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異世界チケット使用9枚目。その2

 

 次の日

 ぐ~という自分のお腹の音で目が覚めた私、タンコブの痛みもかなり引いた。

 イケメンさんはまだぐっすり寝てる。手にタオルを持ったまま…看病してくれてたんだね、ありがとう。

 やれやれお腹が空いたなぁ、ここって食べ物あるのかな?部屋をウロウロして部屋の中を確認する。

 ベッド二つに小さなテーブルと椅子、小さなキッチンに洗面台やトイレ・風呂シャワーのみ以外ほとんど何もない。

 家族向けワンルームマンションの一室って感じか…。日本の家電が普通にあるのが疑問だけど、便利なので気にしない。生きている木をくりぬいているからかすごくいい香り。

 ヒノキの匂いに近い、…なんかすでに元の世界が懐かしく感じる。そろそろ本気で元の世界に帰らないとやばいかも。時間は元の時間に合わせてくれるとはいえ…仕事にちゃんと復帰出来るかな、そしてまたあの退屈な日常に戻れる…?


 キッチンに立つと小さな冷蔵庫もあり、作り付けの棚の中にはたくさん食材が入っていた。

 朝ごはんになりそうなものを漁りながら、朝食を作る。 パンに卵、ハム、スープ…こんなものかな。


「ナビさん、ちなみにここの食料って二人だと何日持つかな?」


----この施設には最低1ヶ月分はあります、この施設だけでなくあちこちに似た施設がありますから。ここの食料が無くなっても移動すれば半年は暮らせます----


 半年?!さすがにそこまでは居たくない。…そんなやりとりをしていたら、食べ物の匂いでイケメンさんが起きてきた。


「おはよう、昨日はずっと冷やしてくれてたんだね。ありがとう、おかげでだいぶ痛みも引いたの。」


「おはよう、腫れが引いてよかったよ。おなかが空いたんだけど、食べていいかい?」

 目は朝食にくぎ付けである。


「うん、いっしょに食べよう。で、食べた後に私の世界のアレコレを教えてあげる。今日はお勉強だね、まだ完全にタンコブ治ってないからあまり動きたくないし。いいでしょ?」


「もぐ…、じゃあ、子供がどこから来るのか教えてくれるんだね! 楽しみだよ。」

 もぐもぐパンを食べながらニコニコのイケメンさん、朝の会話じゃない気がするよ。


「ちょっと聞きたいんだけど、もしンチャックさんと私が恋人同士になったらどんなことがしてみたい?」

 とりあえず、どれくらい夜のうふふな知識があるのか確認しとかないと…予想に反して夜は鬼畜とかドSだと怖い。


「えっ、急にどうしたんだい? そんな質問…、そうだなあ…一緒に出かけたり買い物したり、手をつないだり…こうして旅行して時には一つのベッドで寝てみたり…その時は抱きしめたいかな。」

 頬を染めながら、モジモジと恥ずかしそうに理想の恋人生活を話してくれた。…乙女かっ!


 うわー、これはどこかの箱入りお嬢様より手ごわいかも…おしべ・めしべからのお話から入った方がよさそうね。いまどきの小学生でもきちんと習うのに、この分野だけは意識的に教育してないよね。


 朝食を食べた後、彼をテーブルに座らせて正しい性教育の講義を始めた。もちろん、初心者向けにおしべ・めしべからね!間違っても、コウノトリが運んできたりキャベツ畑で生まれたりなんて教えない。

 その初心者向けの講義だけで、イケメンさんは頭から湯気をだして盛大に照れていた。これからどんどん内容が際どくなるんだけど…寝込まないか心配になってきた。


-----立花様、その先は刺激が強すぎます。ここまでにした方がよいかと-----


 そうだね、気絶しちゃいそうだしね。


「ンチャックさん、とりあえず今日はここまでね。あとは今度にしよう(いつになるかわかんないけど)」


「…あぁ、わかった。なんて奥が深いんだ…植物の営みは…」

 いや、植物に営みとかの意識はないと思うけど…子孫繁栄のためだし。


 植物の交配の説明で、どうしてここまで真っ赤になるのか…彼の頭の中を覗いてみたいとか考えてしまった、きっとお花畑なんだろうなあ。


 それから気分転換も兼ねて、外を散策してみることにしたけど外に出てびっくり!


 …なんという絶景。昨日はタンコブの痛みで、周りの景色に気を配れなかったけど…本当に植物しかない。それも神話に出てきそうな巨木ばかり。


「ナビさん、いないのは人間だけ?」


----進化しそうな可能性がある生物はここにはいません。しかし小さな昆虫の類はいます。散策は構いませんが、ここでは人間が食べれる物はありません。滞在施設で必ず食事をするようお願いします----


 本当に植物だけなんだ。ナ〇シカの腐海にいる気分だわ…私の世界の常識は異世界では当て嵌まらないね、そんなことを痛感した…な~んて珍しく真面目に考えていたら


「杏子さ~ん、これ食べられるかなぁ?」


 横に居たはずのイケメンさんが、いつのまにかいなくなり、少し先の木に実ってる葡萄のような果実を指差していた。食べる気満々でよじ登ろうとしてるし…だからナビさんの話を聞いてたでしょ!

 食べれないって、本当に私より年上なの?どんどん幼児化してる気がする…


 木から降りるように言って、イケメンさんにナビさんからの注意事項を再度確認させた。

 この果実、人間が食べると即死だそうで…。ここの植物にとって人間は害を成すものと認識していて、果実などはすべて毒が含まれているとのこと。なんて怖い…というか人間が害をなすって認識してる?


「ここ、昔は人間がいたってことですか? しかも害と認識してるって、植物に意思が存在してるってことですか?」


----そうですね、はるか太古には存在していました。自ら滅びた様ですが、詳しくはわかりません。残されたのは植物とほんの少しの昆虫類だけだそうです。意思と言っても話したりとではなく精神感応でお互いの情報をやり取りしていると学者の調べですが。詳しくは不明です、ここの滞在施設は本来研究用なんです----


 ああ、それで半年近く食材が保管されてるんだ。きっと定期的に研究者が来てるということか。


「いま、その研究者の人はこの世界に来てるんですか? 私たちがいたら邪魔になりませんか?」

 来たばかりで他所へ行ってくれなんて言われたら、チケットが終わってしまう。

 ここでじっくりイケメンさんと向き合ってみようと考えてたのに。


----それは大丈夫です、現在この世界にいる人はお二人だけです-----


 はい、本当に二人きりのようです。今までどたばた続きだったし、ちょっと腰を据えて話すにはちょうどいいかも…と横を見ると「ふ、二人きり…、他に誰もいない…、これは試練なのか、いや、逆にチャンス…?」などどぶつぶつ呟きが聞こえた。


「とりあえず、毒のある植物がわんさかいるところをうろつきたくないから戻ろう?」


 散策してみたかったけど、この世界の植物が人間を嫌っているのなら…歩きまわると何か起きそうな予感がするので滞在施設に戻ったのだった。



※イケメンの性知識、皆無(笑)前途多難な杏子~。


※うろつくと100%植物からのいやがらせがあります。杏子の予感は当たり。


※そろそろラストです、どうなるのかもう少しお付き合いください。

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