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~番外編~ついでに実家もリフォームしよう。


~実家のぼろ屋敷をリフォームしよう~


 次の日から、本当に夫婦二人きりの生活になった。今までふたりでずっと旅行してたからか、落ち着くなー。

 基本的に実家は、農作業の手伝いや山の手入れ、畑の手入れや収穫ととにかく忙しいのだ。

 これで畜産とかに手を出していたら、間違いなくみんな過労で倒れてると思う。しかも、苦労して作るのにたいしてお金にはならないのだ。

 これはおばあちゃんの方針にもよるところが大きい。まずは自分たちの食べる分、そして余剰分を適当に出荷しているのだ。とても効率が悪い…これだからうちはいつまでも貧乏なのよっ!

 私の学費もかなり苦労したのだ。

 リフォームしたいと二人が大騒ぎしたけど、現実的に難しいのも当然分かってる。

 でも、ずっと我慢してたんだろうなあ…なんとかしたいけど、どうしたものか。


 …なんてことを朝ごはんを作りながら、ぼーっと考えていた。


「おはよう、どうしたんだい? 考え込んで。」

 頬に唇にチュッチュッと軽くキスをしてくる、うん、だいぶ慣れた…けど、恥ずかしい。


「んー、昨日ね、うちの実家のリフォームの話がでたじゃない? 本当はね、二人とも無理ってわかっててお父さんに言ったんだと思うの。余分なお金なんてないし、家を飛び出しても仕送りを強制されてたんだから。」

 娘の少ない給料もあてにしないと生活できないって、切ないよねー。

 OL時代に稼いだお金、ほとんど持ってかれたもん…思わず遠い目をしてしまった。


「ああ、そのことだけどね、なんとかなると思うよ? 僕の世界の家、倉庫にひとつだけじゃないから。別荘に使用していた小さいサイズで良ければ、外見はあまりいじらずに中だけ住みやすくできるよ。どちらかと言うとレストアに近いのかな。住み慣れたのを急に変えると良くないからね、そのままな感じで新しくなるイメージをしてくれるといいよ。」

 家の外見でだいぶいじめてしまったのを気にしてるのか、今度は内装だけをリフォームできると言ってのけた。


「えっ、そんなことできるの?」

 びっくり、イケメンさんの倉庫の中っていったいどうなってるんだろう?

 ア○ゾンの倉庫みたいにだだっ広いのかな…


「うん、一度ここのリフォームで要領は掴んだから、おばあさんとお母さんの希望を聞いてある程度はかなえられると思う。ただし、誰にもこのやり方を口外しないって約束してもらわないと困るかな…杏子さんのご両親のためだからやりたいんだし。赤の他人にするつもりは微塵もないからね。」


「そうだねー、一応外国の人って設定だし。特にお父さんなんてお酒飲んだら…あることないことペラペラ話しそう。よし、まずはおばあちゃんとお母さんに本当に家をリフォームしていいのか確認しないと。なんかさ、家族が毎日でもうちに入り浸りそうで嫌なの。せっかく二人きりになったのに…」

 すでに誰かが玄関をバンバン叩く音がしてるし、まだ朝ご飯も食べてないのに!


「あーはは、農家の人は朝が早いんだね…。これからの収入もそうだけどいろいろ考えていかないと、あとあと困るのは杏子さんだろ? 将来的にここを継ぐんだし、だから少しずつ僕たちなりの生活を作ろうよ。」


 バンバン叩く音は無視して、二人でご飯を食べる。疲れてしまったのか、諦めたのか音は消えた。


「ごちそうさまでした。片付けたら、さっそくリフォームの話をしないと。」


 玄関を開けたら、おばあちゃんが座ってた…。


「おばあちゃん…玄関を叩かないでよ! 新築なのに、インターホン押せばいいでしょ。」


「ふん、そんなもん知らん。話があるけん、上がらしてもらうよ。」

 すたすたと勝手に奥に進む。もー、何のために新居を構えたのか…しぶしぶお茶を出す。


「婿さんや、あんたが何者かは聞かんことにする。せっかく孫の婿に来てくれたけん。黙っとく代わりにうちのぼろ屋敷のリフォーム、なんとかできんか? その不思議な力で。」


「「!!」」

 二人で固まる、まさか…見られてたとか…?


「何を固まっとる。あんだけ夜中にこそこそ出たり入ったりすりゃ、嫌でも気が付くわ。もう少し気をつけんさい。ま、それは置いといて、出来るかね?」

 おばあちゃんはまっすぐにイケメン夫を射抜く。眼光鋭く、とても60代には見えない。


「その話を今日、しようと思ってたんですよ。こことはやり方は違いますが、かなり過ごしやすくできると思います。」

「そうよ、おばあちゃんとお母さんに希望を聞こうと思ってたの。」

 父の意見は空気である。


「そうか、そりゃよかたい。じゃあ、婿さんと杏子に任せるけん、今日の手伝いはしなくてよか。先におんぼろ屋敷をなんとかしてくれんか。」

 戦後のどさくさで適当に建てられてるので、かなりガタが来てる。


「任せてください! このうちほどにはできませんが、数日中になんとかしたいと思います。」

 おばあちゃんとがっしり握手を交わす。おばあちゃんはにっこり笑って畑作業に向かった。


「杏子さんはおばあさんにそっくりだね! 豪胆なところとか。」

 くすくす笑われてしまった。父と母に性格は全く似ずに、男勝りな祖母にそっくりなのは結構気にしてる。

「むぅー、友人みんなにも言われてたし…そんなに似てるかなぁ。この辺で豪傑と言えばうちのおばあちゃんの代名詞なの。私はあそこまでないと思うけど…ねぇ?」

 と、同意を求めたけど、目線をふいっと反らされた。

 むっとしたので、プンスカしながら実家に向かった。

 昭和な感じは残しつつ、バリアフリーにしてあげたいな、そんなことを話しながら…実家に入り、二人で痛んでる箇所を確認。

 家電も入れ替えが必要、というかそっくり新品に替えたい…!

