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私だけが村人のスローライフ  作者: プロット・シン
第一章【村人発見】
10/14

life 10〔おかゆを守ってください〕

「――人の姿を模されたこの形、如何せん動きづらい……」


 美しい月光色の輝きで靡く髪。

 そして二人の目に映る少年が、そう呟き。


「ガァッツ!」

「喧しい」


 巨大な棍棒ごと、大柄の魔物を軽々しく薙ぎ払う手で刻む。

 ボトボトと地面に落ちる肉の残骸。

 次いでその上から墓標の様に突き立つ太い木の棒。

 再度自分達を見直す灰色深い冷静な瞳に恐怖し、思わずレイジの口からは小さな悲鳴が漏れ出た。


「邪魔は排除した。で、どうなのだ?」

「……ど、どう?」


 勇気を振り絞るつもりでシロが聞き返す。


「だからキサマらはアヤネの友人なのかと尋ねているのだ。早々に答えよ」


 やや苛立つ雰囲気で告げる少年。察して、余計な詮索はせずに――。


「――えっと、アヤネ様はボクの……元護衛対象です」

「護衛? つまりキサマはアヤネを護る立場なのだな?」

「そうですね……」

「ならば友人だ。で、隣の者はアヤネとはどういう関係だ?」


 暫しの沈黙。

 隣に居るシロの耳にレイジが唾を飲む音が聞こえる。


「何故なにも言わぬ? キサマはアヤネにとって都合の悪い存在だからか?」

「……俺は」

「――彼は、アヤネ様のご依頼を受けてボク、自分を――救援に来た仲間です!」

「仲間? なれば友の仲間は同じ友であろう。うむ、良きだ。でだ、その方らはアヤネの所へと参る途中であるか?」

「え、っと……それは」

「そうだ。俺らはアヤネ様の所に行く最中なんだ」

「――然様か。では共に参るぞ、今日日は祝いの日、祝う声は多いに越したことはない」


 そう言って楽し気に笑う。少年の向かう先、絶望の群れが立ちはだかる。が――。


「待ってくださいっ、そっちは」


 ――少年が振り返り、冷笑したその表情に呆然する二人の鼓動が高鳴る。


「苦も無く、この身は月狼マーナガルムの子。彼の地へ続く道は月影に照らされておる」


 斯くして前方より迫り来る魔物の群れ。

 空に月は見えずとも、地上には光臨する月光を浴びて消え去る無数の叫びが乱れ飛ぶ。


  *


 今日も平和な八つ刻。

 思わぬ来訪者が見知った二人と共に現れる。


「アヤネよ、参ったぞ」


 満面の笑み。

 もし尻尾でもあれば、もの凄くブンブンしている気がする。

 そしてその子供の直ぐ後ろには。


「アヤネ様、ご無沙汰しております……」


 護衛騎士のシロさんが、なんとも言えない顔でお辞儀する。

 隣に居るのは心当たりのある。


「……約束は果たしたぜ」


 そして何故か踵を返す。


「何処に行くの?」

「――……この数日、貴方と一緒に居て分かった。オレとアヤネ様は住まされた生き方が違うって。正直に言ってガッカリはしたけど、オレはオレの生きれる所で活動するしかないんだ。だから、さようならだ」


