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~番外編~おうちを作りましょう。その2

 そしていよいよ…私たちの新居を異空間倉庫から、取り出す日になった。

 実家で農作業の手伝いをしたり、新居の準備をしたり、かなり忙しい数日だった。


 なんとか一段落して、新居のリフォームもできたらしく、一度家を出してみてダメなとこがないか私に見てほしいそうな。

 でも人がいない時間に出さないと、ビックリするよね…家族は寝るのが早いから、夜中に出してみることに。

 そして整地した新居用のだだっ広い土地に、イケメンさんが何やら地面に撒いている。 空間固定をする印らしい、なるほど。

 玄関の向きを決め、異空間倉庫からいきなり家が現れた。 暗くてよく見えないと私が言うと、薄明かりをつけてライトアップしてくれた。


「…、武家屋敷というより、神社とお寺の混ざったような…和風といえば確かに和風だけど、斬新なデザインだね。で、屋根が全部ソーラーパネル?」

 ハリウッドなんかでよく見かける、外国の人が考える日本のイメージを建築しましたって感じだわー。

 平屋建ての純和風全ミックス建築だけど、近代的なエコシステムも取り込んでる。和風建築なのにオール電化!?


「中も見ていい?」

 テンション上がりっぱなしである。


「好きに見ていいよ、僕は防犯システムのチェックを見てくるから。」

 平屋だけに泥棒は入りやすい。田舎だと油断すると、空き巣の思うツボなのだ。外見とは裏腹に、中は和洋折衷になっていた。

 リビングやキッチン・トイレは洋風、お風呂だけがなぜか檜風呂。

 各部屋の区切りは襖っぽいけど、固い素材でできていて、さらに寝室には指紋認証式システムを…確かに入られたくはないよね。

 こんなに部屋数はいらない気はするけど、絶対家族が泊まりに来そうだし…そう考えたらたくさんある方がいいのかな?


「どうだい? 和風だけだと僕には天井が低くて暮らしにくいから、天井を高くして洋風も入れたんだ。外見は純和風にしたけどね、忍者や侍が住んでた屋敷に憧れてたんだ!」

 うん、間違ってる、忍者や侍は神社やお寺に住んでないから。そして、外にでてよーく見たら鳥居があったし阿吽で有名な像もあった。あれ…?ここ新居だよね…


「なんで、鳥居とか阿吽像があるのよ! こんなの一般人の家にないから。間違って参拝客がきたりお供えされちゃうよ。これは撤去して、じゃないと最初からやり直ししてもらうから。」

 急にぷんぷん怒りだした私におろおろするイケメン夫。


「鳥居は門じゃないのかい? 阿吽像はかっこいいから庭のフィギュアとして置こうかと…と思ったんだ…」

 尻尾がシューンと垂れさがるのが見えた、まったくもう、なんて罰当たりなことを…。


「鳥居は神様を祭るもので、阿吽像はお寺の守護神みたいなもの。どちらも普通の家にあっていいものじゃないのよ…、見たいなら日本全国にいろんな神社仏閣があるから。日本の歴史の情報を頭に入れたのにどうしてそんな解釈になったの…」

ナビさんの情報、かなり怪しくなってきた。


「わかった、鳥居と阿吽像は倉庫にしまうよ。他は問題ない?」

 びくびくしながら私に尋ねる。


「ん、内装に関しては問題ないかな。オール電化はいいけど、水道はどうするの?」

 オール電化ならガス工事は必要ないけど、水道はさすがに工事をしないと…


「いや、いくら工事とはいえ他人を家にあげたくない。この家は究極のリサイクルを目指してるんだ。トイレとかの下水は、地下に雨水タンクを作って、上水道は井戸水を利用する。」

 なにやらごそごそと手をかざしている…、なにかするの?


