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異世界チケット使用8枚目。その4


 マダムに挨拶しといてよかった…まだしつこく飛んでくる氷柱を、ひょいひょいとかわしながらピーちゃんの背中にしがみつき空から街を目指す。

 すごいなー、ここって本当にファンタジーの王道を地で行く風景…なんか某ネバーでエンディングなテーマ曲を歌いたい気分。それならピーちゃんはファ○コンかな、体の色は同じだし。


 「あれかな? 神殿みたいな建物がたくさんある! 色がすごいけど…」

 空から見ると、眼下にパルテノン神殿のような建物があちこちに立っている。

 サイケデリックなカラフルな色で、さっきまで居たゲルキノもそうだけど…もっと色の統一をお願いしたい。服は男女ともに作務衣が基本みたいだけど、着物なんかもあるみたい。建物が洋風で服は和風ってことか。


 街のあちこちで湯気が立ってるから温泉が期待できそう!


 いつものように街の入り口で降ろしてもらい、二人で街へと向かう。

 近づくにつれて街の全容が見えてきた。ギリシャに来たみたいなのに服装が作務衣って…なんてアンバランス。でも湯治はしたことないから楽しみだな。街を歩く人もみんな作務衣でなんだか安心しちゃう。

 

「…それにしても、あの女神様にはびっくりしたよね…まさか氷柱を投げるなんて。あの湖に人間来ない理由がわかった気がする。」


「相談していいと言ったから僕は相談したのに、いきなり壊れた扇子で攻撃されて傷だらけだよ…いたた」

 どんな攻撃を受けたらそうなるのか、イケメンさんに小さな傷がたくさんある。


「その傷も治せる所に行きたいね。」

 でもどこで聞いたらいいんだろう、ナビさんに聞こうとしたら…


「ここ、どうかな? 効能に【擦り傷・切り傷】って書いてある。それに【名物:すなむしぶろ】だって、杏子さんが入りたがってたお風呂じゃないかい?」

 そういってイケメンさんが指した建物は、…いまにも崩れそうな古い小屋。

 大丈夫なのかな、効能より崩れそうなのが怖い。


『いらっしゃいませ~、どうぞ御入りください。ここの街の施設に料金はかかりませんから。ささっ、切り傷によく効きますよ~』

 中年のおじさんが小屋から出てきて、無理矢理私たちを中に引きこんだ。なんだか随分薄暗い…。


『男女関係なく空いているところに適当に横になってください、そしてこの目隠しをどうぞ。服はそのままで大丈夫です。すなむしが残ることはありませんから。では横になったらお声をおかけください。すぐにすなむしぶろの準備をしますので。』

 おじさんがぺらぺらと説明をしてくれる、なぜ目隠しするの?

 そして、さっきからなんか砂蒸し風呂の発音がおかしいんだけど、気のせいかなぁ?


 とにかく、物は試しということで掘ってある人型の穴に入り横になる。

 それを見ていたイケメンさんも私を真似して隣に入り、目隠しをする。


「準備ができましたけどー? このままでいいんですか?」

 普通なら砂をかけてくれる人がいるはずなんだけど…ここはおじさんが一人でやっているみたい。


『はいはい、いま出してますから。もう少しお待ちください、動かないでくださいね』


 出す?いったい何を?次の瞬間、ざーざーっと体に砂の感触が…。

 どこから砂を操作しているのか体に沿ってきれいに砂が覆いかぶさる感じがしてきた。あったかーい、いい気持ちだー。


『いま、すなむしを全部出しましたから…そいつらが傷口を念入りに治しますから、多少くすぐったくても動かないでくださいね』

 おじさんがそういったら、隣のイケメンさんが「うぁー、ひぅー、やめっ…」悶絶している気配がする。

 なぜ砂蒸し風呂で悶絶するの?私はどうしても「すなむしぶろ」が気になり、なんとか砂から手を出して目隠しを取った。み、見るんじゃなかった…。

 すなむしぶろは「砂の虫」の大群のお風呂だった。

ものすごく小さな虫がイケメンさんの小さな傷に群がり、唾液を出して一生懸命傷口を塞いでいる。

しぐさ自体は可愛いんだろうけど…鳥肌がぞわわ~と立ってしまった。

ホラー映画も真っ青な出来事に、私はすなむしたちが仕事を終えるまで動けなかった。

ちなみに私は健康体だったので、寄り集まって暖めてくれただけだった。

イケメンさん、ご愁傷さまとしか言えなかった…。

 

「ひどいよ、杏子さん。砂の虫のお風呂なんて! 僕が目隠しを取った時の驚きがわかるかい?」

 全部が済んだあとに、涙目で訴えるイケメンさんをかわいいーとかうっかり思ってしまった。じゃなくて、誤解は解いておかないと。


「あのね、私の世界の砂蒸し風呂はちゃんと砂で体を蒸すの。生きてる虫じゃないの! 私だってびっくりしたんだから…でも、虫たちが一生懸命仕事してるの見たら邪魔できなかったの。ごめんね?」


「…、同じ発音なのにまったく意味が違うお風呂だったということか…ここってもしかしたら、同音異義な世界かもしれないね。療養に適してるとナビさんが言ってたけどあまり期待しないでおこうか…」

 傷は綺麗に完治したイケメンさんだったけど、なんだかゲッソリと憔悴してしまっていた。


 湯治って、怪我や病気をじっくり腰を据えて治すイメージだったんだけどここはどうなんだろう。

 ナビさんの情報、あてにならないと最近感じてるので…基本情報だけ聞いて自分たちで動いた方がいいかもしれない。後でその考えが危険を招くとも知らず…



※すなむしぶろ・・・・砂虫風呂。砂の虫、傷を治すのが得意、体が温かいのが特徴。人に懐く。体長2~3ミリ。


※女神のイメージ・・・ピ○ルの定理でてくる森○選手。



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