異世界チケットを拾いました、イケメン付きで。
これはもし自分がこんなチケットを拾ったらどこに行ってみたいかな?とふと思いついた行きあたりばったりなお話です。各異世界の滞在時間は短いので、世界観は読者様のご塑像に任せたいと思います。かなり適当な設定なので、暇つぶし程度にいただければ幸いです。
「異世界旅行チケット10回券;サービスで1枚追加キャンペーン中」
…こんなの拾った。仕事終わりの夕方、ふと寄った公園のベンチの下で拾った「異世界旅行チケット」と書かれた怪しげな11枚つづりのチケット。1枚使ってるみたいだけど。
ものすごく安い作りで子供の作品?と思うほど。
誰かの忘れものなら交番に届けようかな?と思ったんだけど…これは届けようにも、ねえ…。
しばらくこのチケットの持ち主が探しにくるかとベンチに座って待っていたけど、なぜか公園は無人状態で…。正直どうしたものかと、チケットのうらを何気なく見ると……説明が記載されていた。
・各チケットには高性能人工知能ナビがついています。チケットを使いきるまで安全・安心なナビをいたします。
・基点となる場所の次元軸設定をお忘れなく!
・チケットを使用されると自動的にその世界に適した言語翻訳・服装・髪形になるサービス付きです。
・盗難防止のため、購入後速やかにDNA登録などの個体識別登録をおススメします。このチケットで最大二人まで登録可能です。
・払い戻しは受け付けしておりません。
・万が一、異世界で起きた事件・事故につきまして当社は一切の責任を負いません。すべてお客様の自己責任となります、好戦的な区域の旅行につきましてはくれぐれもお気を付けください。
・詳しい内容は、「異世界旅行チケットサービスセンターホームページ」にて、旅行条件の確認をお勧めします。URLは***********etc
…えー、なんだろこれ。子供が作ったにしては作りこんでるよね。
ぱっと見は、寂れて潰れそうな遊園地のチケットつづりにしか見えないんだけど。
でも、こんなので異世界に行けるならちょっと行ってみたいかも?
「しっかし、異世界ねー。このつまんない日常から抜けれるならどこでもいいけど。王道で魔法が使えるとことか?! なんてねー、…ぶぇっくしゅっい!」
つぶやきながらチケットを見ていたら、夕方の冷えた空気で思わずくしゃみをしてしまった。
「あちゃ、チケットに思い切りくしゃみしてしまった。うわー、唾が飛んだ。拭かなきゃ、えーっと拭くもの拭くもの…」
チケットをそばにおいて鞄から拭くものを探していたら、急にチケットが光りだした。
---DNAデータを受け取りました。解析を始めます。…現在、惑星の位置基本次元軸を「地球」に設定…種族…性別…年齢…体重…ピー…解析完了しました。このチケットは、****様と、立花杏子さま専用となりました。それでは、よい旅をお楽しみください。なお、御用の際はAIナビをお呼びください。---
「は? 唾で、DNA登録できたの? …って、これ本物なの…?」
急に光りだしたチケットは、ピカピカ光ってるし宙にふわふわ浮いてる。
「えー、これ使っていいのかなあ?」
光るチケットを見つめたまま途方に暮れていたその時…
「勝手に使ってもらっては困ります、それは僕が彼女と旅行するために購入したんですから」
チケットを持つ私の前に、突然長身の黒髪長髪イケメンが出現しました。長身すぎる、見上げたら首が 痛い。2mはありそう!私は160センチないんだから…
ぽかんとしている私に向かって彼は叫んだ。
「だから、そのチケットは僕が、彼女と旅行に使おうと思って購入したんだ! お願いだから返してくれないか!」なにやら必死である。
どうやら、このピカピカ光ってるチケットの持ち主のよう…やばい、唾飛ばして私が持ち主?になったって知ったら、なんて言われるか…でも正直に言わないと。
「あのー、返したいのはやまやまなんですが。さっき、私を登録しちゃったみたいです…よ?」
「ま、まさか、個体登録できたのか? そんなばかな…イザべラが仮登録していたはず…」
青ざめたイケメンは呆然としている。
-----*****様、大変申し上げにくいのですが、仮登録していたイザべラ様は先日キャンセルされました。その際に伝言を頼まれました。伝言を再生します。<あー、*****?わたしぃー、悪いんだけどぉー、今日別の人と結婚することになってぇー、新婚旅行に行くからぁーあんたと旅行はなしってことでぇー、じゃあーさよならー>…再生を終わりました。キャンセルにより人数に空きができ、現在の所有者は*****様と、立花様になっております。-----
宙に浮いたチケットから無機質な機械音が残酷な現実を告げた。
「…」
イケメンさん真っ白。
うわー、振られたよこのイケメンさん。さっきから名前が聞き取れないんだけど、*****って?どんな発音なのよ、すごい気になる。まあ、でもとりあず慰めたほうがいいのかな?