「杏子さんちの実家の井戸の水をこっちでも使えるように、いろいろしてるんだ。水量はたっぷりあるから水が枯れることもなさそうだね。」

 どうやら、うちの実家の井戸とこの新居を繋ぐ?もうなんでもありなのね…


「でも、トイレの排水とかキッチンの排水とかはどうするの? 普通は下水処理施設に行くんだけど…」

 うちで全部済ませたいのはわかるけど、臭くなるのは嫌だ。昔のポットン便所を思い出す。


「ふっふっふ、大丈夫だよ。地下に置く雨水タンクの中に僕の世界の優れた微生物を置いとくから。排水に関しては特に問題ないよ。ここの自然環境を壊すようなことはしないから。」

 とにかく環境を壊さないようにいろいろ気を配ってくれるらしい。


「細かい調整にもう少しかかりそうだ。今日はもう寝ようか。」

 だした家をしまって、元の更地にした。思ったよりかなり本格的なでっかい家になりそうで、びっくりした。こじんまりとしたのでよかったのになー。


「杏子さんとこれから暮らせるーって考えたら、なんだか張り切りすぎたんだ。ごめんね?」


「もういいよ、二人で生活するんだから、細かいリフォームは少しずつやろう? そういうのも楽しむものだよ。なんたって新婚なんだしねー。」

 うりうりと肘で彼をつつく。そう、恋人期間をすっ飛ばして夫婦になったものの…そういうエッチでうふふなことは全くないのである。まー、当分は仕方ないか。いざとなれば私から襲うのもありよね…


 結局、この日は微調整のためにこっそりと実家に戻った。


 二人であーでもないこーでもないと、アイデアを出し合い…田舎に建っていても変じゃなく、それでいて個性的な新居が完成した。建築基準や法律に関することは、すべてナビさんに丸投げである。


 数日後、また夜中に抜け出し新居を設置した。今度は問題なくばっちり!


「でも、急に家が出来てたらびっくりするんじゃないかなー?」

 いくらうちの家族がのほほんとしていても…さすがに驚くと思う。


「大丈夫だよ、僕の国に手配していたのが届いたんです、っていうから。日本にもこういう工法はあるはずだよ。情報の中にあったよ。だから問題なし! さ、今日からこっちで寝ようよ。」

 早く新居に入りたいイケメン夫である、でも…


「お布団とかは? まだ下見に行っただけで買ってないよ?」

そう、ウキウキで下見に行ったのはいいけど買わなかったのだ。欲しいものがありすぎて、買い物を断念した。トラックでも借りて買い物しないと…


「ああっ! そうだった。すっかり忘れてた…生活に必要なものを明日買いに行かないか? ピーちゃん…は呼べない。ここじゃ大騒ぎになりそうだ。」

 テンションが上がったり下がったり忙しいね。


「お父さんに軽トラックを借りて、明日買いに行こう?」


「そうだね。そうするしかないか…、せっかくの新居の夜が…ごにょごにょ」

 顔を真っ赤にして何かを呟いてる。あー、なるほど初夜って気合い入れてたんだね。

 何も考えてないかと思ったら、一応は意識してたんだね。ちょっと嬉しい、実家だとうふふなことできないしね…すぐにからかってくるし。


 次の日、軽トラックで町まで行き、とりあえず最低限必要なものを購入した。トラックに満杯になってしまった。

 新居はもう設置固定したので、違和感はない。親にも完成までは見に来ないで!と言ってある。

 二人で荷物を下ろし、半日がかりで生活できるように家の中を整えた。イケメン夫が力持ちで本当によかった…

 

「これで、なんとか生活していけそうだねー、あー、疲れたー。」

 畳に寝そべる、本当に疲れた。


「やれやれ…、だいたいの荷物は配置できたね。セキュリティも僕が安全と認めた人しか敷地内に侵入できないようにしてあるから。杏子さんがもし一人でいても大丈夫だからね!」

