~番外編~おうちを作りましょう。その1
※改稿 終わりました。パソコンからと携帯から両方から見やすいようにしてみました。もし見づらいようでしたらご一報ください。
※番外編始まりました。
※番外編
~異世界人のお婿さん~いきなりおうちを作りました編~
宴会でぶっ倒れたイケメンさん、翌朝二日酔いを初体験。
「頭がガンガンする…うぷっ」
布団でぐったりして動けない。
「おはよう。完全に二日酔いだね、鬼殺しなんて上級者が呑むお酒だよ。はい、お水とお薬。」
うぅーっと彼がへろへろになりながら、水を飲む。
「昨日はろくに挨拶できなかったから、朝ごはん食べながら家族を紹介するね。それと異世界の話は禁句!」
---おはようございます。昨日は過去改ざんについて詳しく説明できませんでしたので、ご家族に会う前にお二人の設定をお話します---
そういえば、家族の反応がかなり違ってビックリしたんだった。やけに好意的だったし…。
----お二人の出会いは私用で来日中のンチャック様が、杏子様に一目惚れをし熱烈に求婚、しかし日本を離れたくないという杏子様のため、祖国を捨て婿養子になった…という設定です。ちなみに仕事はモデルで経歴不明、他人が調べることは不可能です---
どこのハーレクインロマンス?あー、おばあちゃんやお母さんが好きそうな恋愛ストーリーだ。
お父さんは味方が増えて嬉しそうだった。男はお父さんだけだったし…
----全く未知の世界に永住するわけですから、ンチャック様に日本の歴史とこの世界のだいたいの情報を学んでいただきたいと思います。そこでこれをどうぞ----
何もないところから、一枚のディスクが出てきた。
タイトルは「現代の世界情勢と過去の歴史特集」「ノーと言いづらい日本人とその歴史」の二本立て。
----これで頭を叩いてください。今は他国から来た異邦人設定ですが、見た目は日本人に近い容姿なのですし周囲に馴染む努力をお忘れなく----
カードになってから、ツッコミがさらに厳しい。でも確かに田舎は他所者に厳しいからね、変なことを言わせないように気をつけないと。
---では、そのディスクで頭を叩いてください、二回お願いします。----
え?これでこの人の頭を叩くの?じゃあ、ぽこっ、ぽかっと二回叩いてみた。
するとディスクが光り、粉々に…おお、すごい体に吸い込まれていった。
二日酔いでさらに固いディスクで頭を叩いてしまった。大丈夫かな…?
「うー頭が痛い…、ん? なんか頭に情報がどんどん入ってくる…」
せっかく起きたのに、またフニャフニャになって布団に寝そべってしまった。
さっきのディスクの内容が、勝手に頭に入り込んでるの?強制ダウンロードってやつか…
「ふぅー、なんだかいきなりたくさんの情報が来たけど、これくらいならたいしたことないね。僕の世界の教育も似たようなものだったし。世界情勢は置いといて、杏子さんのいる<日本>はとても興味深い国だ。ずっとここにいられるなんて僕は幸せだよ。」
これ以上ない幸せな笑みを浮かべて、私を抱き寄せる。
なんだろう、このデレデレっぷり…嬉しいはずなのに鳥肌が!
『…もう入ってええか? 飯ができたけん、二人とも早う来んしゃい』
何回も呼んだとよーとニヤニヤ。おばあちゃんが襖の向こうから、こっそり見てた!
うひゃ!恥ずかしい、どこから見てたんだろう…
「すぐ行くから覗かないでよ!」
ダメだ、実家だとプライバシーも何もありゃしない…早いとこ出てくかなぁ。
「はぁ、ゴメンね。うちの家族って、みんなあんな感じだから、嫌なときははっきりと言わないとわかんないから」
「僕は気にならないけど? そもそも家族がどうあるべきかもわからないし…」
私の髪の毛を触りながら、頬にキスを落とした。
ぎゃー、へたれなイケメンはどこに行ったの!
