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異世界チケット使用6枚目。その6


----イザベラ様がお連れの方と、この最上階の部屋に泊まりたいと…先程まで管理センターで揉めていました。お二人は当社の大切なお客様ということで、ホテル側が拒否しました。しかしイザベラ様が納得されていないと報告が来ました。トラブルの起こる可能性が非常に高いので、ひとまず報告させて頂きました----

 

「…どうする? まさか旅行先が重なるなんて想定外だけど、会いたくないならすぐ次の世界に移動してもいいよ?」


 難しい顔をして黙り込むイケメンさん。


「いや、逃げるような真似はしたくない!」

 カッコつけて断言するけどなんか嘘くさい。最近行動や言動が読めるようになってきた。


「で、本音は?」

 ギロっと睨むと


「…まだ温泉に入りたいデス…まだ温泉入りたいのが半分も残ってるのに…」

 さっきの勢いどこいった。あれだけ温泉入って、まだ入る気満々なのにびっくり。


「とりあえず確認したいことが幾つかあるの。正直に答えてね?」

 生地を伸ばしていた麺棒をぺしぺしと右手に持ち、尋問開始、 決して自白強要ではない。


「まず、イザベラの名前を聞いてどう思った?」


「げ! 会いたくない! 絶対嫌だ、かな。」

 顔を歪める、本当に嫌みたいね。よし!


「じゃ、次ね。イザベラに対して恋愛感情は残ってる?」


「恋愛感情はクッキーの食べカスほどもない、怒りの感情なら売るほどあるよ。」

 さっき食べたお菓子が気にいったのね。

 恋愛感情はほとんどないってことか。


「もし、イザべラたちに偶然出会って、穏便に会話できそう?」


「…それは無理だと思う。約束を破られたことだけはどうしても許せない。できれば謝ってほしい。女性に手はあげたくないけど殴るかもしれない。僕はそれくらい怒ってるんだ。」

 あー、かなり根に持ってるんだ…仕方ないか。


「じゃあ、もし、私がイザべラと喧嘩になったらどっちを応援してくれる?」


「もちろん杏子さんに決まってる!」

 了解、これで私が代わりに喧嘩を売ってあげよう。

口 の悪さなら負けない、ふふふふ、負け組OLの底力見せてやる!たぶん、イザべラは自分の意見が通らないから怒って、絶対この部屋を空けろって言うに違いない。今は夜だから無理とか連れの人に言われてても、明日にでもきっと乗りこんでくるのは予想できる。そうと決まったら…寝よう!体力温存しないとね。


「じゃあ、もし私とイザべラが喧嘩を始めても口出ししないでね? ンチャックさんのために私が叱ってあげるから。また、明日の朝に対策をじっくり練ろうね。おやすみー」

 そう言って私はお姫様ベッドによいしょっと上がり、もそもそ布団にもぐりこむ。


 あれ?そういえばこれだけ広い部屋にベッドはこれしかなかったような…?


「僕も着替えて寝るよ、おやすみ。」

 しばらくしてから…浴衣をうまく着れなかったらしくぐちゃぐちゃの着姿で、当然のようにお姫様ベッドに入ってきた。


「なんで同じベッド?」


「ベッドはこれ一つしかないから仕方ないだろう? 僕は床で寝たくないよ! こんなに広いんだから端と端で寝れば問題ない。」


「やだ、真ん中でドーンと寝たい! そこどいてよ。」


「いやだ!」


 布団の中で場所争いが勃発。暴れたから、二人の髪の毛が絡まったー!

 ぜいぜいしながら、プッとどちらともなく笑いだした…修学旅行を思い出したよ。


「あー、もうこのままでいい。おやすみ。」


「僕ももうクタクタだよ、おやすみ。」


 結局、ふたりとも髪の毛が絡まったままくっついて眠ってしまい、次の朝ほぐすのに苦労したのだった。

 うふふなことなんてなんにもないから!

 翌朝、絡まった髪をほぐして約束していた朝食を作った。

食べた後は、イザベラを探しに管理センターに向かうつもりだった。


 でもその前に、ちょっと聞いてみたいことがある。


「ナビさん、朝早く申し訳ないけど、社長さんに相談したいことがあるんで繋いで貰えるかな?」


----承知しました。少々お待ちください。…はい、どうぞ----


-----おはよう。よく眠れたかな? 昨日は温泉でかなり目立っていたようだが-----


「あはは、その話は置いといてですね、昨夜この世界にきたイザベラって女性なんですが…以前そちらのチケットを使って、ある男性を異世界に置き去りにしたんです。本人から聞いたので間違いないです。これは罪に問えますか?」



----ふむ、旅行者の行方不明事件に関わってると考えているのか。罪に問えるかはその世界での裁きになるからわが社としては何もできない。だが…その彼女は他にもいろいろ問題があって、チケット使用停止処分通知を出し、強制帰還させるつもりだった。ああ、そういえば本日付けだな----


「強制帰還…じゃあ、今後イザベラがもう異世界を旅行することはないんですね?」


----個体登録事態を禁じるから二度とできない。何か彼女に言いたいことがあるなら早めに言っておくといい。あと一時間ほどで強制帰還の手続きに入る----


「わかりました。ありがとうございました。」


 よし、イザベラの天下は終了だね!


