異世界チケット使用8枚目。その3
さて、ピーちゃんも呼んで散歩しながら、女神様がいるという虹色のゲルキノの前に来ました。
ものすごく自己主張の強い女神様のようです…入口に『女神の相談室はこちらよ』と堂々と書いてあった。但し書きに一人ずつ入るように書いてあったので、まずは私から…ノックして返事を聞き入る。
「こんにちは、昨日はここに滞在させて頂いて助かりました。ありがとうございま…す…。」
目の前に、ジュリ○ナ東京のお立ち台で踊ってそうな煌びやかな妙齢な方が、羽の扇子をパタパタさせて優雅に椅子に座っていた。ボディコンなんて久しぶりに見た!
『あら、昨日突然来た子たちね。はじめまして、この世界の水の管理を担当する女神・ディーネというの。なにか悩みがあるんでしょ。特に貴女の波動が揺れてたわ、聞いてあげないこともないわよ?』
すごい上から目線な物言い、女神というより女王様だね。
多分、もうここに来ることもないし何も知らない第三者に聞いてもらうのもいいかもしれない。
旅の恥はかき捨てっていうし!全部ぶっちゃけよう。
「実は…いま一緒に旅行をしている男性から交際を申し込まれたんですけど、受けるか迷ってます。彼の事は最初は、ただの…ほっとけない異世界人ってだけでした。弱虫だし泣き虫だしへたれだし頼りにならないし。だけどすごく純粋一途で健気で、気が付いたら好きに…でも寿命も違うし、そもそも住む世界も常識とか全然違う。しかも変な洗脳されて教育されてるから、普通に恋人としてお付き合いができるのかも不安です。あ、そうなると…彼って童○なんですかね? 同じベッドに寝てても何にもないんです。好きだなんだって言う割には手をつないだだけで、真っ赤になるし…。あとは…」
一気に私が不安に思っていたことをペラペラと話し始めたら、女神様がたいそう怒ってました。
えー、どうして?
『あほか--!』
扇子でスパーンッと突っ込まれた。本気で痛い!
『何をグジグジと悩む必要があるのかしら? あなたたち、両想いじゃない。恋人として付き合うのに何を躊躇ってるのかしら? 寿命なんて彼の種族ならどうにかできるでしょうに。常識が違うならお互いが歩み寄ればいいでしょう。彼が何もしてこないなら押し倒せばいいことだわ。私からしてみればどうして悩むのかが理解に苦しむわ…。貴女、右手を出してみなさい。」
女王様もとい、女神様から手を出すように言われ素直に右手を出す。
占いでもしてくれるのかな?
女神様は私の手を取り、もみもみともみしだく。
なんだろう、異世界人は手を揉みたい人ばかりなのかな…若干引いた目で女神様のすることを見ていた。
『あー、貴女が恋愛に臆病なのがわかったわ。過去の恋愛経験が尾を引いているのね…ふむ、なるほど。現実の男性にほとほと嫌気がさしてる…か。じゃあ、非現実な存在のファンタジーな彼は貴女の理想じゃないの!」
ぽろり、と目からコンタクトじゃなくてウロコが落ちた気分!そっか、…そうだった。
そもそもこの旅行に一緒に行動してる時点で気付かないといけないんじゃ…。
思わずへたり込んでしまった。イケメンさんに散々ツッコミ入れてきたけど、これはものすごいボケだわー。あはは、なんだ…私たち、似たもの同士だったんだ。
『あら、波動がとても落ち着いたわ。ふっきれた様ね、のろけを聞いた甲斐があったというものね。もう少し聞かされてたら…危うくしめ殺すところだったわ。うふふふふふ…バキッ』
扇子を割りました。ゾワッと身の危険を感じたので退散します!
イケメンさんにタッチ。
私が出て行ったあと、イケメンさんがあいさつをしてるらしく話し声が聞こえた。
段々、女神様の声が大きくなって…なんか中から殺気がすごいんですけど、イケメンさん何を話したのよ!
「ぎゃあああ!」
中からイケメンさんが飛び出してきた。なんか傷だらけ…
「き、杏子さん! 早く街に行こう。ピーちゃん、来てくれ!」
ピーちゃんは近くで湖の水を飲み、くつろいでいたらしく露骨に嫌な顔をした。
『このリア充どもめっ! 爆発しなさい!きいーっ』
中で女神様がブチ切れてる、何を話したのよ…
「いや、杏子さんが可愛くて堪らないとか、どうしたら恋人になれるかとか…ごにょごにょ…」
あ~、うん。わかった、みなまで聞くまい。
「ピーちゃん、街まで乗せてってくれる?」
仕方ないなぁといった感じで、私達を背中に乗せ羽ばたいた瞬間、さっきまでいた場所に氷柱がドスッと突き刺さった。…危ないっ!女神様恐すぎる。
絶対彼氏とかできなさそう…とか思ったら、さらに氷柱が追加でたくさん飛んできたので、慌てて街へと 飛びさった。
※女神さまは性格が災いして、独身。幸せな恋人たちを見ると氷柱を投げる。杏子たちは両想いだけど付き合ってないので、なんとか我慢していた。でも、イケメンののろけを聞いてキレた。
湖に人族が少ないのは、女神が独身のみを呼ぶから(笑)裏知識~