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異世界チケット使用10枚目、最終話。

改稿作業終了しました。パソコンからと携帯から、両方からみて見やすいように文節を調整しました。


 そろそろ元の世界に戻りたい。

 気持ちも固まったしね、研究者とかと鉢合わせしたくない。


「ナビさん、そろそろ自分の世界に戻りたいです。」

 宙に浮かぶ不思議なチケットとももうお別れだね。


「え、杏子さん、もういいのかい? ここの世界はよく見ていないよ? 僕はいつでも構わないけど…」

 

----承知しました。立花様の世界に移動します----


 このこんにゃくのなりそこないの移動ゲートともおさらばか、最初は気持ち悪かったけど慣れたら平気だったな。

 元の時間に戻してくれるって言ってたし、とういうことは多分金曜日の夕方辺りだよね…

 こうして私は自分の世界に戻った…はずだった。


----立花様の世界に着きました。異世界旅行お疲れさまでした。道中トラブルだらけでしたが、勉強になりました。これはわが社からのサービスですが、若返った立花さまの事を考えその外見に見合った時代にしました----


「へ? 外見に見合った時代? ま、まさか…」

 周りを見たら…仕事帰りに寄り道する公園ではなく、どうみても田舎のあぜ道にポツンと二人。周りに人はいないけど…


「こ、こ、ここは…実家の近くのあぜ道じゃない! 田舎が嫌で家を出たのに、戻ってきちゃったよ…」

 へなへなと座り込んでしまった。


「えーと、ここは僕と杏子さんが出会った場所と時間じゃないと言うことかい?」


----はい、約10年前くらいです。仮にそのままの時代に送りますと若返ったことを不審に思われ、危険な目に合うと判断しました----


「まぁ、確かにこのままじゃ変に思われるよね…、危険な目って想像したくないけどなんとなくわかるかも。はー、まさか最後にタイムトリップするとは思わなかったな。でも、100年前とかじゃなくてよかった」

 もはや諦めの境地である、心臓に毛でも生えたかもしれない…


「…まあ、僕にとってどの時代だろうと杏子さんがそばにいてくれればどこでも構わないよ。改めて申し込みたいから、もう一度聞いてくれないか。…僕は杏子さんが好きだ、ずっと僕のそばにいてほしい。情けない性格は治していきたいと思ってる。だから…、えっと…」

 肝心なところが言えてない、仕方ないなぁ…


「いいよ、ずっとそばにいてあげる。私も好きだよ」

 もじもじしていたイケメンさんの手を借りて立ち上がる。


----おめでとうございます!これで見事恋人同士です。これを祝いまして----


 そうナビさんが言った瞬間、パアッと光りチケットが金色に変わった。

さらにチケットからカードに変化した。え、チケット全部使ったから消えるんじゃないの?


----社長初め、お二人がめでたく恋人同士になったらプレミアムカードをプレゼントしようと計画していました。どうなるか…社員一同ハラハラして見守っておりました----


 はい?どういうこと?

 二人してポカンとしてしまい、告白の甘い雰囲気も吹っ飛んでしまった。


----ですから、お二人の珍道中が大変好評で、何かプレゼントしようと----


「ちょっと待って! さっきから気になってたんだけど…ナビさんが言う報告と言うのは、ひょっとして映像も?」


----もちろんです。プライバシーに関する部分は、外しますが映像で提出してます----


 なんてこと!

 報告って電話かメールみたいな感じだとばかり…

 まさかビデオ的な報告だったなんて。


----それでさらにプレゼントがありまして----


「まだあるのかい?」


----はい、ツハイダー様がこの世界で暮らして行けるよう、日本の戸籍を用意しました----


「戸籍を用意…そんなことができるの!?」

 もはやなんでもあり?!


----頑張りました。ちなみに立花様の戸籍にねじ込みました----


「な、なんで…私の戸籍に…」


----社長からいっそ夫婦にと----


 夫婦?!

 私の戸籍ってことは…まさかのイケメン婿養子。

 親はすごく喜びそうだけど!

 いや、そうじゃなくて…予想外過ぎて思考が追いつかない。


----ねじ込みに苦労したんで絶対に離婚できないよう、操作しときました----


 しれっと告げる金色ナビさん。

 口調も砕けて気がするよ…


「杏子さんと僕は夫婦なのかい?」

 恋人から一気に夫婦にレベルアップし、ウキウキなイケメンさん。


----はい、今日からツハイダー様は「立花ンチャック」様となります。日本では氏名が逆になりますのでお間違いなく----


 ヤッター!と私を抱き抱える。


「あのー、ちなみにお断りする…なんてことはできない?」

 え、そんなぁ?!と青ざめるイケメンさん。


----立花様、覚悟を決めてください。女は度胸、でしょう?----


 カードなのに正論を冷ややかに言う。

 確かにずっと一緒にいるとは言ったけど…心の準備が いるでしょっ!

「結婚は勢いとタイミング」なんて既婚者の友人が話してたけど、私の場合なんか違う。

 私が悶々と考え込んでいると、ナビさんとイケメンさんがひそひそ話してる。

 すごく嫌な予感がするなぁー。そして予感は当たった。


「晴れて夫婦になったことだし、このままご両親に挨拶しに行こう!」

 爆弾発言をして私を抱き抱えたまま、スタスタ歩く。


 なんで私の実家を知ってるの?


「ちょっと、下に降ろしてよ! それになんで私の実家を知ってるの?」

 2メートルある身長の彼に抱き抱えられ暴れる、ムッとしたのかお姫様抱っこに変えられた!

