異世界チケット使用6枚目。その5
意気揚々と出かけたイケメンさんを見送り、私は部屋の確認して最後にお風呂に入るとしますかね!
最上階でワンフロア全部が部屋なだけあって、無駄に広かった…まさにセレブ部屋。
こんな贅沢二度とできないし、満喫しなきゃ勿体ない!
調べたら部屋に備え付けの冷蔵庫やキッチンまであり、食材やお酒もびっしり用意されてる。
ほとんど日本のホテルと変わらないし久々の電化製品に感動すら覚える。
でも、お米はなかった…残念。
甘いものが食べたいし、お菓子でも焼こうかな。
小麦粉や砂糖、卵などを見つけクッキーもどきを作る。なんとかなるでしょ。
生地の味見をして、後はオーブンで焼くだけにして…粉で結構汚れたし、焼いてる間にお風呂入ろっと。
お風呂も広かった!ガラス張りの露天風呂風。最上階だから覗かれる心配もないし。
裸でドボ~ン。
うふふふ~やっぱりこうでなくちゃね~。
それにしても、ンチャックさんがあんなにいい体してたとは…おっと、よだれが…。
見た目は本当にストライク、元の髪の色で印象がガラッと変わったしな-。中身がダメンズだけど。
さすがにあれだけ純粋に好意を寄せられたら、いくら鈍い私でも気がつく。私を好きなんだって。
でもねぇ…
「寿命が違いすぎるし、何より住む世界が違う!」
思わず叫んでしまった。
好きか嫌いなら、間違いなく『好き』なんだけど…やっぱり付き合ったりは難しいよね…
とりあえずは、今のまま『異世界の気の合う友人』として一緒にいたいかな…向こうから何か言って来れば考えよう。
ガラス張りだけど、露天風呂風に作ってるから、真っ赤な夜空が見える。
うん、空が真っ赤!びっくりした。異世界旅行で時間も飛ぶから、体の体内時計が狂いそうだけど、不思議と時間はわかる。赤い空って不気味だな-。
…ちょっと怖くなってきた。
お菓子も焼けただろうし、上がりますか!
部屋備え付けの寝巻きは、アロハ柄浴衣だった。
微妙な気分で浴衣を着て、お菓子の焼き上がりをチェックしていたら
「たらいま~かいりまりた~ひっく~杏子しゃんはおきてまふかー?」
酔っ払ってぐでんぐでんのイケメンさんが戻ってきた。
うわ~千鳥足なイケメンだ!あっけに取られてたら
「い~い匂いがする~」
私にムギュっと抱き着き、クンクン匂いを嗅ぎ出した…犬か!
「ちょっと離れてよ! 苦しいじゃない!」
「やら!」
「やだじゃない!」
「やらやらやら~! そんらに僕のこときらいなんら~」
泣きだしてしまった。
「嫌いじゃないから困るんじゃない…」
ボソッとつぶやいた。
それが聞こえたらしく、途端にキラキラした笑顔になり爆弾発言をした。
「じゃ~、ちゅーして?」
首をかしげ、私に向かって顔を近づけてきた。
なに~!!
ムギュっと抱きしめられて逃げられないのに、調子に乗って~!この酔っ払いめ!
ちゅーの代わりに、えい!
食べさせてあげようと思っていたクッキーもどきを、タコみたいに尖らせていた口にねじ込む。
「もががっ!」
ちゅーじゃなく何かを口に入れられ驚いていたけど、お菓子と気づきもぐもぐもぐもぐ…
気に入ったのか、また「あ~ん」と口を開ける。
また、ほいっと焼き上げたクッキーもどきを口に入れる。
何回か繰り返していたら楽しくなってきた。
もぐもぐしながらもだんだん酔いが醒めてきたのか、ぐでんぐでんだった表情が元に戻ってきた。
そして…さーっとみるみる真っ青になり、私を抱きしめていたことに気づき慌てて離れた。
「ご、ごめん! 僕はなんて破廉恥なことを!」
破廉恥って…いまどき使わないよ、全くこの人は目を離せないなぁ。
「私がいないからって、一人でお酒呑んだの? なんかずるい。」
「違うよ! 僕はお酒なんて呑んでない。お風呂に入ってたら、なんか急に気持ちよくなってきて…気がついたら、ここに…?」
本人は無意識に部屋に戻ってきたらしい。
「ん~、じゃあ、最後に入った温泉の名前は覚えてる?」
「たしか、【ウワバミの湯】、そういえばお湯がお酒臭かった気がする。まわりの人もご機嫌だったよ。」
ああ、納得、匂いで酔っ払ったんだ。
「そのお風呂は入るの禁止ね! それより、キッチンで食材見つけてお菓子焼いたんだ。まだたくさんあるけど食べる?」
ぱぁ~と顔を輝かせてすごい勢いで頷いた。
キッチンにたくさん食材あるし、明日は私がいろいろ作ってみたいと言ったら凄く喜んでくれた。
本当に食べるの好きだね。
結局、一人でかなりの数の温泉に入り満喫したみたいで、お菓子を食べながらいろいろ入った温泉について話して、ずっとご機嫌だった。私も聞いていてすごく楽しかった。
ナビさんからこの報告を聞くまでは。
----イザベラ様がこの世界に来られました----
次回、イザべラ VS 杏子、ときどきイケメン(笑)
この世界は人気スポットなので、いろんな世界から来てます。さてどうなることやら…
杏子、イケメンにぐらぐらしてますねー。でも、住む世界が違うし常識で考えて普通に無理だと思ってます。ファンタジーと現実をきちんと分けてます。大人ですから。イケメンの頑張り次第かな?
酔っぱらったイケメン、す・け・べ(笑) 酔って、抑圧している何かが飛び出た模様。
昔、公園で酒盛りをしていたとき、友人が泥酔して、バック転をし失敗。そのまま消えました。もう一人はパンツ一枚になり奇声をあげて公園内を爆走。
カオスな酒盛りでした。消えた友人は、探したら植え込みで爆睡、パンイチ男は後日風邪をひきました。
今やると簡単に死ねそうです。若さって怖い…




