異世界チケット使用5枚目。その1
モコモコの世界に行きます。
もふもふではありません。日本語独特の微妙なニュアンスは翻訳しにくいようです。
それでもナビさん、検索条件に合う世界を必死に探しました。人口AIにもプライドはあるようです。
さてさて、どんな世界…?
<検索条件:もふもふした人型の動物がいる世界、発情期ではないこと>
閉じかけたゲートに無理矢理入ったからか、変なところに出た。
辺り一面 砂漠、時間は昼間みたいだけど、すでに寒い。
本当にこんな世界にもふもふした獸人がいるのかなぁ?
イケメンさんをみたら羊になっていた。 じゃなくて、羊の着ぐるみを着ていた、私は…貧相な山羊?
これはもしかしてハズレな世界かも…
しかも着ぐるみのせいでうまく動けない、遊園地の着ぐるみのバイトの人ってこんな気分なの?
「ナビさん、ここはどんな世界ですか? まわり一面砂漠なんですけど…」
ナビさんの返答を待つ。
----ここは羊と山羊が半数を占める獸人型動物の世界です。発情期を外して検索中、立花様が安全に関して何も言われませんでしたので、当社規定の安全レベルの世界になっております。まわり一面砂漠なのは、彼らが草を食べ尽くしたからです。攻撃的ではありませんが、食欲が非常に強い種族です----
ナビさんがいう安全レベルが、どれくらいかわからない。いままでも結構なトラブルばかりだったし…しかも移動したい時に限ってというのが悔しい。
慌てて検索条件指定するから、ロクな世界に行かない気がする。
次はイケメンさんの番だし、きちんと検索条件を決めとかなきゃね。
しかし、見渡す限り砂、砂、砂!
地面に生えてた草をむしり取って砂漠に変えるって…知能が低いかもしれない。
あるだけ食べて移動、その繰り返しがこの砂漠でしょ?
なんかこの世界の種族に会うの、怖くなってきた。文明とか文化とかあるんだろうか…
ダメならさっさと次の世界に行こう。
「ナビさん、この辺で休む場所ありますか?寒いんですけど…」
そう、全身真っ白モコモコ羊着ぐるみのイケメンさんは未だしも、私はなぜか貧相な山羊タイプ。
こんなに寒いなら羊がよかった!
腕と膝から下が丸出し、白黒茶三色斑柄ノースリーブワンピの着ぐるみだった、柄は三毛猫で山羊…。オプションでなのか二人とも角が生えてる。失敗したコスプレイヤ-の気分である。
----ここ近辺に休める場所はないようです。以前はここにオアシスがあったのですが…消失したと思われます。この世界全体を調べましたが、土地の半分が砂漠化しています。生きている種族はここからぐるっと反対側の暖かい土地に集中しています。町もあるようです。この近辺は誰もいませんので、空を飛んで移動しても問題ないです。夜になるとさらに冷えますので早めの移動をお勧めします。----
町はあるのね…、とりあえず攻撃的な性格じゃないなら大丈夫かな?
「ンチャックさん、せっかく来たし、とりあえず反対側にある町にいってみましょ? ピーちゃんに乗せてもらえば、すぐに着くよね!」
「よし、じゃあ、ピーちゃんを呼んで移動しよう! しかし、この羊の着ぐるみ、温かいけど動きがかなり制限されるよ。まだ山羊の方がいい気がするよ。」
どっちもどっちということか…それより早く移動!寒い!
「ピーちゃん、反対側まで急いでお願い!」
呼んでいないのに、私のそばにすでに来ていた。
「杏子さん、移動で飛ばすから寒いよ。僕の後ろに乗って風をよけてくれ。」
ピーちゃんの背中に乗り、羊の着ぐるみにしがみついた。うは-、暖かい~これはモコモコでイイ感じ。体を押し付けてぐりぐりしていたら、あ!とか、うぁぁ!とか聞こえた。
「ごめん、痛かった?」
調子に乗りすぎたかと反省して、後ろから覗きこんだら首まで真っ赤なゆでダコ状態のイケメンさんがいた。
「…大丈夫、なんでもない。すぐ出発しよう。ピーちゃん、町のある方角はわかるかい? できるだけ早く町に着きたいんだ。でも、寒くて杏子さんが心配だからそれなりの速度で頼むよ。」
なんとも速度を飛ばしにくい条件を付けたのに、ピーちゃんは軽く頷いた。
それくらい朝飯前さって感じ?さすが!
果たして、砂漠を作るほど食い意地の張った種族とはどんな人たちなのか…期待と不安でいっぱいになりながら、町へ向かって飛び去ったのだった。
杏子、ぐりぐりしてはいけません(笑)一応小さいなりに胸はありますから。
イケメン、よく耐えた!
羊とヤギ、他多数種族が混在。次回、町に着きます。




