぶ残念なイケメンだった。普通最初に条件に加えなきゃ…
----お話の途中申し訳ありません。緊急事態です。武器を持った何者かが山小屋に向かってきています。この霧のせいでまわりの状況が把握できません。十分ご注意ください----
えっ、武器持ってるの?!
来て早々いきなりピンチ?
二人で小屋の隅に移動して息を潜める。
「狩猟シーズンじゃないのに武器を持っているとは何かありそうだな…杏子さんは僕の後ろに隠れて…」
イケメンさんの後ろで、身を小さくしバクバクする心臓を落ち着かせようとしたその時…
バンッと山小屋の扉が開いた。
まだまだ続きます。
節電対策で暖房切って執筆してたら、指が動かなく…室温…10℃?!
寒いはずだわ・・・・