「は、早くご飯食べようよ」
すっと立ち上がり、家族の元へ向かう。
うちは純和風の古い日本家屋で、かなりガタが来てる。ぎしっぎしっと軋む廊下を歩きながら、家族の居る居間に向かう。普段は台所で食べるけど、今日は多分彼がいるから、客間かな…
「おはよう。遅れてごめんね。」
「おはようございます、昨日は倒れてすみません。僕はどうもお酒がダメなようで…」
客間には祖母・父・母の三人が揃っていた。
いきなり婿養子(入籍済み)を連れて来てどうなるのか、ハラハラしながら座る。
『おはよう。昨日は済まんかった、まさか下戸とは思わなかったけん。改めて杏子の父の立花利行だ。まさか祖国を捨てて、うちの婿養子になってくれるなんて…感謝しとる。この子はあんまり女の子らしゅうないけん。なんかあったら、わしかばあちゃんに言うたらええが。よろしくな、婿さん。』
酒臭い息を吐きながら、父が自己紹介をする。なんか実の親にひどい言われようだ…
『杏子の祖母の、立花キクじゃ。跡取りが見つかってよかたい、杏子も婿さんを大事にせないかん。さっき頭を叩きよったろ? 旦那に暴力をふるってどうすっとや!」
おばあちゃん…ばっちり見てたし。暴力じゃないから、あれは情報をインストールしてたんだよー。
『まあまあ、お義母さん、喧嘩するほど仲がいいっていうじゃないですか。私は杏子の母の立花京香です、よろしくね。それにしても綺麗な髪ですこと。伸ばすのはお国柄なのかしら?』
のほほんとした母はこの地方の出身ではない、ここに嫁いできた人だ。いまだに方言が身につかない。
「僕の国では、生まれてから一度も髪の毛を切りません。切ることは禁じられています。見苦しいようでしたら、髪の毛を結びますが…」
「切ったらダメだよ、そんなに綺麗なんだから。私と同じ長さなんだし、あとでおさげにしてあげるよ」
日本じゃ黒髪になるイケメン夫だけど、元の髪は白銀色。
それに美肌の湯に入ったせいか二人して異常なくらい艶々だし、いまなら髪のモデルも出来そうな気がする!あくまで気がするだけだけど。
「でね、来て早々なんだけど、私たち新婚だし? できれば二人で暮らしたいから、アパートかマンション探したいの。見つかるまででいいから置いてくれない?」
とにかく日本のしきたりやら風習やら、ある程度の情報は頭に入れたけど…それがきちんと使えるようになるまではできるだけ人目は避けたい。
『…なんでうちがあるとに、外へでるんじゃ? 確かにここは田舎じゃ…アパートやらは下の町に行かんとなかろうもん。』
立花家は無駄に敷地が広い…山と田んぼと畑がある、自給自足する分には生活できるけど若者が好むような暮らしはできない。これも家を出た理由だったりする。隣の家は遥か向こうにしかない…
『そしたら、敷地に二人の新居を建てたらええ。土地はようけ余っとるし、好きなだけ使えばよか。』
ふいにお父さんがそんな提案をした。その話を聞いた途端、イケメン夫の目がキラキラしてきた。
「杏子さん、僕たちの愛の巣を作ろうよ! 僕は忍者屋敷かお城がいいな、それとも…からくり屋敷…?」
ぶつぶつと自分の世界に入ってしまった。
「あのねー、お父さん。そりゃ建てれるもんなら建てたいよ。でもそんなお金ないし…」
『うちの山の木を使えば安くできるやろうが、好きに使えばよか。どうせ間引きせなならんし、そのかわり手伝わんからな。あまり変な家は建てるなよ?』
うるさい父にしては、いいことを言う。
「じゃあ、実家からあまり離れないところに建てる? ローンとか組めるかなぁ?」
うーん、実家にいるときは必然的に家事手伝いしてたし…きちんと働いたのは家を出てからだった。
あれ?私、いま無職じゃない…
「ありがとうございます、お父さん! 二人で頑張って素敵な家を作ります。」
ニコニコと答えながら、ちゃっかりおかわりをしていた。
「お城はダメだよ、法律にひっかかるから。」
建築基準を考えながら建てないとなぁ… 恋人になった瞬間に夫婦。
せめて、しばらくは二人でゆっくり暮らしたい。
ラブラブな恋人期間すらなく、夫婦って…前途多難な気がする。
「大丈夫だよ、杏子さん。あとでいいこと教えてあげる、楽しみにしてて」
外面はいい彼は、なんだかんだですっかり家族に馴染んでいた。ものすごい順応性だわ。
朝ごはんを食べたあと、家の外に出て敷地の説明をすることに。
見える田と畑はうちの土地、この山もうちの山。