 と言い残し歩み出す。盗賊がヒラヒラと後ろ姿で手を振るう。


「レ、レイジさんっ、ありがとうございました!」


 深々と頭を下げる騎士。

 何のコトかも分からず、ほやっと見ている薄い青みを含む白髪の子供。

 私はといえば。

 ……最初からそう言ってたけどな。と、ガッカリされたコトに憤るのみ。


  …


 場を改め、其々の経緯や事情を知って驚く。


「ェじゃあアナタはモンちゃんなの……?」

「そうだ、我はモンちゃんだ」


 そして何故か見るから嬉しそうにする。


「……どうしてそんな、子供に……?」

「うむ。我はあの後、月狼の里へと戻り父に問うた。だが父マーナガルムですらも村人の縛りを解く術は分からぬと申したのだ。故に、こうなった」


 肝心なところが端折られてるなー。


「えっと、この子供、じゃなくて――この方は月狼なのですか……?」

「そうみたいですね」


 詳細はまだ途中だけども、九分九厘。


「月狼と言えば、あの神獣ですよね……」


 あのと言われても、どの話なのか知った事がない。


「……ボク、初めて実物を見ました」


 そういう感じなのですね。


「――ところでアヤネよ、我はこの村に住み着く事としたぞ」

「ぇ、何故……?」

「我が父は言った。――人を知り人を学べ、と。その為には人の営みを模し共に生きよと言い、我が身に人の形を課す試練としたのだ」


 なるほど。だから、そんな姿に。

 しかし――。


「――……何の試練?」

「無論アヤネとの約束を果たす所以、その苦難にして新たな力を得る修練であると父は申したのだ。すなわち、人が何に縛られて生きているのかを知れば、自ずと答えを得る事となろう、偉大な父の言葉である」


 いやパパさんそれらしい事を言ってるだけで根拠皆無じゃん。


「と言う訳でアヤネよ、今日日よりよろしく頼むぞ」


 そんな急に言われても。

 と戸惑う私。

 が白髪の子供はそんな自分をそっぽ向く、――その先に。


「してアヤネの友人とやらには、人以外も交ざっておるのか?」


 自分としても意外に受け入れは早く、あらと見据える新たな訪問者の姿。


「ほう、神獣にまで嗅ぎ付けられるとは――名実共に卓越した村人だなアヤネ」


 そんな高名な村人が居て、たまるか。


「キサマは魔族か? さてはこの騒動、キサマが原因だな」

「フン、犬コロと言えどもさすがは神と名が付くだけの脳はあるようだな。お利口だ」


 瞬間――周囲がザワつく。

 風は吹いていないのに、何故か草木が動き出す。


「ひィ」


 シロさん……?

 どういう訳か後ろ側へと座り込む。

 攻撃された様には見えなかったが、心配して歩み寄る。――と。

 一瞬もの凄い衝撃が、風の様に巻き上がった。

 結果、反射的に振り返る。が、其処には――。


「あれ?」


 ――今し方まで居た犬様と魔王の姿は無く、見渡す範囲にも確認できない。

 すると不思議がる私の前でへたり込む騎士は何も言わず、ただ上空を指し示し。

 その方向を見る私こと庶民の目に、入ったのは。


「……スッゲ」


 まるで花火みたいに炸裂する無数の閃光や時折り伸びる光の線、見事なまでに空を彩る極悪な立ち入り禁止区域、そのパレードな光景。


「アヤネ様、ここは危険です。少し離れませんか?」


 ェ? ぁぁ、――それなら。

 きっとベストな場所がありますよ。


  *


 一同が空を見上げる。

 この時ばかりは戦場に在るありとあらゆる命が手を止めて、その戦いに瞳を向け。

 祈り続けた。

 どうか、我が身にふりかかりませんように。と。

 人類だけでなく魔族もが一丸となって願いを天に向け――祈る。

 空を奔る閃光が地上へ、その先の軍を薙ぎ払い爆音と共に燃え上がり多くの命が消失す。

 飛び散る稲妻は雨の様に降り注ぎ生者を穿ち。

 ――阿鼻叫喚。

 いつしか人も魔も握り締める手を解き、走る。

 この地に神は居ない。

 この空に主は居らず。

 正にその双方こそが命在る者に死を与えているのだと、気付く。

 走れ、走らなければ死が待っている。

 人も魔も入り交じって、ひた走る。

 向かう先は一つ、全ての命が平等に同じ方向を見る瞬間。

 世界はこの地に於いて心を一つに、一丸と成り――手をも取り合う。


  *


 村長宅が在る村一番の高所。

 本来は持ち主である村長の許可を得て立ち入るのが常識だけど。

 その本人がヒト月に一夜しか滞在しない、実質の別荘地。なので。

 時折り今みたいに丘からの風景を楽しんでお茶するのが私なりの用途。

 ――なのだけども。


「……何? この状況」

「恐らく皆さん避難して来てるのだと思います……」


 村全体がコミケみたいになってるぞ。スゲー。

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