表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/59

異世界チケット使用6枚目。その4


 鏡に映っているのは、自分。

 自分だけど、20代前半の一番モテ期だったころの自分だ。うわー、黒歴史なのに!!

あの頃は調子に乗ってたから見たくない…それなりにモテた自分が、町で一番かわいいとか勘違いしていた時期の痛い自分に戻ってる…憂鬱になってきた。

鏡の前でどんよりしている私を心配してイケメンさんもお風呂から出てきた。


 「若返ってどうして落ち込む必要があるんだい? すごくかわいいと僕は思うよ。」

 私の後ろに立っている彼はまったく変わってない、もともと綺麗だしねっ。


「んー、なんていうか…昔の自分ってさ性格があまり良くなかったの。見たくない昔の自分が目の前にいるから気分が落ちちゃってね…。はー、美肌だけでよかったのに、どうしてこうなるの?」


「最適の状態に保ちますって書いてあったじゃないか。だからその人の一番きれいな状態に保つ…っていうのが美肌の湯じゃないのかい?」


 逆に、どうして若返るのを落ち込むの?と不思議な顔をされてしまった。

同じく美肌の湯に入っていた人たちもうんうんそうそう、と頷いている。

あれ?おかしいな、私が間違ってるの?


 「それよりさ、いいお湯があるって聞いたんだ! そっちに行かないかい? 僕たちの後頭部のハゲが治るかもしれない湯があるんだってさ!」

 魔法の世界でできた二人のハゲは当然つるつるのままで、隠すのも面倒で嫌だった。

美肌でこの効果なら、毛も生えるかもしれない!これは期待しちゃうね。


「え! 行く! なんて湯なの?」


「えーとね、<毛の湯>だって。あっちにあるって。」


「ずいぶんシンプルな名前だね…よし、行こう!」


 【毛の湯】


 ◎毛を最高の状態に保ちます。


 ◎抜け毛・切れ毛・染めた毛などでもすべて美しい状態になります。余りに毛の痛みが激しい場合、一度毛根からリセットいたします。


 毛の湯は、こげ茶でした。コーヒー風呂…?

入るのを躊躇してしまう色だわ…あまり人も入ってない。不人気なのかな?

ほぼ貸切状態で、二人で毛の湯に浸かる。

 ちょっとぬるいかな…あ、イケメンさんは嬉しそう。やっぱりさっきのは熱かったからジッとしてたのね。

うーん、さっきみたいにザバザバお湯をかけて方がいいかなー?

 面倒だから後頭部のハゲに直接かけよう。私はお湯をすくって自分のハゲてる部分にぱしゃぱしゃとお湯をかけてみた。

そういえば、魔法の世界で茶髪になったんだけど…元の黒髪に戻るかな。


「杏子さん、一気にかけると効果が高いって聞いたよ。僕は頭ごと漬けてみる。」

長髪の彼はザブンと頭を突っ込んだ。

 そもそも、黒髪は私と彼しかいない。ある意味すごく目立つ。私は日本人だからいいとして、彼は日本に来たから黒髪になったんじゃなかったの?元の色はどんな色なんだろう…っていつまで潜ってるの!


「ぶはっ、長く潜りすぎたよ。僕の後頭部、どうなったか見てくれないか?」

 くるりと後ろを向くイケメンさん。おっ、500円玉ハゲが消えて毛が生えてる!すごい育毛効果!

見ていると、わさわさ~わさわさ~とハゲの部分の毛がどんどん伸びて、あっという間に元の長髪に戻った。あのー、髪の毛が白銀色なんだけど。ひょっとして元の髪の色なの?別人みたい…


「えーとね、ハゲは綺麗に消えて元の長さに戻ったんだけど…」


「けど?」


「その髪の色、元の色なの? なんだか別人みたい。」

 そう、白銀の長髪になり、さらに最適の状態効果なのか髪の毛がキラキラ光ってる。すごく神々しい…


「ん? ああ、そうだね。これが僕の世界の標準な色だね。よし、ハゲも治った! 杏子さんも一気に治したいなら頭ごと漬けるといいよ。」

 さらさら~と元に戻った後頭部をさすりながら、私にも勧める。

え、このこげ茶色のお湯に突っ込めと?

 嫌だけど、ハゲは治したい!ええい、女は度胸だ!ざぶんと頭をお湯に突っ込んだ。目を閉じてしばらく待つ。


「ぶはっ、苦しい。ふー、どう? 私のハゲは治った?」

 くるっと後ろを向いた。返事がない。あれ?潜る時間が短かったかな?ごしごしと目をこするけど、このお湯、目に痛い!しみる、目を開けられない。


「き、杏子さん…、あの…ひ、非常に言いにくいんだが…、髪の毛が全部抜けてる…見事に…」

 恐る恐るイケメンさんが事実を告げる。


 え?抜けてる?全部?うそ!

頭をぺタぺタ触ると、…ない。髪の毛の感触がない。

目は痛くて開けられないけど異常事態はわかる。


 いやーーーーーー!!


 パニックになりばちゃばちゃ暴れ始めた私をイケメンさんが慌てて押さえる。

うがー、髪の毛返して―!


「どうしました?」

 黒いムームーを着たこのお湯の担当の人が騒ぎを聞きつけて慌てて来たらしい、私には見えないけど。

イケメンさんが暴れる私を押さえながら、詳しく事情を説明すると


「ああ、大丈夫ですよ。多分、その魔法の世界での髪の毛の負担が大きくて、お湯が髪の毛を一旦リセットしたんでしょう。すぐに生えてきますから。落ち着いてください、お嬢さん。」


 ん?リセット…そういえば、お湯の効能の下の方にそんなことが書いてあったような?

うあ、頭がむず痒い!と感じた瞬間、頭に髪の毛が生えてきた感じがしてきた。

まさにブワッと…ブワッと…ブワッと…


 ち、ちょっとまだ伸びるの?頭が重くなってきた。

だんだん目の痛みが引いてきて、恐る恐る目を開けてみた。

 うわー、どこの髪長姫よ。伸びた髪の毛がお湯の下~の方までいってる。

水分含んだから重かったんだ…

 髪の毛はくたびれた茶髪から、元の黒髪に。

 ただし、ものすごく艶々になりさらに足元まで長さになっていた。踏みそうで怖いけど、結果オーライ?かな。


「二つ入っただけで、疲れちゃった。部屋に内風呂ついてないかなぁ? 一人でゆっくり入りたい…」

 若返るし、一回ハゲてまた髪の毛生えるし…もう心が折れそう。


「どうだったかなぁ? 倒れた杏子さんを運ぶのに必死で、部屋の中を確認してなかったよ。最上階だからあるかもしれないね?」


 【毛の湯】の担当の人に聞いたら、各部屋に家族風呂がちゃんとあるらしい。よかった~。


「家族風呂があるなら、私はそっちに入るから、ンチャックさんは好きなお風呂入っていいよ?」


「え? 一人で大丈夫かい? じゃあ…部屋まで送ったあと、僕だけ入りに行くよ。」

 温泉を踊るほど楽しみにしてたンチャックさんに、迷惑かけるわけにはいかないしね。

 

 私を部屋まで送ってから、彼はまた温泉めぐりに意気揚々と出かけていった。



毛の湯、恐るべし。


この異世界は日本のある田舎の健康ランドを参考にして、異世界アレンジをして作っています。なので、温泉もまともではありません(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