表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブ伝  作者: UGoui
2/2

成功論との出会い

ここに、冴えない受験生山田太郎がいた、彼は何をすれば立派で有名でテレビに出られる様な人間になれるのかさっぱり解らなかったが、自分はその才能があるとだけは信じていたし、才能を信じること以外の何事も行なわなかった。だが、彼は改心する。成功論大全という偉大な書物を前に。

山田太郎、この平凡な、あまりに平凡すぎて非凡な名前の男がいた、この物語は、彼がゴブと呼ばれる伝説的存在に至るまでの経緯である。


八月の終わり、彼は同級生に会うたびに憂鬱になった、多くの同級生は今年の春に遠い遠い夢のような大学と呼ばれる所に行ってしまい、彼だけが家で寂しく机に向かっていたからだ。


机に向かっているのは良いのだが、二月ほど前からノートの一ページも進んでいないのは、当の本人も気付いてはいない。ラジオの電池だけが、闇雲に消費されていく。とりあえず親戚で唯一国立大学を出た叔父の話、そう、この叔父は参考書が折れ曲がり、ふくれあがるまで勉強し、ついに現役で国立に通った、という話しを何度も何度も親から聞かされていたので、とりあえず彼は参考書全てに折り目を付け、ふくれあげてから入試に挑んだのだが、なぜか不合格の通知を受け取ってしまった。


そして、彼は未だにその本質的理由に気付こうとも、気づきもしなかった。


彼はとりあえず参考書を折り曲げるときに全文章を眺めていたので、とりあえず勉強したつもりにはなっていたからだ。


そのような彼が、次に参考書を買いあさることになるのは、もはや誰の目にも明らかなことだろう。そして彼はその予想通りに本屋へ向かった。


彼は歯を食いしばりながら漫画と週刊誌の本棚を通り過ぎ、ようやく参考書の所にたどり着こうとしたときだった。彼の目に恐るべきタイトルの本が目に入ったのだ。


「成功論大全、人生の勝ち組になる方法」


かれは、そのタイトルを鼻で笑いながら、参考書の棚に向けて三歩ほど歩いた、彼の足はそこで止まった。彼はそこで五分ほど立ちすくんだ。彼のあまりに鈍い頭脳が未だかつて無い速度で回転しながら、彼の足をその本の前に向かわせた。


黄金の固まりのような表紙、不気味なほどまでに太字の筆字体で書かれたタイトル、それら全てが山田の知っている価値の尺度の上で最大の値に位置した。彼は、勝ち組と呼ばれる人々を思い浮かべた。テレビに出ている人だけがプカプカ思い浮かんだ、それだけで山田は胸いっぱい希望いっぱいになった。


彼は、その仰々しいタイトルの金色で縁取られた仰々しいカバーをめくりながら、とりあえず三十ページ目辺りを開いてみた。そこには、”受験なんて関係ない、あんな物で人間の能力を測れるはずがないのだ”と書いてあった。


山田は、次のページをめくった。”日本は世間体ばかりを気にしていて権威主義でだめだ、男ならば一度勝負に打って出るべきだ” と書いてあった。


山田は、本の背表紙を見た、値段を確かめるためだ。そして山田は自分の財布の中身がこの本の値段とほぼ同じという運命的出会いを果たしたのだ。


そうして、山田の運命は決まった、翌日山田は家にあった全ての参考書を古本屋に持っていき、勝手に渡米を決めたのだ。


「俺は、日本では認められなかったがアメリカの様に大舞台ならば認められる!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