表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/12

静寂の医務室と、自覚のベルガモット

翌朝、図書室の施錠に関する調査が始まったが、鍵をかけた「犯人」を特定することはできなかった。目撃者はなく、防犯装置もその時間だけ不自然に機能していなかったのだ。


そんな喧騒を離れ、キャロラインは医務室のベッドで横になっていた。幸い体に異常はなかったが、エリオットが「念の為、午前中は休むように」と、半ば強制的に休ませたのだ。


「……失礼するよ」


聞き慣れた声と共に、ベルガモットの香りが漂う。エリオットが一人で医務室に入ってきた。


「エリオット様……。あの、わたしならもう大丈夫です」


「……そうは見えないな。顔色がまだ悪い」


エリオットは椅子を引き、キャロラインの枕元に座った。その瞳には、昨夜の図書室で見せたような、剥き出しの焦燥がまだ微かに残っている。


「……昨夜、君を抱きしめた時。僕は生まれて初めて、足のすくむような恐怖を感じたんだ。君がいなくなるかもしれないという、耐え難い恐怖をね」


エリオットはそっと、キャロラインの白い頬に指を這わせた。


「これは、ただの『面倒見のいい先輩』が後輩に抱く感情じゃない。……自分でも驚くほど、僕は君を失うことを恐れているんだ。わかるかな、ケイティ?」


「……っ」


「ケイティ」という特別な呼び名。そして、彼から向けられる熱を帯びた視線。

キャロラインは、心臓が耳元で鳴っているような錯覚に陥った。顔が真っ赤に染まり、どう答えていいか分からず視線を泳がせる。


「……あ、あの、わたし、そんな……エリオット様のような方に、そんな風に思っていただけるなんて……」


「ふふ、君を困らせるつもりはなかったんだ。今は、ゆっくり休んで。……君を守るためなら、僕はどんな手を使ってでも、犯人を炙り出すつもりだから」


そう言って微笑んだ彼の瞳の奥に、キャロラインは「策士」としての冷徹な光を見た。

けれど、その光が自分を守るためのものだと知り、恐ろしさよりも、確かな安心感が胸に広がっていくのを感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