「急いでイザベラを探そう。」


 二人でセバス・チャンさんを呼び、一階まで降りた。  

 なんというか探すまでもなく…、イザベラはホテルのビュッフェレストランを占領して、店を大混乱に陥れていた。


 というか…アレがイザベラなの?奇怪な肉の塊にしか見えないけど。


「イザベラ…なんてひどい姿に…醜すぎる。うっ」

 吐きそうなイケメンさん。私も吐きそう。

 ビュッフェの食事を自分の前に山積みにさせ、それを連れの恋人らしき人が口にほうり込んでいる。


 豚?いや、豚に失礼なくらい見るに堪えない有様だった。贅肉の塊にしか見えない。


 レストランでは食事をしたい人が詰め掛けているのに、イザベラは無視して店の料理を独り占めしている。さながら料理の要塞である。


 なんでこんな人がンチャックさんの世界で大事にされるの?…贅肉で性別すら怪しいのに。


「あなたがイザベラ? ちょっと話があるんだけど。いいかしら?」

 すると、贅肉の塊イザベラはこっちを見ようともせずバクバク食べ続ける。

 む・か・つ・く!

 

「僕はあんな醜い化け物を崇めていたのか…? なんてことだ…」


 その言葉を聞いて贅肉の塊イザベラが反応した。


【だれが~醜い化け物ですって~? 有り得ないんだけどぉ~ブヒっ、なぁんか聞いたことある声だと思えば~コンニャック~だっけぇ? 私に振られたからって一人旅でもしてるのぉ~? ウケル~ブヒブヒっ】


 以前伝言で聞いた声に似てるけど、贅肉で声帯まで潰れたのか…オッサンとしか思えないだみ声だった。


「そんな醜い化け物と誰が一緒に行動するものか! 吐き気がする。それに僕は一人じゃない、愛しい彼女とラブラブ旅行中なんだ! 馬鹿にしないでくれないか。」

 あれ?いつ彼女になったの私? ツッコミたいけどここは我慢。


 と、とにかくイザベラを話をしないと。イザべラの強制帰還まで時間がない。


「イザベラ! あなたに言いたいことがあるの! ンチャックさんとの約束を破ったこと、きちんと彼に謝罪して。」


【はぁ~? なんで私が謝る必要があるのぉ~? 私から行きたいって頼んだわけじゃないしぃ~誰だか知らないけどぉ、あなたの世界の常識を押し付けないでくれるぅ~? ブヒっ】


「き、君は僕をだましたのか?! あんな無理難題ふっかけて、僕をあざ笑っていたのか!」


 うん、さすがにキレた。

 私の怒気を感じたのか、イケメンさん後ずさる。


「ンチャックさんから、あなたたちの世界のいきさつは聞いてるわ。だからといって、人の気持ちを弄んだりしていいわけがない。あなたは人の皮を被った悪魔、いえただの欲の塊だわ! あなたの無理難題のせいで、どれだけの男性が苦しんでると思うの? それとも…、あなたに逆らうものは旅行中に殺すのかしら?、…ハチェットさんのように。」


【なんでその名前を…ブヒッ】

 驚いて固まったイザベラ。


「偶然旅行中に会いました、あ、生きてますけど。『あの女に殺されかけた。二度と会いたくない』と言ってました。それに、今、彼は綺麗な奥様(馬だけど)と結婚して、幸せに暮らしてますから(多分)」


 それを聞いたイザベラが、静かにハラハラと涙を流し始めた。


【い、生きてたんだぁ…よかったぁ…ブヒっ】


 ブヒブヒ泣き出してよく聞き取れないけど、彼をおなかの贅肉で潰したのは軽くやったつもりらしく、あんなに怯えるとは思わなかった、と。慌てて彼を探したけど、見つからず…死なせてしまったんだ!と不安で過食に走り、ここまで太ったらしい。なんだかんだでハチェットさんを好きだったのね。


 イザベラの世界では、あまりに女性が少なく愛情を男性一人にずっと注ぐことは許されない。(定期的に恋人交代制度?本人の意思は認められない)

 だからせめて、ツハイダーの名前をたくさんつけることで気を紛らわせた、とのこと…

 傲慢でわがままなイザベラは、本当はツンツンデレだった?


 よくよく考えたら、イザベラも被害者なのかもしれない。

好きな人ができても自由に恋愛が許されない世界。

私ならやさぐれるね!間違いなく。

ンチャックさんもハラハラ泣くイザベラを見て、つられて泣いている。


【ンチャック、約束破ってごめんなさい。私が悪かったわ…ブヒっ】

 急にしおらしくなったイザべラは、胸のつかえが取れたせいか物言いも優しくなった気がする。


 よし、謝った!イザベラが謝ったよ!これで目的は果たした。



----お話は済みましたか?では、イザベラ様に強制帰還命令を執行----


イザべラのまわりに黒づくめのムームー警備隊がやってきて、拘束した。よく伸びる紐ですね…。


【強制帰還って? 聞いてないけど…なんとなく理由はわかるわ…さんざん傍若無人な振る舞いをしたから。じゃあね、ンチャックは可愛い彼女と幸せにね!】


 あの巨体をどう移動するのか謎だけど、イザべラは食べ散らかしたまま消えてしまった。

あのー、イザべラの恋人さんが放置されてるんだけどいいのかな?

あ、料理を片付け始めた。いい人だね。



「で、私がいつ彼女になったのかなー?」


 振り返ると、ものすごい勢いで逃げるイケメンさん。逃がすかーーー!!!



杏子、基本的に優しいのでそこまで追い詰めれず。


でもイザべラ、案外あの世界ではいい人だったりする設定。ギャル語も日本で習得(笑)中途半端だったけど。


二人でいっしょのお布団で…しかし、何もイベント起きずに爆睡。うふふな展開はまだまだよ~

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