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異世界チケット使用8枚目。その5


 砂虫風呂で憔悴しきったイケメンさんを励まそうと、街のひとにいろいろ聞いて回ってやって来ました!


 【足湯】


 これなら大丈夫だよね。足湯はポピュラーだし、そんな変なことはないはず。

 足湯は屋外で解放されているらしく、いろんな年代の人が足を浸けていた。

 中は白く濁っていてよく中が見えないけれど、湯加減はいい感じ。

 ふぅ~と一息ついていたら、足にコツンコツンとなにか当たる。

 イケメンさんの足かと思ったけど、彼は私の隣で足をびよ~んと伸ばしてる。足が長いから大変だね。

 それじゃあ誰の足?とまわりを見るけど、近くには私とイケメンさん以外いない。

 嫌な予感がしてジーッと足湯を見ると…足だけが生えてる。

 足がたくさん湯の中に生えてる!?しかも、優雅にゆらゆら揺れてるし。


「ひぃやぁ~足、足、足、足!」

 思わず足を湯から引き上げ、イケメンさんにしがみついた。


「な、どうしたんだい、杏子さん。そんなに慌てて」

 しがみついたまま私は足湯の底を指差す。


「湯に何かいるって? まさか……ひぃっ! 足っ!」

 イケメンさんもゆらゆら揺れてる足に気づいたらしくガクガク震え出した。


 ひい~うぎゃ~と騒ぐ私達に、近くに足をつけていたおばさんが声をかけてきた。


『あんたら、なに騒いでんの? 足湯は足型の水草が生えてるんだよ。足の形をしてるだけで、なんも害はないさ。体にはいいんだから気にしないこった。』

 親切なおばさんが丁寧に教えてくれた。


 足の形した水草…ありえないさすが異世界。一瞬、湖に逆さまで浮いてるあの足を想像してしまった。

うぷっと二人して気持ち悪くなり、結局足湯から退散した。

 精神的ダメージが相次いで、よれよれな私達。ナビさんに聞いても聞かなくても、トラブルになるってこと? どんだけトラブル体質なんんだろう私たち…。

 とぼとぼと歩いていたら、【打たせ湯】の看板を見つけた。

肩にお湯をかけるんだよね?でも悲鳴が聞こえるのはなんでだろう…びくびくしながら近づいてみた。


 【打たれ湯】


 滝から水が降り注ぐけど、間隔空けずに氷の塊が降ってくる。患部に当たると悲鳴を上げてるけど…喜んでる。看板よくみたら、打たせ湯じゃなく打たれ湯だった!


 しかも氷塊をよく見ると虹色だった。ということはあのケバい女神様の作った氷ってこと…?

 体の悪い所にあの氷塊が当たると、痛いけど完治!外れたら痛いだけ、なんてハイリスク。これは遠慮しとこう、痛いの嫌だしね。

 イケメンさんも真っ青だ、さっき砂虫と足湯でさんざんな目に合ってるのに、これに入らないかい? とか言ったらかなり引く。


 街を散策しながら二人でのんびり歩く。でも、あちこちに【この人探してます】【行方不明になりました、見つけたらご一報下さい】…え~、ここは安全じゃなかったの?

 行方不明者を探す貼紙がすごいんだけど…。しかも、髪の長い女性ばかり行方不明になってる。

 カツラでも作りたいのかな?…この時は所詮、自分には関係ない事だと全然気にしてなかった。


「杏子さん、あそこに屋台がたくさん出てるよ! 宿を探す前になにか食べよう」

 すっかり食いしん坊になってしまったイケメンさんは、初めて見る屋台に釘づけではしゃいでいる。

仕方ないなぁ~と先を走るイケメンさんを追いかけようとしたら


 ガツッ!


 後頭部に痛みを感じてそのまま意識を失った。

 イケメンさんが私と食べようと焼鳥をたくさん買って、ルンルンで戻ってきたときには私はもう誰かに連れ去られた後だった。



※足湯...足の草がわさわさ生えている湯。体の疲れを取ります。気持ち悪いけど効能効果は抜群。


※打たれ湯・・・Мに大人気。女神の作った快癒効果のある氷の塊。患部や病気の部分に当たると完治。外れるとものすごく痛い。


※とうとう杏子が危険に巻き込まれます。今ままで何もなかったのが奇跡かも。


短いですが、いったん区切ります。

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