1話
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この世界には現実逃避するための媒体が多すぎる。どれだけその世界に入り込んでも、得られるのは一過性の感動と叶えられもしない理想だけ。結局みんな現実を受け入れて生きていくしかないのに、無駄なことにばかり時間を費やして...。
これだけ偉そうに言う僕も、周りと比べて特別なものは何もない。だからそういう話題が出た時も突っぱねずに上辺だけは取り繕って生活に支障が出ないようにしている。ただ猫かぶる分ストレスはすごい。特に風水系の話は苦手で、顔が引き攣ってないか心配になるからやめてほしい。
占いとか診断とか現実逃避の最たるもので、存在自体が無意味ーーー
「この診断によればミクちゃんは...明るく振る舞ってるけど本当は傷つきやすいガラスのハートの持ち主とのことです!」
「え!!そーなのその通り!!よっちゃんすごいねこの診断!」
「すげー!次俺も!」
噂をすればなんとやら。
またやってるよ”PPAP診断”。好きな文房具と好きな果物を言うだけでその人の性格が分かるらしい。
あんまりだ。これを作った人は間違いなく人間をなめてる。そしてまんまと真に受けて喜んでるやつも群がってるやつもみんなバカ。
高校3年に上がってから1ヶ月も経ってないのに、休み時間はこの手の訳の分からない話題ばかりだ。
それもこれも、全部あいつが持ち込んでくるせいだ。
湖ノ鳥 四葉。学年が上がったと同時に転向してきたかと思えばすぐにクラスの中心になって日替わりで占いや診断を持ってくる。はっきり言って怖い。
それでも今もこうして湖ノ鳥の周りが賑やかなのは、彼女の容姿と持ち前のポジティブさのおかげだろう。
まず遠目でも分かるくらいつやつやの黒髪。触ったら濡れてると思う。そのくらいつやつや。
あと目がぱっちりしててちょっと青い。クリスタルみたいな感じ。全然知らないけど多分ハーフ。
そしてなんと言っても明るい。どんな悪い占い結果が出ても最終的にはみんな笑顔にしてる。頭が悪いところも愛嬌があって、人に好かれるために生まれてきた存在と言っても過言ではない。
「...気持ち悪い」
ここまでベタ褒めしながらも、ぼんやり声に出してしまうほど、実は彼女が大嫌いだ。
現実を見ようともせずに根拠のない発言で他人を判断する。そんな無責任なものに陶酔して楽しんでる姿を見てるとどうしようもなくイライラする。
だからという訳ではないが、僕はまだ彼女と一度も話したことがない。もちろん占いやら診断もされたことはない。
でもよかった。席も反対だし、あっちから話しかけてくることもないし、僕と湖ノ鳥はこのまま一度も関わることなく卒業するんだろうーーー
「1ヶ月経ったので席替えしまーす!」
ん?
「初めて話すよね湖ノ鳥です!つばきくん隣よろしくね!」
ん??
...僕は現実主義者だ。当然のようにこの現実も受け入れる。
「うん!!よろしく!!」
自己紹介遅くなりました僕の名前は白石 椿です!クソが!!




