異世界チケット使用3枚目。その1
魔法の世界に着きました。すこし休憩するようです。闘牛女性に激しく動揺した模様。自分の頭の中のイメージは、ムキムキマッチョで牛のコスプレ風味。
主人公とイケメン、意外にいいコンビ?恋愛フラグは・・・立つか微妙。彼があの趣味嗜好だけに。
::::::異世界旅行チケット3枚目使用、残り8枚:::::::
<検索条件:だれでも魔法が使え、治安のよい異世界。>
ぐにゃーんとした空間から、二人で慌てて飛び出し思わずまわりに牛女性がいないか確認してしまった。 あれは確実にトラウマになるレベル!!イケメンさんもまだ顔色が優れないし。
しかし、この移動のぐにゃーとしたこんにゃくのなりそこないみたいな空間はなんとかならないのか。
時空を移動する際に体を守るためってナビさんに言われたら文句はいえないけど。
想像してほしい、こんにゃく作るのに失敗した灰色ゼリーゲルに全身ふんわりやさしく包まれるところを!呼吸とかはできるけど、気分はよくない…これがあと何回続くのかと思うとうんざり。
さて、気を取り直してこの異世界はどんなかなーとキョロキョロしてふとイケメンさんをみたらなぜか青いチャイナ服もどきを着ている。
男性用とかではなくなんか女性用っぽい?スリットも深~い、あらセクシー…って、まさか私もチャイナ服なの?自分の服装を確認したら、やはりチャイナ服もどき…しかも蛍光ピンクってどんな嫌がらせ?30過ぎのOLにチャイナ服ってどんな罰ゲームよ…
「…ナビさん、この異世界の説明をしてもらえますか?」
とりあえず現状の把握をしなくては。
---この異世界は、治安もよく比較的安全な世界です。男女比率も5:5と平常です。魔法は本人の想像力に左右されます、この世界での魔法はいかに自分たちの世界を便利にするか?それだけで価値が決まります。なお、この世界の服装は国民服の着用が義務付けられてます。勝手に脱ぐと罰せられますのでくれぐれもご注意ください。細かい注意事項はその都度お知らせします。---
ふむふむ、魔力が高い低いとかではなく想像力さえあれば魔法は使えるんだ。生活に便利な魔法が使えたらそれだけ重宝されると…そして、チャイナ服が国民服、脱ぐと懲罰行為なのね。
しかし、安全第一のナビさんは現地の人といきなり接触しないように、わざと郊外もしくは僻地に連れてくるようで、当然今も郊外。牧草地帯みたいなのどかな場所にいる私たち。
とりあえずいきなり闘牛女性がくることはなさそうでほっとした。気候も穏やかで気持ちいい風が吹いている。
「さっきの牛人異世界で体力・精神力を根こそぎ奪われて、今は動きたくないんですけど、とりあえず休憩がてら自己紹介でもしませんか?」
そこらへんの地面に適当に座りながら話しかける。
「そういえばまだ名乗っていなかったね。それとさっきから取り乱してすまなかった。一気にいろんなことがありすぎて少々混乱してしまったよ。僕の名前は、ンチャック・ツハイダーだ。長寿な世界の住人でね、100歳を過ぎたあたりから面倒で、もう自分が何歳なのか忘れてしまったよ。キミよりは遥かに年上なのは間違いないけどね。」
「長寿すぎて自分の年齢も忘れるって、どんだけ長生きできる世界なんですか。それにさっき失恋した割にはずいぶん元気なような気もしますよ?」
恋人に邪険にされ、鼻水たらして泣いていたとは思えないほどすっきりした顔になってるし。
「ああ、まあ…なんというか…イザべラに振り回されるのは今に始まったことじゃないし、今回の件でもう彼女のことは諦めようと思ったんだ。それに僕の世界では、女性と結婚して幸せを得ることができるなんてほんの一握りしかいないんだ。そもそも女性の数が圧倒的に少ないからね。」
「ふーん、なんだかせっかく寿命が長い世界なのにもったいない話ですね。でも、なんでそんなに女性が少ないんですか? 少子化にしては偏ってますよね?」
「詳しくは僕も知らないんだ。ただ、新しく女性が生まれることはもうないだろうって話だ。だから、巨体でもなんでも健康で生きている女性に男性達が殺到して…。もともとすごく長寿の世界だから、繁殖能力が極端に低いし。僕の世界はゆっくりゆっくり崩壊してるんだよ。わかるだろう? 新しく子供が生まれない世界がいずれどうなるかなんて。僕みたいに異世界に飛び出すのは珍しくないんだよ。そして行ったらみんな帰って来ないんだ。旅行のチケットは帰還用に一枚サービスでついてるのに、だよ。僕も多分、この旅行で恋人が見つかるかそれなりに暮らせそうなところが見つかったら、そこに移住しようと思う。もうあのじわじわと崩れていく故郷には…正直、戻りたくないいんだ。その時はこのチケットはキミに譲るから。ナビさん、今の譲渡宣言を記録しておいてくれ。」
キャンペーンで一枚サービスって書いてあったのは帰還用だったのか…
---かしこまりました、*****様に合う異世界があった場合、全てのチケットの権利を立花様に譲渡する。記録致しました。---
「なんだか、しんみりしちゃいましたね。じゃあ、私の自己紹介しますね! 立花杏子、35歳、仕事は小さな会社の事務員してます。女らしくない性格のせいでまだ独身です。おせっかいで困ってる人を見ると放っておけないです。趣味は読書で好きなジャンルはファンタジー! だから、今のこの状況ってすごく楽しいです。怖さもあるけど、一人じゃないしこの際だからいろんな異世界に行ってみたいです!」
むふーむふーと、鼻息を荒くしながら私が言いきるとイケメンさんが爆笑した。
「なるほど、キミにとっては随分異常事態なはずなのにどうしてほいほいついてくるかと思ったら…。キミはこの事態を楽しむつもりなんだね? なかなか豪胆じゃないか! 気にいったよ。チケットはまだあるし異世界旅行を楽しもう。長生きしてる僕でもさすがに異世界は不慣れでね、恋人探しのこともあるし相棒がいると心強いよ。それと、この旅行にかかる費用とかは一切心配しなくていい。無理やり連れてきてしまったからね。キミのことは、杏子さんと呼んでいいかい? 僕のことは、ンチャックでいい。」
二人できれいな空を見上げながら笑い合った。
なんだ、意外にいい感じの人じゃん。私の心の中で、「泣き虫鼻垂れへたれイケメン」から少しだけイメージアップしておいてあげた。そっと横に座る彼を観察してみた。
長生きしてるって割には20代後半にしかみえない外見、腰まであるさらさらつやつやの黒髪、着てる服はチャイナ服もどきだけど。ぷぷっ。顔も嫌みなくすっきりと整ってる。
多分、地球でも普通に美女にモテるんじゃないかなあ?彼のマニアックな女性の好みさえなければ…ね。
彼の恋人探しは難航するだろうと思うと、少し不憫になってきた。この魔法の異世界を堪能したら次は彼の希望するところにしてあげよう!
35歳過ぎて恋人もおらず親にも最近は呆れられ、現実に夢も希望もなかった私だけど…
この異常事態、ぜひとも満喫したい。
体力・気力が回復したら人のいる町に出発進行。
やっとイケメンの名前、出せました。イケメンさんの世界、結構大変。
次は魔法の街に行きます。果たして、どうなることやら・・・・
※イケメン・・・ンチャック・ツハイダー。年齢不詳。
OL・・・・立花杏子 やや精神的に幼いのはわざとです。ご了承ください。