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私だけが村人のスローライフ  作者: プロット・シン
第一章【村人発見】
11/14

life 11〔村人、敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり〕

 地が鳴り天は割れ、皆で集う。

 目下もとい上目で三日三晩続く激闘を見遣る。

 とはいえ殆ど何をしているのかは私には追えない。

 ただ、さすがに疲れが見える時はある。

 頻繁ではなく時折り、二つの光が一定時間その場で止まっている事があるのだ。

 最初は理由も分からず何となくで眺めていたが、――恐らく。


「アヤネ様、宜しいでしょうか……?」


 ハっと我に返る。

 ついつい気になって、……疲れているのだろうか?

 と。食事用のプレートを持って来た、見た目冒険者と思しき相手に目を向ける。


「はい。――どうぞ」


 食器を受け取り、既に盛られていた白飯の上にルーをかけて――返す。


「ありがとうございますッ、光栄です!」


 毎度の事ながら疑問を抱くが、もはやスルー。

 前世から培った営業スマイルでニコリと客を流す。


「次の方、どうぞー」


 傍らで告げる我が友。

 今は彼、いや彼女こそが私の支えだ。多分物理的にもそうなる可能性はあるし。


「――お願いします!」


 目の前に見える長蛇の列、――村全体が配給会場。


「どうぞ……」

「ありがたき幸せですッ!」


 こっちは迷惑だよ。

 何で、複数設けた配給所の、私にばかり――人が並ぶ。

 ちゃんと見てるか? ほらあっちとかお美しい聖女様だぞ。

 こっちなんて、綺麗所が数人で事に当たっている。

 そっちは――、――等と。

 今さら疑問を呈する事はせず。

 只管目の前に来る避難者達の飯を注ぐのみ。

 これ、夕食までに終わるのか……?


  ※


 急遽始まった魔王と神獣の戦いは村の周囲、その空高くで繰り広げられる事不眠不休の三日間。

 当初は見物していた者達もいつしか一人、また一人と視線を下げて。

 今や時々眺める程度に定着してしまった。

 正直に言ってもの凄く迷惑な戦闘である。

 何故ならば戦場から逃げて来た避難者の群れが村の中で身を寄せ合い、逃げ場を失った結果、村は閑散とした平和から一変――コミケさながらの避難所と成ってしまったのだ。

 どうしてそうなったのかって?