 確かにぼろい…改めて見ると、よくこれで暮らせるってなって実感。


「これ、一度解体して立て直した方が、絶対早く終わる気がするよ…」

 あまりにもぼろぼろの実家を見て、心が折れそう…。 

 早めに手入れしていたらここまでひどくはならなかっただろう。


「一度、建物全体を見るから、杏子さんは危険な個所を箇条書きにしといてくれないかい?」

 急にやる気を出して、テキパキ動きだした。なんだろう、意外に建築とか好きなのかもしれないな。

 そういえば、元の世界でどんな仕事をしてたんだろう。あまり話したがらないから、聞けないままだった…。


「ふうー、これはもうリフォームとかいうレベルじゃないね。基礎から腐ってる、ここまでひどいとリフォームしても意味がないよ。これなら、僕の別荘をこの家の間取りに似せて作り変えた方がいいね。そしてそっくり入れ替えようと思う。もちろんバリアフリーにはするよ、段差は危ないからね。」

 ものすごい勢いでいろいろ考え出した、おお、格好良いとこあるんだ。惚れ直したかも…言わないけど。


「入れ替えってどうやるの?」

 いわゆるチェンジ!ってやつだね。


「そうだね、間取りの見本はあるし、今度は簡単にできるよ。家電とかはサービスで新しくしとくよ。早めの親孝行? だと思ってくれたらいいよ。」

 どちらにしても作業中だし、三人とも出かけていない。やるなら今のうちか…


「よし、一回ここの平地に出すから中を点検してもらえるかい?」

 そういって、ぱっと実家に良く似た新しい日本家屋が出てきた。新品!いや、新築みたい。

 すぐに中に入り、箇条書きにしていた危険個所が無くなっているのを確認して外にでてきた。


「うん、ほとんど間取りも同じだし段差もないし、これなら安心だね。」

 しかし、いきなり新築になって問題ないいだろうか…リフォームした!で通すしかないね。


「あれ、荷物とかは? 移動しなくていいの?」

 新居の時は入れるの大変だったんだけど…


「ああ、この場合は家だけを入れ替えるからね。もともとあるものは、新品に交換する物以外はそのままで大丈だよ。異空間倉庫と僕の腕の見せどころだよ、見ててね。杏子さん」

 平地に出していた家が消えて、実家と入れ替わった。すごいほとんどイリュージョンだわ!


「うわー、もうすごい! の一言しかでない…」

 得意満面のイケメン夫と、ぽかんとしたままの私で新しくなった実家を眺めているとお昼御飯を食べに三人とも戻ってきた。


『なんじゃこりゃー!』『ほう、これはすごか! さすが、婿さんじゃ。』『あらあら、すごいわねーもうできたのー?』

 父・祖母・母の順である。驚いてはいるけど、三人ともものすごく嬉しそう。


『ありがとう! まさかこんなに早くできるとは…、婿さんの国の建築技術はすごか!』

 お父さんが彼の手を握り、ぶんぶん振っている。お母さんはそっと涙を拭いている。


『ンチャックさん、本当になんといっていいか、私たちの願いをこんなに早く叶えてくれるなんて…』

 そう言ってお母さんが、「ありがたやーありがたやー」と拝みだした。

 うわー、止めてあげて。びっくりして困ってるから!


『頼んだリフォームとは少し違うようじゃが、綺麗になればなんでもよか! 婿さん、ありがとう。あんたが何者でも、もう立派な立花家の婿さんじゃ。何か困ったことがあったら、わしらが守ってやるけん、…杏子のことば頼んだよ。』

 おばあちゃんはそういって新しい実家に入って行った。

 午後からの作業は中止して、新しい家を堪能するらしい。暢気だなー、まあ繁忙期じゃないからね。


 三人とも、深く考えない性格でよかったというべきか…とにかく家族には本当のことをいつかは話さないといけないな、と思った一日だった。

 …というわけで、新居に戻ってきたけど…本日大活躍したイケン夫は爆睡中。

 いつになったら新婚初夜ができるやら、くすくす笑いながらお布団をかけてあげた。


「おやすみ、活躍格好よかったよ。」

 タイムトリップしたけれど、田舎だとたいして時間の経過は分からない。

 それが精神的に安定する原因かもしれない。明日は平穏無事に過ごせますように…祈りながらいつのまにか眠ってしまった。



※実家のリフォームは、どちらかというとそっくりな家を用意して入れ替えました。荷物とかはそのままで。なので、異空間倉庫におんぼろの実家が鎮座(笑)


※イケメンの正体にうすうす気づいているおばあちゃん。でも本人が言うまで待つつもり。


※父・母はまったく気が付かず、外国の技術ってすごか!と一言(笑)


※これで、ようやく静かに…暮らせそう?いえいえ、そうはなりません。


※建築やリフォームに関しては不勉強なので、触れないでください。きっとナビさんがごり押しでなんとかしてくれてますから…!



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