 恥ずかしいから止めてー


「ああ、ナビさんが教えてくれたんだ。杏子さんが尻込みしてるから、逃げられないよう周りを固めたらどうですか?って」

 …あぁ、そうですか。確かに尻込みしたくなるわよ、悪い?

 ブスッとした私を見てクスクス笑うイケメンさん。


「でも本当に嬉しいなぁ、僕には家族なんていなかったから…今日からたくさん家族が増えるんだよね?」

 ニコニコな笑顔で話しかけてくる。ああ、もう…


----過去に戻すにあたって、未来を知ってる立花様が危険に合わないよう少し歴史を改ざんをしました---


 …戸籍を用意したり、時間を戻したり…ついに歴史改ざん!!あれだよね、もう神様だよ…

 頭がショートして思考を拒否。そして開き直り、いや悟りの境地に。


「…まぁ、歴史改ざん云々はおいといて、カードになったってことはこれからも異世界旅行ができるってこと?」

 正直、へんてこな異世界旅行はもう必要ないけど。


---はい! プレミアムカードにグレードアップしました。お二人が亡くなるまで仕えます。よろしくお願いします---


 うわー死ぬまで仕えますって、主従関係になってるし。


「それはいいね、僕の世界にもいつか連れて行きたい。長老達に杏子さんを紹介したい、あ、でも男ばかりで心配か…」

とぶつぶつ考え込んでしまった。

 二人と一枚のカードでぎゃいぎゃい騒いで進んでいたら、実家が見えてきた。


 おばあちゃんが門の前で仁王立ちしてる。

 確かあの頃は彼氏をコロコロと変えていて、ずいぶん叱られたような…

 それが嫌で田舎を飛び出して世間を知った。田舎で若い女性がいなかったからモテていただけで、都会に行ったら全く相手にされなかった。嫌なこと思い出した…


----立花様、心配いりません----


 ん?心配いらない?


『杏子! でかした、まさかあんたがこんないい婿さんを捕まえるなんてなあー』

 おばあちゃんはニコニコして仁王立ちしていた。


『ささ、宴会の用意ができとうけん。早う入りんしゃい、挨拶はそれからでよか』


 お姫様だっこからやっと解放され、二人で実家に入った。

 しばらくぶりの実家は懐かしい、懐かしいけど!

 家族全員そろってニヤニヤして酒びんをもって待っている。

 酒盛りの準備は万端ってことか…


 待てよ…確かイケメンさんは酒癖が悪かった…!

「彼にお酒を飲ませたらだめー」という制止も無視して、イケメンさんはすでに家族に囲まれ、飲まされていた。

 ろくに紹介もしないうちにべろんべろんの泥酔状態に。

 それでもなんとか自己紹介をしようと頑張っていた。


「あい、はじめまいて、僕は*****とういう国から来ました、ンチャックといいまふ。僕はお婿さんにしてもらえれ、とても幸せでふ。おばあさん・お父さん・お母さん、ふつつかな息子ですが末永くよろしくお願いしま…ふ」

 言いきったところでバターンとひっくり返った。


「もー、彼はお酒に弱いって言おうとしたのに…何飲ませたの?」


『えー、鬼殺しだっけか? そげん強くないはずじゃがー?』

 焼酎飲ませてたよ!お酒の匂いだけでも酔うのに…


「あー、もう酒盛りは禁止! とにかく婿養子に来てくれたんだからいじめたりしないでよね!」

 部屋に戻るから、と自分の部屋にずるずると引きずっていった。


----随分激しい歓迎でしたね、歓迎されないよりはいいと思いますよ----


「まあ、そうだけどね。実家を飛び出してほとんど帰ってなかったから、こんなに歓迎されるなんて不思議だよ」


----その過去は無かったことになっています。なので気にせず新婚生活を満喫されてください----


「その事実も消えてるの! はー、いろいろ確認しながら行動しないと失敗しそうだわ…」


----ちなみに私の存在はお二人にしか認識されておりませんので、話すときはご注意を----


「了解、あーあ、気持ち良さそうに寝ちゃって…。婿養子の意味、理解してるのかなー」


----どうでしょう、彼にとっては書類上のうんぬんはどうでもいいように思いますが----


「そうだね、きっとそばにいるだけでいいんだろうねー。私なんかのどこがいいんだか…」


 ま、とにかくこれからよろしくね、という意味を込めてスヤスヤ眠る彼のおでこにそっとキスをした。


 異世界旅行チケットを拾いうっかり持ち主に登録された私は、異世界人の彼と成り行きで旅行。

 いっしょに過ごすうちにいつのまにか情が移り、お互いに好意を持つというベタなテンプレをやってしまった。

 しかもやっとの思いで帰還すれば、タイムトリップしてるし強制的に夫婦に…チケットはカードに変化。

 ツッコミたいことが多すぎて、逆に冷静になってしまった。

 ま、なんとかなるでしょー、明日からの生活に少しだけ期待しながら、イケメンさんのそばで眠った。




 二人の珍道中は、これにておしまい。

※杏子、外見に合った時代に送られました。過去もいろいろ改ざんされてる模様。


※恋人期間をすっ飛ばし夫婦になりました。一人娘の杏子がイケメン外人を連れてきた!とご近所の話題に。


※とりあえず、いったんチケットを使っての異世界旅行は終わりました。


拙い作品をたくさんの方がお気に入りにしていただき、ありがとうございました。

これから、改稿の作業に入ります。話自体はいじりませんのでご安心を。

改行や文節の調整です。むずかしいなーと思います。


※番外編もそのうち書こうと思います。

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