特別番外編:新婚旅行は危険な香り:2
無理やり、新婚旅行がスタートしました。
準備にぬかりはありません、BY ナビ。
サプライズをたくさん用意しました、BY ナビ。
キレたナビさんによって、なんの準備もなしにいきなり新婚旅行がスタート!
ザッパーン…、ドッパーン…ドドド…
はい、私と夫のンチャックは現在…海が見える場所にいます。
確かに海は見たいと言ったけど、こんな断崖絶壁で何を楽しめと!
しかもこの景色、火サスで見たことあるよ。
脇役の女優さんが「止めて、近寄らないで、いやー!」とか言って犯人に突き落とされるあの場所だよ。
「杏子さんは、こんなアグレッシブな海が見たかったのかい? とても心が休まるとは…むしろ突き落とされそうな…」
ハッと私を見て真っ青になるイケメン夫。
「ま、まさか…僕をここで始末するつもりじゃ…」
私を殺人犯を見るような目で見ない!
先週、お母さんたちと楽しそうに火曜サスペンス見てたでしょう…。
「そんなことするわけないでしょっ!」
---お二人とも、楽しまれてますか? ここは、ドラマの撮影などでも有名な「恋人岬」だそうです---
「…ナビさん、ここは恋人岬じゃなくて殺人現場だよ。ドラマとかの撮影の…」
---恋人岬も殺人岬も特に変わりません。はい、写真撮りますので笑ってください---
いきなり言われたのに、ささっとイケメン夫に抱きしめられ彼はニッコリ。
えッ?と、きょとんとしてたらピカッとナビさんが光った。
どうやらカードになって、色んな機能がグレードアップしたみたい。
もう、いろいろ突っ込みたいのに、ありすぎて突っ込めない!
---では、次に行きます。異世界旅行と違ってあまり時間の調整ができないので急ぎます---
余韻に浸る暇もなく次に移動。
んー、それにしてもこの移動のピンクな光、なんとかならないのかな?
なんだかエッチな雰囲気するんだけど…気のせいならいいけどさ。
---ちなみに今回の移動の光ゲートは、新規に開発した新婚さん向けです。らぶらぶな雰囲気を色で表わしてみました。普通は銀色です---
「ピ、ピンクよりは銀色がいいかなー、ね、そう思わない?」
「え、僕はピンク色好きだよ? 杏子さんによく似合うじゃな…」
と言い切らないうちに移動した。
海の中に!
ゴボッ、ゴボボ…
うん、そうだね、…泳ぎたいとも言ったけど、心の準備も何もないまま今度は海中にほうり出された。
不思議だね、自分たち服のままだけど海の中で普通にいるよ?
というのも海に入った瞬間、シャボンの泡のような透明なカプセルに包まれた。
これのおかげで呼吸ができるのか…しかもどんどん下に沈んでいく…透明度が高くて綺麗だわー。
もしかして沖縄の海とか?すでにいちいち驚くのに疲れてきた。
そういえばチケットの時も、選ぶ場所が変だった。
---ここは沖縄の海底遺跡です。こういう古代の遺跡も神秘的ですね。ここも写真を撮りましょう---
「杏子さん、この遺跡は不思議な波動を感じるよ…。すごいな、まさかこんな所で世界の神の気配を感じられるなんて…」
「ここは確か神殿じゃないかって言われてるから、もしかしたら海の神様とかがいるかもしれないねー」
二人で寄り添って海底遺跡を眺めたいたら、その姿の私たちをパシャパシャ撮るナビさん。
ん?待てよ、これって海中に浮いてる二人と海底遺跡の写真にならない?
それなんてホラー!
だめだ、誰にも見せられない新婚旅行の写真集ができる。
…と考えていたら、いつの間にか海岸に上がっていた。
---次は宿泊先にひとまず移動しましょう。チェックインする時間にもちょうどいいですから---
やたら張り切るナビさんに、もはや何も言えない私たち。
確かに私の世界に来てからは、ナビさんの出番はほとんどなかった。
まさか知らない間にこんなプランを密かに練っていたなんて…
私たちの服装も、ご丁寧に胸のところに「I LOVE YOU!」なんて書いてあるし。
そしてペアルック、色違いのシャツだからまだ我慢できるけど。
これは平成にやってるカップルは、あまりいないと思う。
あーぁ、それにしてもせっかくの海底遺跡、もう少し見たかったなぁ。
「ところでこの新婚旅行って、何泊の予定?」
「そうだよ、収穫は終ったけど農家は長くは休めないよ」
イケメン夫がいろんな畑作機械を購入してくれたおかげで、前よりは農作業はラクになったし、そこそこ稼げるようになった。
お金に困ることもなくなり、実家の両親も機嫌がとても良い。
人の良い彼は、町の人の農作業も手伝っている。
高齢化が進んで若者が少ないから、すごく可愛がってもらっているのは嬉しいんだけどね…。
「あまり留守にすると、おばちゃん達が暴徒化しそうで恐いよ」
---新婚旅行は一週間が通常と聞きましたので、六泊七日です---
---お二人がいない間は別のモノを派遣してますからご心配なく。披露宴を手伝ったスタッフを二人、家に置いてきました。あの二人が留守を預かります---
「え、あのなんでもできるスタッフさん? なら安心かな」
披露宴の時に現れたすごいスタッフさん、ナビさんが人間になったらきっとあんな感じだろう。
---ここが今日宿泊するコテージです----
話してたら、着いたみたい。どうやらここらしい。
静かでコテージタイプの建物がいくつも並んでる。
---小浜島のコテージタイプを予約しています、無理やり連れてきて申し訳ありませんでした---
すこし冷静さ?を取り戻したナビさんが、場所の説明をしてくれる。
ここ、離島でたしか南十字星か見える島じゃない?
---天候と条件が良ければ、南十字星が見れるかもしれません---
「へえ、南十字星かあ。昔、憧れてたなあー。私が見たかったのなんて子供の頃だけど、よく調べたね」
と、感心していたら物凄く物騒なことを言い出した。
---ええ、密かにプランを練るために寝ているお二人の深層心理を探りました。行きたいところ、好きな食べ物など…この南十字星の見えるコテージもそうです。ンチャック様の知識は地球とは違いますので、まずは杏子さまの行きたい場所を最初に行き、後半はンチャック様の行きたい場所に行くプランにしてますのでお楽しみに---
「ええええ、いつそんなことしてたの! 全然気付かなかった。でも、あの火曜サスペンスの岬は別に行きたいとは思わなかったけど?」
---ちょっとしたサプライズです---
言いきった、言いきったよこのカード!顔は見えないけど、絶対どや顔してそうだわ…。
なんだかとんでもない新婚旅行になりそうだなぁ。
でも、このコテージはすごく気に入ったかも。
「よし、早くチェックインして海を見に行こう? 夜が楽しみだね!」
手にはいつのまに用意されたのか、旅行用キャリーが握らされたいた。
きっと服とかいろいろ全部入ってるんだよね、突っ込んだら負けだ気にしない。
ルンルンな気分で、夫の手を取りコテージに向けて歩き出した。
※火曜サスペンス劇場の岬、場所は知りません(汗)恋人岬は別の国にあります。
※そういえば、ペアルックって最近するカップルいませんね。昔はたくさん生息してたのに(笑)
※仕切りたいナビさんと、振り回される新婚夫婦。まだまだ続きます。




