不良、彼はまさに子犬
本当に更新が遅れてすみません!
最近私生活が忙しく、更新が遅くなってしまいそうです……。
「……え?」
口下手な透子が無駄な言葉を話すことは珍しい。
よって、こうして疑問の声をあげることが一年に一度くらいの頻度であるのだ。――つまり、一年に一度しかない程の驚きがこの時生まれたわけである。
そう。
金髪のいかにも不良そうな人――確か長谷川君といったか――が意味不明なことを言ったのが、魔王と恐れられる北条透子を驚かせたのだ。
「……今、なん…て?」
「……っ!す、すみませんっ!あ、あの、つい、欲望が……」
長谷川君は顔を真っ赤に染め上げて、躊躇いながらも口を開く。その姿もやはり絵になる。恰好いいからか?不良と告白ってイメージ的にシュールだけど。
「……あの、姐御って呼んでもいいスか?」
そう言われた一言に、フリーズした。
どうやら聞き間違いとかそういうのじゃないらしい。聞き間違いであって欲しかった。
長谷川君が、姉趣味な人だと知りたくなかった!
「……ちょ…っと、無理」
「!? なんでっすか...…?」
否と答えると、長谷川君は絶望したような顔になって、がくりと校舎にもたれた。最後の「なんでっすか……?」は消えいるような声だった。
それにしても、理由、ねえ。
「…なんか、イヤ」
それに大きく肩を落とす長谷川君。
数秒たって、名案思いついたように言う。
「……じゃあ、じゃあ!せめて姐さんと!」
なんで風紀委員が不良の姐さんやらなくてはいけないのか。
「…こと、わる」
当たり前です。
「……う、ぅぅううう」
「……」
心底悲しそうな顔で呻き声を発する彼は、さっきまでの自信満々イケメンフェイスが台無しになっている。もうすっかり子犬系だ。……なんだかダンボール箱に入っている可哀想な子犬を連想してしまう。そう思っているうちに、雨の日のオプションまでついてくる。
(なんかこう、罪悪感が……!!)
「……」
「……」
「……う、……せ、先輩、って……」
「本当っすか!?ありがとうございます!!」
「……え、あ、……」
「先輩っ!先輩のカッコよさに惚れました!!――あの、しゃ、しゃしゃしゃしゃ舎弟にっ!して下さい!!」
真剣な目で、こちらを見つめてくる長谷川君。その顔は興奮のせいかほのかに赤みを帯びている。
「………………え?」
……What?
「俺を、先輩の舎弟に……もし駄目だったらパシリでもいいんですっ!どうかっ!」
(なんでそんな必死に!?……はっ、まさか……)
長谷川君……
(榊君のこと、怖かったのね!!)
だってあの最☆強榊君だ。怖くたって仕方ない……さっきまでは強がってたのか。あんなに余裕そうに見えたのに……ほかの三人は何故長谷川君の気持ちを汲み取ってあげなかったのか。本当に榊君以外は無能だ。
そこで私が助けに入った――うん、お礼をしたいのね、助けてくれた。じゃなければまさか今みたいな発言が出てくるはずない。
「……礼は、いら……ない」
結構端折ったけど、意味は分かるよね。
「え……ちが、」
「じゃあ」
長谷川くんは大きく目を見開いた後、なにか言おうとしていたけど、ぶっちゃけ気にする余裕はない。だって、
(榊くぅぅうううん!!まだ怒ってる!?)
今現在最大の懸念がそれだからだ。
ダッシュでその場を去る。彼の違反は、今回は見逃してやろう。すごい怖かったようだし。
(……まぁ、時間を無駄にしたくないだけだけど。)
本音を少しだけ漏らしながら、榊君の向かった方に走る。バイブし続ける携帯は無視。なにがどうなっても無視だ。どうせどこかの暴君からとんでもないことを言われるだけだから。