 まぁ、大体のところ察しがつくものの確かな証拠はない。が。

 私の村はとにかく天上の戦いから一切の攻撃対象として被害を受けていないからだ。

 しかし一歩でも村の敷地から出ようものならば、いつその身に天罰ならぬ理不尽が降り注ぐか分かったものではない。

 まるで浮き輪の中央が空いている様に、台風の目が無風であるかの如く、この村だけは外周と同じ被害を全く受けていない。

 それが故意的なものなのか、それとも別の要因があるのか……。

 と、まぁ。

 ただの村人、一般庶民である私には、一切合切――何も分かりはしないのだ。


  ※


 足が棒、――足棒。


「ようやく、終わりましたね……」

「そうですね」


 意識及び目線が遥か遠くを見、ボーゥ。

 すると其処にやって来る、元伝令役の兵隊さん。が。


「アヤネ様、夕食の配給は昨夜と同じ並びで宜しいでしょうかっ?」


 ぁ、ぁぁ……。

 膝が震えている。


「アヤネ様……?」


 傍らのシロさんですらも絶句気味。

 おお神よ、何故村人が飯を配るのか。どうか教えてください……。


「……アヤネ様、お顔の色が少々青く見えますが? もし体調が優れないのであれば交代で誰かを寄越しますが……」


 ェ。


「交代できる……?」

「はい。食事の配給は訓練等でも度々行う事ですので、必要とあらば誰かしらを担当させます。どうかご無理をなさらず」


 そっか。

 私は何を勘違いしていたのか。

 この村で起きるコトは全て自分が主体で動く必要があるとばかり思っていた。が、違う。

 そう、そうだよ。飯なんて誰にでも配れるじゃないか。ていうか、聖女様とかも普通にやってくれてるし。――逆にそっちの方が貴重な気もするが。

 ともかく誰かと交代をすれば、いいだけの話だ。

 私ってこういうところあるんだよなー。ブラックが抜けてない感じというか、ついつい自分で何でもかんでもやろうとするー。

 ダメだぞ私ィ。ハハー。

 と、いう訳で。


「お疲れさまでした」


 バタリ。


「アヤネ様ーっ」


  …


 目を覚ますと日付を跨いでいた。というコトもなく。

 普通に一時間程、自室のベッドにて眠っていた後に起きる。

 そして寝台に座り状況を確認し終えたところで、ノックが三回。直ぐに返事をする。

 と。

 扉が開き、シロさんがやや不安気な表情で入室。その後ろを――。


「お目覚めだったのですね、アヤネ様」

「はい。ご迷惑をおかけしました」

「迷惑だなんて、そんな。……それよりも体調の方は?」

「現状特に。一眠り出来て、落ち着いた感じです」

「そうですか……」


 なんか今のも若干社畜よりの発言かも。

 ただ、――それよりも。気になる――。


「――で、その方達は、どういう理由で」


 此処に居るのか。

 倒れる前はお空でドンパチしていたのに。もしや。


「勝敗が決したのですか?」

「フン、冗談ではない。たかが犬コロ一匹に後れを取るなど、ありえん」

「そうか。では我が月狼の真なる力で悪質な俗物を駆除してやろうか?」

「やれるものならば、やってみろ」


 ピシッ。――じゃないんだよ。

 というか、この二人キャラ的には被ってるんだよなぁ。

 それはそれとして。

 人様の家を軋ませたり、状況を扉の隙間から窺っている集団共々周囲を怯ませるのは本当にヤメてほしい。

 ここは一つ、わざと咳払いをしてから。


「喧嘩をするのは勝手です。けど、それなら村からずっと遠くでやっててください。ハッキリ言って皆が迷惑してますから」


 とりわけこの私がね!


「……ぬぬ」

「……フン」


 お、意外にも?


「よかろう。此度は少々興じるのに没頭し迎え入れる上での節度を失する事となった。ソレについて、改める必要がある。――故に月の獣よ、この勝敗はアヤネに預ける旨を提案するが?」

「――我はいつでも構わん。が好きにしろ、魔の王よ」

「……フン。――ではまた迎えに来るぞ、アヤネ。その時は何があろうとも退きはせぬ、故ゆめゆめ心の準備を忘れるな……」


 次いでクルクルっとシュン。

 お帰りになられた。

 本当に勝手だなぁ。

 ま、あの手の上司には散々な目にあわされたし今さらって、また私は。


「アヤネ様」


 見るとほっとした様子のシロさんが、何やら言いたげに。


「はい?」

「……アヤネ様、凄いです……」


 ぇ、何が。


「あの魔王を、……二度も退けるなんて」


 いやいや。


「私は何も」


 寧ろ――。


「――妨げになったのはモンちゃん、と」

「ぬ? なに、アヤネを攫おうと企てる不届き者など今後我が月狼の牙が許さぬぞ」


 はて、どの口が?


「神獣様、誠に感謝いたします」

「がっはっは、よいよい人の子よ。それよりも我はしばらくこの村に居座る事となった故よろしく頼むぞ」

「はいッ」


 また勝手に……。

 フゥ。どうせ、言ったところで聞く耳はないだろうし。――なので。


「ところで、汚れてますね?」

「ぬ……」


 どういう結果、その経緯がどうであれ、村人の本分とは日常を中心に据えて回る。


「シロさんお湯を沸かしてください」

「ぇ。ぁ、ハイっ」

「マ、待て、それならば以前と同じく手拭いでっ」

「それでは不十分です」


 レッツ、もふっとバスロマン。


「月狼は体毛が濡れるとーォッ!」

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