「土地だけあってお金は無いの、超貧乏だよ。本当に私のお婿さんで後悔しない? 愛だけじゃ、ご飯は食べれないよ」
私がそう呟いたら、彼はフッと笑った。
「杏子さん、僕を舐めてもらっては困るな。異空間倉庫のことを忘れてないかい?」
久しぶりのどや顔である。
「倉庫にあるのはンチャックさんの世界のものでしょ? こっちで通用するものがあるの?」
「ふっふっふ、僕はあの世界を捨てるつもりだったから、自分の住んでた家を倉庫に入れてるんだ。出す前に、ここに合わせていろいろ変えようと思うんだ。」
----ンチャック様がお訪ねしていた件ですが、建築基準はクリアです。ただある程度水平な土地が必要です。他の法的な措置はお任せください----
「よし! 僕たちの愛の巣は直ぐにでも作れそうだ。」
「…倉庫に家を入れてたんだ、ちなみにどんな家?」
興味津々である、まさか家ごと入ってるとは予想しなかった。
「あまり機能的じゃないから、どちらにしろリフォームは必要だね、住みたい家のタイプとかあるかい? 詳しく間取りとか分かれば、リフォームも楽なんだが…」
「そうだねー、山の中であまり奇天烈な建物だと悪目立ちするし…水平な土地なら武家屋敷とか? 後は山小屋みたいなカントリー風かな。防犯がしっかりしてて、今どきの家電が揃ってれば特にこだわりはないよ。異世界でさんざんいろんな宿に泊まったけど、普通なのが一番暮らしやすいって思う。」
うん、藁で寝たり、お姫様ベッドで寝たり…旅行中はひたすらお布団が恋しかった。
「じゃあ、武家屋敷風でいまどきの家電、あとはキッチンか…景色に違和感ないように…防犯もしっかり…」
なにやらブツブツ呟いている。
「んー、結構変更しないとダメだな…。出来上がるまで何日かかかるけどいいかい?」
「えっ、そんなに早く出来るんだ! ちょっと楽しみ、どの辺の土地がいいか平地を探そう。」
こうして新居の候補地を探して回った。小川の側はもしもの時に困るし、実家からあまり離れてもダメだし…昼過ぎまであちこち歩き回った。
「ここ、よさそうじゃない? 道路に近いし、実家からも見える位置だしここにしよう。」
以前田んぼだったが、随分前に田を捨ててそのままにしている場所だった。
かなり広いので大丈夫じゃないかな?整地すれば問題なし。10年以上経過してるし、さすがに水も抜けてるだろう。
「候補地も決まったし、おばあちゃんに許可もらわないとねー。土地の名義は全部、おばあちゃんなの。」
そう、いくらお父さんがよか!といっても、我が家のご意見番はおばあちゃんなのだ。
「そうだね、これくらいの広さがあれば置くのは問題ないね。水とかガスとか工事はあとで手配しないとね」
やることがたくさんだね!と、とにかくご機嫌なイケメン夫。テンション高いねー。
「うん、どんなのになるか楽しみだね。家具とかは見に行かなくていいかな?少しなら貯金もあるはずだし…」
多分隠している通帳に多少の貯金はあったはずだ(見つかってなければだけど…)
「杏子さん、お金の心配はしないでくれ。僕の方で全部用意するからね。奥さんはどんと構えてればいいんだよ。」
パチンとウインクする彼、…なにか悪いものでも食べたの?
「いま、何か失礼なことを考えただろう…。僕だって、いいとこは見せたいんだよ? 旅行中は、情けないとこばかり見せたし…とにかくお金は心配しない。長く生きてる分の蓄えはそれなりにあるからね。杏子さんには苦労はさせたくないんだ。」
へたれを卒業したいらしい必死な様子、確かにそうか…旦那様を立てないとね。
「わかった、素敵な新居を期待してるから! でも私の前で無理はしないでね? へたれな所も好きなんだから」
照れながらそう言うと、とても嬉しそうに抱きしめてくれた。
あっさりおばあちゃんから許可も出たので、整地を業者さんに頼んだり、異空間倉庫内でのリフォームや、新しい家具の下見に行ったり…新居作成に向けて精力的に動き回った。
そしていよいよ…私たちの新居を異空間倉庫から、取り出す日になった。
※婿養子はありがたいです、大事にされます…こちらでは。
杏子の実家、土地だけはわんさかります。お金はありません、常に貧乏…
※新居を作成します。実家には襖のみで、プライバシーはないです。昔の家はだいたいそんな造りですよね。うちの実家がそうでした…。
※次回、新居が突然出現します。




