異世界チケット使用8枚目。その1
三人で周囲を警戒しながら急ぐ。緊急移動ゲートは病室から割と近い。
次は確か療養した方がいいと言われてたよね。検索条件としては、病み上がりに最適な療養できる世界、食事が美味しい、安全第一くらいかな?あと、変な温泉じゃなく普通の温泉があるところ!
ナビさんに行きたい世界の検索条件を告げる。
かなり難航?いつもより時間がかかってるなぁ。
イケメンさんは熱が下がったとはいえ、まだ少しふらふらして危なっかしい。
ここよりは早く安全な世界に移動したいいんだけど…気が付いたら後ろから、怪しい団体が来てるんだけど!さっきの変質者のような格好の団体がよたよたと私たちめがけて来てる。
ゾンビ並みにスピードは遅いけど…
「ナビさん、変態研究者の群れが来てる! 急いでさっきの条件のところに繋いで、難しいなら温泉とかひっかかるのは外していいから!」
----検索条件に当てはまる世界がありません。療養に適した食事の美味しい世界でしたらあります、それでよろしいですか?----
「なんでもいいから早く!」
---承知しました。療養に適した食事の美味しい世界、にお繋ぎします。移動ゲートにお入りください----
すぐさま、二人で移動ゲートこんにゃくもどきの中に入る。
「先生、ありがとうございました。三色栄養チューブお土産にもらっていきますね!」
こっそり箱ごと頂きました。
「治療ありがとうございました…。うっ」
イケメンさんも病み上がりのへろへろでもきちんとあいさつ、偉い!
医師と追いついた変態研究者たちがもみ合っているうちに、さっさと次の世界へと移動した。
どうして最後はこうなるのか…ナビさん、セキュリティ強化したっていうのに全然ダメだし!
逆にトラブル増えてるよ…ぶつぶつ文句を言いながら8枚目のチケットを使用した。
すぐに10枚目になりそうで怖いな…
::チケット使用8枚目::
<検索条件:療養に適した食事の美味しい世界>
ものすごい勢いで来てしまったけど、ここ、どこですか…
毎度毎度、郊外や僻地に繋いでくれるけど…目の前にはでっかい湖しかない。
海ではなさそう、波がないし辛くない(舐めてみた)。どうやら盆地みたいな地形のまん中にこの湖があるみたい。ざっと地形を見たけど、視界を遮るものがなくて草原に湖という、ザ・ファンタジーな風景。デジカメ持って来たかった…!
「ナビさん、ここはどんな世界なの? 急いできたけど、本当に大丈夫かなぁ…」
セキュリティ強化したという割にちっとも頼りにならないナビさんに、文句をぶつける。
----先ほどの医療の世界では、全員医師か研究者です。彼らは非力で攻撃性がないと見なし危険度はないと判断しました。しかし、現実にお二人を危険に晒してしまい申し訳ありません。セキュリティを強化しましたが、相手に殺気がないためセキュリティモードが作動しませんでした。二度目はないよう常に警備モードを強化しておりますので、この世界では大丈夫です。ここは、異世界旅行HPランキング療養で行きたい世界トップ5に入る療養のメッカです----
どんなランキングなの、それは…でも、どこの世界も病気に苦しんでる人はいるってことか。
えー、話しこんでいたらイケメンさんが今にも倒れそう!やっぱり退院は早かったかな。
でも、あそこにいたら絶対つかまって解剖とか改造とか、いろいろされてたよね。
「ナビさん、近くに療養できるホテルみたいなところはない? ンチャックさんの具合が良くないから、早く休ませてあげたい」
ピーちゃんに頼めば、ひとっ飛びだしね。
---少々お待ちください、この湖の反対側に小さなコテージがあります。ひとまずそこを借りましょう---
「距離と方角は?」
----ちょうどこの湖の真正面になります。湖が広くてここからは見えません----
双頭神馬のピーちゃんを呼んで、ふらふらのイケメンさんをなんとか乗せる。
後ろに私も乗る、落ちないようピーちゃんが羽でイケメンさんを包む。
「ピーちゃん、真正面にある小さなコテージまで急いで飛べる?」
ピーちゃんは頷きふわりと飛んだ。
緊急事態を察してくれたらしい!速い、速すぎる~やたら張り切ってくれたピーちゃんのおかげで、数分後には小さなコテージ群の場所に着いた。
コテージというより遊牧民の使うゲルみたいなかわいい建物がたくさんあった。
色もカラフルで見ていて楽しい。受付とかはあるのかなー?
ピーちゃんから降りると、ひときわ大きなゲルからとてもきれいなマダムが出てきた、どうみても日本の作務衣で…。うん、もう突っ込まない。私たちもしっかり作務衣だった。
「まぁ~、双頭神馬なんて久しぶりにみたわぁ、いらっしゃい。ようこそ、ゲルキノの集落へ。ナビさんからお話は聞いてるわ、その背の高い人が具合が悪いのね…、ただここの小さなゲルキノだと横になれないわね-。この管理ゲルキノのゲスト室があるからとりあえず今日はここに泊まりなさい。ささ、こっちよ。貴方は歩けるかしら?」
イケメンさんは、ふらふらしながらもマダムの後をついていく。さすがに私が抱っこすることはできないから、部屋に着くまで倒れないでね!私もピーちゃんにお礼を言って後に続く。
中は布と木で簡単に組まれた簡素な造りだった。すぐにでも解体して移動できそうな…
案内された部屋は、想像よりは広く背の高いイケメンさんでもなんとか眠れそうなベッドがあった。
すぐに横にならせる、かなりつらそうだなー。絶対栄養チューブの一気食べがよくなかったと思うよ。
おなかも押さえてるし、トイレとか確認しとかないと。
マダムに部屋の使い方をあれこれ聞いて、とりあえず今日はすぐに休むようにと言われ途方に暮れた。ご飯は?と聞いたら…食事は基本的に事前に予約を受けてから用意するらしく…私たちは急にアポなしで来たので何もないそうだ。がっくり…と落ち込んでいたら、イケメンさんが異空間倉庫から三色栄養チューブを出してくれた、ついでに小人族の世界で作ったイノウサの干し肉も!
それをもぐもぐ食べながら早くよくなれー、とイケメンさんの顔を眺めるのだった。
明日は観光できるといいなぁ。
※ゲル…モンゴル地方での遊牧民が使う移動用住居です。形は似てますがここのゲルは色がカラフルです。
イケメン、栄養チューブ一気食いして食あたり(笑)せっかくアニキウイルス消えたのにね。
なんだかんだで8枚使いました。あと二枚、杏子はどういう結論をだすのか…




