異世界チケット使用6枚目。その7
足の長い人はずるいと思います。追いつけない!
イケメンさんの逃げ足がやけに速く、追跡を諦めてホテルのビュッフェレストランに戻ってきた。
朝からヘビーな話で疲れたし、果物でも食べようかな。
さすがにケーキとかはなかったけど、果物は珍しいものがたくさん。
ドリアンがあったのにはびっくり。食べないけどね、異臭を放つ果物は遠慮したい。
皿に果物をいろいろ盛って一人でもぐもぐ食べていたら、白銀の長髪美形さんから声をかけられた。
確かイザベラの恋人だっけ? 目が大きくてチワワみたい。
「ここ、よろしいですか?少しお話がしたいのですが…」
チワワのようにプルプル震える白銀長髪の美形さん。
なんだろう、イケメンさんの世界の男性は残念なワンコ体質ばかり?国民性なのかも…
「えぇ、どうぞどうぞ。ンチャックさんったら、私に怒られるの嫌で逃げたんですよ。失礼しちゃう。」
プリプリしながらりんごをかじる。
「あの…、僕、置いていかれたんですけど…これからどうすれば…やっとイザベラ様と結婚できて、旅行中だったのに…」
ハラハラ泣き出してしまった。
あ~よく泣くのも国民性なのか…
「ちなみにチケットの所有者はどっちだったんですか? 私達の場合、ンチャックさんですけど。」
「僕ですよ。僕はお金だけならありますから…ンチャックくんの話を蹴らせたのも、好きなもの何でも買ってあげるって…ずるいんです僕。彼がすごく頑張ってるの知ってたのに…」
泣きながら話す、器用だね。
「ンチャックさんの頑張り、そんなに有名だったんだ?」
頑張ったって自慢してたしね。
「すごかったですよ! まさかイザベラ様を抱っこできるなんて! みんな賞賛してました。彼の喜びようもすごかった…だから、今日ここで彼に会って凄く怖かった…」
見る見るうちに青ざめる。
「ま~、確かにあなたが横入りしちゃった形になったわけだしね。あの時の取り乱し様は、この世の終わりみたいでしたよ。」
がーん!とばかりに目を見開き、さらに青ざめ号泣し始めた。
「僕、彼に謝りたくて…謝罪を受けてくれるでしょうか…?」
泣き腫らした顔でなぜか私の両手を握る。
にぎにぎしないで~なんか触り方がいやらしくて鳥肌立ってきた。かなり気持ち悪い。
「多分、もうそこまで気にしてないと思いますよ?」
だからさっさとこの手を離してくれ!どうしよう、このチワワ美形。
意外に強かなんじゃない?腹黒さが見えてきた。腹黒美形と名付けよう。
「杏子さんの手を軽々しく握らないでくれないか! 僕のだ。」
後ろから私にへばり付いて、握られた手をべりっと引きはがす。
グルルル~と威嚇が聞こえそう。
「もー、どこに逃げてたのよ? 探したのにいないから、果物食べてた。食べる?」
りんごを差し出したら、条件反射でパクリ。すっかり餌付けされちゃって…
「仲がいいんですね、うらやましい…」
キラキラした眼差し(腹黒く)で私とイケメンさんを見つめる。
「あ~そうだった。このイザベラの恋人さん、謝りたいんだって。許すか許さないかは別にして、話だけでも聞いてあげてね。」
はい、と私の隣に座らせる。ちょっとくっつきすぎだし。
「…ンチャックくん、済まなかった。あんな風になるはずじゃなかったんだ。順番としては僕の方が先だったし。イザベラが約束の順番をごちゃごちゃに…とにかく許してほしい。」
テーブルに頭をガンとぶつける勢いで、低頭した。
「いや、別に僕は貴方に対して怒ってはないさ。気にしないでくれ。約束を破ったのはイザベラだからね。それに彼女に邪険にされたおかげで、杏子さんに出会えたし。あ、そうだ! 杏子さん、君にとってもいい温泉を見つけたんだ。一緒に入りに行かないかい?」
チワワ腹黒美形を無視して私にウキウキと話す。
「へ~、どんな効能があるの?」
「巨乳になれ…ぎゃあっ」
足を思い切り踏んでやった。
「余計なお世話!」
どうせ小さいですよ、ふんっ。美肌の湯で若返って胸も小さくまとまって気にしてたのに(CからBという残念な結果に泣きそうになったのは内緒だ。)
「一緒に入って、二人で巨乳になってどうするの。」
「女性は胸が豊かに、男性は胸板が豊かになるって書いてあったから…僕の貧弱な体型から抜け出せるかなと思ったんだよ。」
脱いだら格闘家並みに筋肉質なすごい体だけど、服を着ているとやはり細くて本人も気にしているらしい。
男性は胸板が豊かに…これはいいかも!おっと、よだれが…(杏子は逞しい人が好み)
「いいね、いってみよー。ほらっ、早く早く!」
足をさすり涙目になっているイケメンさんを引っ張り、【巨乳の湯】を目指すのだった。
腹黒美形置き去り(笑) きっと裏から手をまわして自分を優先させたと思われます。彼もこの後すぐに元の世界に強制帰還。詳しい事情聴取のため。もう出番なし。杏子を気に入り、どうにかしたかったようだけど残念でしたー。
次に入る温泉は、【巨乳の湯】入りたいような入りたくないような…
胸はほどほどがいいと思います。Fカップの友人は大変そうでした。いいのは若いうちだけです。年を取るとマジに垂れますから重力で…。