「あのー、大丈夫ですか?」
「…もう僕はおしまいだ、彼女が最後の望みだったのに。このまま一生独身なんだ…」
イケメンさんはシクシク泣きだしてしまった。どうしようこの人…。せっかくイケメンなのに哀れすぎる。
「だ、大丈夫ですよ! 何があったか分からないけど、あなたイケメンなんだしすぐ素敵な恋人ができますって! だから泣かないで、ねっ。」
「…ぐすっ、君は僕の世界の成り立ちを知らないからそんなことが言えるんだ! 僕の世界の女性はすごく少なくて存在自体が国宝級で、女性1人に100人まで夫を持つことが許されてる。それでも男はうじゃうじゃ余ってるんだ。当然、交際や結婚・離婚・再婚は女性の気分次第だ。それでも僕は諦めずイザベラに対して交際申し込みをして散々待たされてようやく交際できたのに…あんまりだ…」
ああ、せっかくのイケメンが涙と鼻水とよだれで顔がすごいことになっている。
しかしどんだけ女が少ないのかな、イケメンさんの世界…ってこの人異世界人なの?
普通に背の高い長髪の日本人にしか見えない。
「じゃ、じゃあ、このチケットで好みの女性がたくさんいるとこに行きましょうよ! あ、それかここで恋人を探すってのもいいんじゃないですか? とにかく失恋には新しい恋ですよ!」
必死にフォローフォロー、私こうみえても空気読めるOLですから。もう会社のゴッドマザー扱いだけど。
「この世界には女性なんていないじゃないか。いてもすごく少ない! 下調べでチケットを1枚使って治安のよいこの世界に来てみたけどがっかりだ!」
きっぱり断言するイケメンさん。
「…あのー、私も一応女性なんですが?」
なんかかなりカチンと来たぞ、おい。
「は? キミが「女性」だって? 馬鹿を言うな! 「女性」というのは、体重が300キロを超えてさらに胸の豊満な非常にふくよかな方に決まってるだろう! 僕が想いを寄せていたイザべラも400キロ超えの超美人だったんだ…」
それはそれはうっとりとした表情を浮かべている。絶句である。
そ、それって、もしかして、超絶ぽっちゃりで巨乳な人が「女性」という世界なの?そうなの?なんてマニアック!ないわー、ないない。300キロ以上ってもはやギネス級だよ…
「でも、チケットで条件絞ってみたら案外簡単に見つかりそうだけど。ねえ、ナビさん?」
チケットの検索機能で、彼の好み合う女性がいる異世界を探せばきっと元気もでるはず!!ナイスだ私。
----******様の好ましい条件に合う異世界は…、ひとつだけあります。ですが、あまりおススメできません。現在非常に不安定な時期で、治安も安全とは言えません。----
「あ、でも条件に当てはまるところがあるんだ? じゃあ、行ってみたらどうですか。いい気晴らしになるんじゃないですか?」
これはいいことを閃いた!と満面の笑みでイケメンさんに今の話を提案してみた。当然私は行かない。
女の私がなぜ、女だらけの世界に行かなくちゃいけないんだ。そんな趣味は断じてない!
「ぐすっ、ほんとに僕の好みの「女性」がたくさんいるんだろうね? こうなったら美人じゃないと承知しないからな! いるのなら行ってみたい。でも、1人で行くのは心細いから君についてきてもらう。そういえば、キミもチケットの持ち主だしね」
逃がすものかと手をがっしり掴まれた。くっ、先手を打ってきた…。
イケメンさんは少し復活したのか、生き生きとナビさんと打ち合わせを始めた。しかし宙に浮くチケットに向かって独り言をいうイケメン、シュールだわ。
まあ、土日は仕事休みだし、異世界なんてきっと二度と行くことないだろうし、私はのんきに打ち合わせを眺めていた。非現実の嵐に、いまから思えば感覚がマヒしていたとしか思えない。
「よし、決まった。行先は女性がたくさんいて、なおかつ、僕の好みの女性がいる可能性のある世界だ!」
結局、さきほどナビさんの提案していた世界にいくようだ。
あれ?なんか危ないってなかった?
とたんにチケットが強く光り、その中の一枚が空中に浮かび私たちの周りの空間がゆがみ始めた。
「行くぞ! 僕の理想の恋人を探す旅に出発!」
彼は私の手を握り、ゆがんだ空間に私を連れて入った。うっ、ぐにゃぐにゃして酔いそう。
ざっくりとした書き方しかできない作者です。
描写も拙く申し訳ないです。
誤字・脱字等ありましたらお知らせください。