 本当は誰にも見せずにここで二人でずっと暮らしたいんだけど…なんて頬を染めながら、恐ろしいことを言う。監禁は止めようね!夫婦なんだから…


「とりあえず、買ってきたお寿司食べよう。初めてでしょ? お寿司。日本の伝統料理、美味しいよ。」

 町で評判のお寿司をドーンとたくさん買ったのだ、ものすごく食べるからねこのイケメン夫は。


「SUSI!寿司ね、初めて見たよ。すごく芸術的な食べ物だね。それに日本のご飯はどれもおいしくて健康にとてもいい。あ、どうせならおばあさんとご両親も呼ぼうよ。新築のお祝いは親族でやるんだろう?」


「あ、忘れてた。うちのお披露目だね!」

 そういってうちの家族を呼び、寿司の取り合いと宴会が始まった。来たときはいきなり新居が出来ていてびっくりしていたけど、中を見たりして大騒ぎに。

 特にお母さんがこっちに住みたい! と言いだしたのには参った。確かに実家にはぼろいからね…気持ちはわかるけど。


「お義母さん、ここは僕と杏子さんの新居です。ダメです、二人のらぶらぶ空間を邪魔しないでください。」

 私をむぎゅっと抱きしめて、チュッとキスをした。うぎゃー、家族の前では止めてぇぇぇ。


『あらあらー、お熱いこと。うふふ、冗談に決まってるじゃない。ねえ、お父さん? うちもいい加減リフォームしましょうよ。じゃないと私、家を出ようかしら?』

 うふふーと笑っているが、目は全く笑っていない。それを聞いたお父さんは、グッと寿司を詰まらせた。

 もともとお嬢様だった母をどう口説き落としたのか、こんな田舎に連れてきたのは紛れもなく父である。厳しいおばあちゃんによく泣かされていたのを覚えている。

 喧嘩になるの?!とハラハラしていたら、おばあちゃんも参戦してきた。


『そうじゃ、ここをみて感じたけんど、あの家は住みにくい、こげん年寄りにはつらかー。わしもここがよか。いつ崩れるかわからん家より、こっちの方がよっぽど安全じゃ。』


 まさか、おばあちゃんがお母さんに味方するなんて、明日は槍が降るかも…!どちらにしても父の味方は誰もいない…


『わかった…前向きに考えるけん、寿司ば食べさせてくれ…』

 父の前から寿司が消えて、いつのまにかおばあちゃんとお母さんのところに来ていた。息がぴったりだね。


「お父さん、リフォームは僕も手伝いますから…そんなに気を落とさないでください。」

さすがに不憫に思ったのか彼が助け船を出した。


『ううっ、君は優しいなあ、よくできた息子ができてうれしかー。』

 めそめそ泣く父をしり目に、女性陣は寿司を囲んでリフォーム談議に花が咲いていた。

 こうして、無事にわたしとンチャックさんの新居が完成した。



 ちなみに阿吽像は倉庫にしまったかと思ったら、不法侵入者が来たときの撃退に使うんだって。

 少し顔とかも現代風にして、阿吽像の面影はなくちゃっかり警備員の制服を着せていた。

 

 結局、ドンチャン騒ぎになり新婚初夜はお預けになりました。



※新居、できました。もともとあったイケメンの家をちょっといじっただけ。自由自在にデザインできる優れた家。生活必需品は世界で違うので全部買いました。


イケメンの資産、いつか公開してみたいものです。使う分だけ日本円に替えてます。建築基準法についてはよくわからないので適当です。

すみません、日本に戻ってはいますが厳密には少し違う世界です。なので、あくまでファンタジーということでご了承ください。


※杏子の母、実はいいとこのお嬢様。いいかげん貧乏に疲れてます。杏子の新居を見て、かなりうらやましいらしい。


※杏子の父、悪い人ではないけど、飲んだくれ。仕事は出来る男。稼ぎを酒につぎ込むため喧嘩が絶えない。


※杏子の祖母、夜な夜な消える二人を怪しみ尾行。いろいろ目撃。でも婿殿は杏子にべたぼれしているので害はないと判断して見なかったことに。近所でも一番の豪傑な女性、誰も逆らえない。



※こんな風に のほほんと進みます。常識が違うのでちょいちょいトラブルが…


※とりあえずの拠点は完成。いろいろすっ飛ばしてる二人(笑)


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