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神様はもういらない

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/10/08

 

 処刑を生業とする一族の家をノックする者がいた。


「はい?」


 処刑人が扉を開けると女性が一人頭を掻きながら立っていた。


「あなたは……」

「こんにちは。お久しぶりです」


 処刑人の旧友だ。

 けれど、こうして会うのは実に久しぶりだ。


「……何の用ですか?」

「実は頼みごとがありまして」

「絶対に聞きません」

「いーや、聞いてもらいます」


 しばらくの間、問答をしていたがやがて処刑人は諦めてため息をつく。


「……で、頼みってなんですか」

「悪いですね、本当に」


 旧友はそう笑うと自分の首に指先を当て、スッと動かすジェスチャーをした。


「処刑して欲しいんです。私を」

「罪を犯していないのにですか」

「犯していますよ。数えきれないほどの殺人を」


 処刑人はため息をつくと旧友を手招きして処刑台へ連れて行った。


「なんでこんなことを願うんですか」

「もう人間は神様を求めていないですからねえ」

「……」


 処刑人は答えられなかった。


「それにもう。私がするよりも早く人間が殺しちゃうんですもの。罪人を」

「人間は罪人以外も殺しています。一緒にするには流石にあなたに失礼です」


 旧友は少しだけ笑った。

 だけど、決意が翻ることはなかった。

 女性はそっと断頭台に首を乗せる。


「一つお聞きして良いですか」

「何でもどうぞ」


 朗らかな彼女に処刑人は迷いながら問う。


「あなたが。死神が居なくなったら世界はどうなるのでしょうか」

「今と変わりませんよ。何にもね」

「……そうですか」



 この日。

 世界に存在していた最後の神様が消えた。

 けれど、世界は何も変わらなかった。

 ――まるで、神様なんて元からいなかったかのように。

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― 新着の感想 ―
最後に残った神が死神とは。。。死神、女性なんですね。 死神が殺す以上に圧倒的多数を人が殺している。今の世界を見ると本当にそうなのかもと思ったりします。 これを読ませていただいていて、ふと逆に思ったりも…
色々な小説で、最後の最後まで人間に寄り添い、結末を見届けるのは死神だとされていましたが、その死神にさえ見放された人間はどれほど罪深いのでしょうか。 大量殺戮の技術を磨いてきた人類が生み出す、あまりに…
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