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特別番外編:新婚旅行は危険な香り:7

 ひりひりする頬をさすりながら、ムキムキ男だらけの会場をあとにした。

 非常にイケメン夫のご機嫌が良くない。

 こ、怖くて上を見れないので、俯いて歩いてしまう。

 というか、ここはどこなんだろう。

  さっきの会場も北欧系とかの選手ばかりだったし、ヨーロッパなのかなぁ?


 空気を読んでるのかナビさんの声もしないし、次はどこに行けばいい?

 せっかくの新婚旅行なのに、なんだか大変なことになったなぁ。

 確かにマリウスさんの筋肉に見惚れたのは事実だけど、あれは何と言うか…アイドルを見つけた様な気持ちであって…こんな言い訳してもきっと理解できないよね。

 困ったなーと唸ってたら、突然止まったイケメン夫にぶつかった。


「杏子さんは、ああいうムキムキ筋肉男がいいのかい? それとも短髪? それとも…」

 え?と顔を上げたら、彼が滝のように涙を流していた。鼻水まで…久しぶりにみたよ、その顔。

 一番初めに出会ったころを思い出しちゃった。


「僕は太れない体質だから、あんなムキムキにはなれないし」

「うん、そうだね。あんなにムキムキだと逆に好きになってないと思う」

「え?」

「だから…マリウスさんに見惚れてたのは、よく読んでたファンタジー小説の主人公にそっくりだったの! テレビに出てる俳優さんに会ったような感覚で…」


 別に好きとかじゃないよって…全部言わせてもらえなかった。骨!骨が折れそう。

 抱きしめるというより、もはや締め技に近い。

 意識が遠のく。


 --ンチャック様、そのへんで止めておいた方が。杏子さまの意識が---


「わあっ、いけない。大丈夫? なんだ、そういうことだったんだ…よかった」

 心底ほっとしたという表情の彼を見て、とりあえず私の命の危機は脱した。


 ---仲直りされてよかったです。ここは人目が多いですから、移動は車を用意してます---


 ふと前を見ると、黒塗りのハイヤーが私たちを待ってくれていた。

 それに乗り込み、次の目的地に車を走らせる。


「次はどこに行くんだろうね?」

「そうだね。僕はもう嫉妬するようなところには、正直行きたくないよ」

 大会会場からそんなに離れていなかったのか、車はとある場所で止まった。


 ---次はブルー・ラグーンという世界最大の温泉です。汗もかいていますし、ゆっくりされてください---


 ブルー・ラグーンってアイスランドの有名な温泉じゃない!

 ここ、アイスランドだったんだ。

 面積は確か約5,000m²(競泳用50mプール4個分)くらいってテレビで放送してた。

 露天温泉としては世界最大で温泉全体を一周するだけで、10数分かかるほどの広さって言ってたよね。

 深さは場所によってまちまちで、私が溺れるくらいの深いところもありそう。

 こういうとき小柄な日本人って、不便だな。


「すごいよ、杏子さん。温泉の色が青い。いや白くて青い? なんだか不思議なところだ」

「うわー、本当に青いし広い! 人もまばらだね、これだけ広いと多少人数がいても混まないからいいかも」

 確かに温泉に人はいるんだけど、広すぎて閑散としてみえる。


「水着着用か、日本とは温泉の入り方が違うんだ」

 裸で入る日本が特殊なんだな、と再認識しながら水着に着替えて世界一広い温泉に。

「へー、温度も丁度いい! これだけ広いから温いかもって思ってた」

 源泉は70度近いのを温くしてるってテレビ番組で言ってたなぁ。

「広すぎて、湖で泳いでる気分だよ」

 彼の水着はビキニじゃなく、普通にトランクスタイプでホッとした。


「ここは入口近くて結構人がいるから、もう少し奥に行こう?」

「そうだね、大会でむさ苦しい思いしたから…誰もいない方に行こうか」

 ザブザブと二人で温泉を歩く。

 この辺なら誰もいないかな?と一歩踏み出したら


 ガクッ


 急に深くなっていたのに気づかず、落ちた。いきなり深いなんて聞いてないよ!

「杏子さんっ!」

 慌てて彼が救い出してくれた。

「ゲホっ、ゲホ。あー、ビックリした。いきなり深いなんて。水深が深いなら深いって印があればいいのに!」

 両脇を抱き上げられ、助けてもらったのも忘れてしまった。

「助けてくれてありがとう。やっぱり背が高いっていいなぁ…」

 彼は約2メートル、私は160センチ。

 普通に会話できるのが不思議なくらい身長差がある私たち。

 なんで会話が成立するか聞いたら「僕が杏子さんの言葉を聞き漏らすはずがないだろう?」と赤面ものの答えが返ってきたんだった。


「杏子さん? 大丈夫かい?」

 あまりに私がぼんやりしているので、私をシエイクするイケメン夫。

 ゆ、ゆすらないでー。

「大丈夫、ちょっと水飲んだけど。さすがにおいしくはないね」

 ブルー・ラグーンの温泉の味はなんとも言えない味でした。

「このまま抱いていた方が安全だね、杏子さん。僕にしっかり掴まっててね」

 そういって、ざぶざぶと深いところを抜けていった。

「ふー、この辺ならだれもいないからゆっくりできそう」

「一息つこうか」


 二人でお湯に浸かる。

 温泉はいいね!なんとも言えない不思議なお湯の色も格別だし。


「アイスランドって寒いって思ってたけど、ここは温泉があるせいか温かいね」

 自分のアイスランドのイメージは「一年中寒くて凍ってる」だった。

 でもこのブルーラグーンがある一体は、自然豊かで過ごしやすい。

「そうだね。僕は世界のどこに行ったって、杏子さんがいればそれだけで幸せだよ」


 ニコニコして私を見つめるイケメン夫。

 ど、どうしたの?このお湯、アルコール成分でも入ってた?!

 聞き慣れない甘い台詞のせいで、背中がモゾモゾするよ!

 素面でそんな甘い台詞が言えたの?

 私がアワアワとしてるのを見て、彼がフッと笑みを深くした。


「なるほど、確かにお義父さんが貸してくれた『彼女を虜にする100の台詞』すごい効き目だ!」


 へ?


「何それ! なんでお父さんからそんなもの借りてるの…」

「あのね、杏子さん。みんなには僕達が付き合いだして日が浅いってバレバレなんだ。知ってたかい?」

 

「!」


「だからね…新婚旅行で仲を深めてこい!ってお義父さんがいろいろ貸してくれたんだよ」

あとは町のおばちゃんたちも協力してくれてね…とニコニコ事情説明をしてくれてる。

婿にいきなりやってきた得体のしれない彼を、ここまで受け入れてくれた家族と町のみんなに感謝だね。


その後は、不思議な青色の温泉にゆっくりつかって体を休めて、満喫した。

でも、入口からかなり遠いところに来ていたので、暗くなり始めてから焦ってしまい、イケメン夫に抱えられて温泉を走り抜けたのは、記憶から消したい思い出になってしまった。

広すぎる温泉も考えものだわーと、遠い目をしてしまったのは仕方ないと思う。


宿泊は、ブルー・ラグーンと提携してるホテルに行くことに。

どんなところか楽しみ!



※アイスランド最大の温泉・ブルー・ラグーン。青い温泉で有名。

めっちゃ広い。


※温泉で走ってはいけません。


※個人的に凹むことがあり執筆が遅れてました。とりあえず、書いていたところまではアップします。次の行先からはンチャックの好む旅行先になります。

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