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私と子犬な後輩  作者: 三笠 諒
一年目 春
7/21

陶酔、彼はまさに変態

谷口晃視点。

多分もう彼の視点を書くことは無いと思う。というかもうかきたくない。

だって……難しかった、書きづらかった。



 僕のただ一人尊敬する先輩……北条透子先輩はいつもの無表情でソファーに座っている。向かいには縮こまった様子で四人が座っていた。透子先輩に彼らが見られているというだけで嫉妬の想いが胸をしめる。僕を見て欲しい。目線に強く想いをのせてうったえるが彼女に気付いた様子はない。

「……はぁ、」

 思わずため息がでる。

 何かに八つ当たりしたい気持ちだが……さっき怒られた手前、それもできない。今でこそまともだが委員長はあくまで暴君なのだ。いつ暴力に訴えるかわからない。

 柔らかそうな黒髪。スラリとした体型。美しい顔。陶器のような肌。透子先輩は本当に素晴らしい。……あぁ、抱きしめたい。

「おい」

 それが無理でも、いつまでも見つめていたい。

「谷口」

 ――透子先輩に、見つめられたい。

 隣で加藤が異様な焦りを見せているが、全く視界に入らない。僕の視界に必要なのは透子先輩、ただ一人だ。


 僕の頭に衝撃が走った。


 加藤がすごい顔で囁く。

「たっ、谷口!どうしたんだよ!

委員長に呼びかけられて反応なしなんて、自殺行為以外のなにものでもないぜ!?」

 ……そんな死亡率80%越え(ほぼ確実)の自殺行為してたのか。

「……すみません、書類に集中してました。」

 足に全力の蹴りを入れられた。相当痛い。

 謝ったのに、そう思い軽く睨むと、「目が気に入らねぇ」また頭を殴られる。

「……清水、先輩。さす……がに 」

 透子先輩がそう言うと、舌打ちをしながら手をひっこめる。思わず安堵の息が出る。委員長はそれにもさらに苛つきながら床を陥没させるにとどめた。――透子先輩、ありがとうございました。

 ずきずきと体が痛む。今日はこれだけすんで本当によかった。とめてくれなかったら病院直行となっていただろうことは明白だ。

「すみません、委員長。なにか御用でしょうか?」

「処罰、北条と一緒に考えて適当にやっとけ。俺は寝る」

 そう言って委員長はあくびを漏らして隣の仮眠室へ歩いて行った。

(昨日も委員会中に寝てなかったか?)

思ったが、口にすると後で絶対後悔する(死ぬ)ことになると感じたので、「はい」それについてなにも言わなかった。


 ――それにしても。


(よっしゃああああ!透子先輩と“一緒”だぁ!)


 よくやってくれた委員長。

 念願の透子先輩との仕事。嬉しさが体を支配する。

「……よろしく、ね……」

 透子先輩の口角が僅かに上がる。これは透子先輩にとって満面の笑みなのだ。透子先輩をずっと見守ってきた僕だからこそ分かること。それは僕の数少ない誇りの一つだ。

 加藤がこちらを羨ましそうな目で見ているが、華麗に無視する。そんな加藤の視線に真面目に処罰のことを考えている透子先輩は気付かない。明らかに落ち込んでいる加藤の様子にどうしようもないほどのおもしろさがこみあげ、思わず笑みをこぼしてしまう。それに目敏く気付いた広瀬隆俊は恐怖の視線をこちらに向けた。そんな広瀬の異常には他の三人は目の前の透子先輩にいろいろな意味で夢中で気付かない。

「じゃあ、透子先輩。処罰……考えましょうか!」

 笑顔で言い放つと榊と愉快な仲間たちは、恐怖で顔がひきつった。ざまぁ。

 透子先輩は何かを思いついたように顔をあげた。

「た、にぐち……君、」

 彼女に皆の視線が集まる。

 名案を思いついたのであろう、どことなく嬉しそうな透子先輩に愛しさがうまれる。

「まず、は」

((((((あ、一つじゃないんだ))))))

 初めて風紀室の彼女以外の思いが揃った瞬間であった。

「かみ、……を、」

 透子先輩のたどたどしい口調がやけに遅く感じられる。

 なにをするんだろうか。……まずは染めるとかだろうか?


「剃ろう!」


 今までにないはっきりした言葉に彼女以外全員吹いた。

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