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私と子犬な後輩  作者: 三笠 諒
一年目 春
8/21

処罰、その行為はまさに魔王

透子視点に戻ります!

(ふふふ)


 私の神的提案に皆驚きが隠せないようだ!

 ……理解すらできてないようだけど。


 分からない人がいるようなので(自分のなかで)説明しよう!


 まず!私の目的は『処罰を軽くすること』!

 処罰とは再犯を防ぐ意味も含めてやっているのだ。つまり、人に恐怖や面倒を与えることが重要なのだ!でも、親友にそんひどいことはできない……。しかし、立場上やらなくてはならない……。――そこで、この目的なのだ。処罰をなくす必要はない、軽くすればいい。――つまり、再犯をできないようにすればよい。

 それに、いつもならこの程度、清水先輩が適当に考えるのに、今回わたしたちに託したのは――いつもよりひどい罰にするため(なんてたって谷口君と一緒にやるんだしね)。いつもよりひどい罰にするのは、榊君たちにムカついているから!彼らに清水先輩がムカついている一番の要因はその髪の毛!ということは、髪の毛をどうにかすれば処罰は軽くしてもそれほど文句は言われない。

 しかし黒く染めても染め直せるから意味がない。ならば!


「そ、そそそそ剃るだって!?ボクの、この、美しすぎる桃色を!!」


 郁屋君が泣きそうになって震える。その童顔のせいで罪悪感が芽生えるが、これも彼ら――なによりも愛しの榊君の為なのだ、と考えて心を鬼にする。……あ、榊君が震えてる。きっと私の意図を理解して感動に打ち震えているんだね!?さあ、友達になろう!

「オレが、はげ……オレが坊主……オレ、カッコワルイ(失礼)……オレは、無敵な神!…なのに……」

 東山君が自慢の銀髪をしょげらせて暗く呟く。いつもの異常に高くイタいテンションが跡形もない。――あ、イタさが微妙に残ってた。隣で広瀬君が最後の一言にどん引いていたが、思いついたように焦った表情で叫んだ。

「待て待て待て待て待てぇぇええ!俺はクロ〜!黒髪じゃん!?剃る意味ないって~!」

 いやいやいや。広瀬君。

「……トモダチ……だか、ら」

 私は私と君が友達だから処罰を軽くするために、という意味でいったのだが、どうにも広瀬君は解釈を誤ったらしい。

「ええええええええ!?友達だから道連れ的な!?ここで三人の友達やめていい!?」

「ざけんな!広瀬ぇ、テメーも道連れだ!」

「離せ、榊!俺は生き残るんだぁあああ!」

 ぎゃあぎゃあと広瀬君と榊君が言い争っていると完璧に自分の世界に入り込んでいた二人が突然割り込んできた。

「ふざけるなぁあ!なんで君が剃らないですんで、この美しすぎるボクの美しさが損なわれなくちゃいけないんだぁあああ!」

「美しすぎるならいいじゃん!丁度よくなるよ~」

「はぁ?広瀬はこの郁屋桐真様の美しさが少しでも損なわれていいとでも思っているのか!」

「思ってるさ!このナルシスト!」

「な、ナルシスト!?……――言われ慣れてるさ」

「慣れるなよ!テメーとつるんでるこっちが恥ずかしくなってきたわ!」

「さ、榊……逆だろ!!誇れよ!」

「黙れカス!」

「――オレの髪には、膨大な魔力が秘められている……!」

「こっちにもっと恥ずかしい奴いたよ!なんで東山と仲よかったんだろ、俺~」

「広瀬……同感だ」

「この美しいボクが君達と意見が同じなんて微妙な心境だけど――同感」

 うんうん、と三人が頷き出し、加藤君に東山君はイタいことを訴え出した。加藤君が泣きそうな顔だ。……ごめん、ちょっと彼と関わりをもちたくないの。我慢してください。

「……無駄話は、終わりましたか?」

 谷口君が氷点下の笑みできく。彼らは黙って頷く。いつのまにか東山君は広瀬君の手によってさっきの位置に戻されていた。

「――覚悟は、決まりましたね?」

 彼の手には、バリカンが握られていた。

「……え?マジで?」

 広瀬君が思わずと言ったように呟く。それに満面の笑みで谷口君は答える。

「冗談」

 それに安堵したように郁屋君が椅子にもたれかかった。

「よかった、これで美しさが保たれる……!」

「ではありません」

「妙な期待させないでよ!」

 郁屋君が半泣きで叫ぶ。

 ……うぅ~ん、

(イヤ……なのかな?)

 榊君とか意味わかってるはずなのに。

 ――聞いてみるか。

「……(イ)()(なの?こ)()(君たちのためなんだよ?)」

 ……ごめん。ちょっと緊張してろくに言えなかった。というかなんと言ったのかさえ分からないんだ。

「ま、まお――……北条ぅ!お願いだ、許してくれ!」

「お願いだよ~、まお――……北条ちゃん!」

「……頼む、ま――……北条」

「【魔王】、覚悟!――いてっ!いたいいたいいたい、榊、いたいって!」

「オラ、ふざけてねぇで早く言え!ハゲになんぞ!」

「…なん、だと!?」

「うぜぇええええ……」

「――ふっ!焦るなよ、少年。人生長いんだぜ?」

「もういっそのこと死ねお前!」

 ……。

 どうやら嫌らしい。

 ――ここまで言われたら、例え榊君たち自身のためだったとしても……この罰はやめざるを得ないだろう。

「……谷口、君」

 谷口君を制する為に呼びかけると、谷口君は今までの笑顔の中で一番の笑みを浮かべて、「了解しました!」、うんうん、あそこまで言われたらやめるべきだよね。「加藤!四人を!」「は~い」そう言って加藤君は速やかに椅子に四人を縛り付け……――え?

 疑問に思った時はもう遅かった。

「「「【魔王】ぅぅぅうう!」」」

「俺は神だぁああああああ!」

「東山は協調性をもてぇええええ!」

 いくつもの叫びが防音されてある風紀室に響き渡る。


 ……え?


 ウィィイイン、バリカンがなる。その音と同時にじょりじょり、と不吉な音がなる。


 ……え?


「あははー……こういうのがイヤだったから染めなかったのになぁ」

 広瀬君がどこか諦めた風に言う。


 ……ん?


「谷口、君?」

「はいっ!なんでしょう、透子先輩!……あ、まだ精神的ショックが足りない、ということですね!分かりました、徹底的にやらせていただきます!」

「……えっ!?」

(――違うよ、谷口君!)

 もごもごと口ごもってしまい、思ったことが言えなかった。

 谷口君はとても楽しそうに髪を剃っていきながら、耳元でなにごとかを囁く。かすかに聞こえてくる言葉はどうにもこうにも嫌な予感しかさせないものあり、たった今やられている郁屋君のひどい顔色は髪の毛よりもそれによるダメージが大きいだろう。

「もうやだぁあああああ!」

「だま……くださ……ぶた」

 郁屋君が泣き叫ぶ。

 罪悪感から机にもどって書類を始めると、「あいつ、もう見てすらいねえ……!」と榊君に言われた。


(ごめんなさい……っ!)



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