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神-U.E.Remains.Nonorema  作者: 一鸞一
第一章-カイコリオ浮遊諸島
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第四話 敵性遺物と侵略天使


ヨムドはワシの覚悟を受け取ってくれたのか、安堵した顔で微笑みかける。

ワシは彼の笑みに射るような眼差しで返すと、ヨムドは自身の手のひらから『白銀色の凸凹した物体』を生み出した。


「よかった、君に断られるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ。

さ、手を出して。

今すぐ『粛清の遺物』、譲渡を始めよう........!」


「はい!」


「よし、それならまず片手を出して。

遺物は保持者本人と後継者の二人の同意があって初めて上手くいく」


「具体的にどうするんですか.......?」


「まずは遺物への警戒心を緩めて。

遺物という名の概念を心で受け入れるんだ」


「心で.......?」


「遺物の力は心と密接するからね。

要は感情ののりでくっつけるイメージだ」


「感情の、糊.......?」


ワシはヨムドの言葉通り、心で遺物を受け入れる態勢を築いていく。

そして.......ワシの胸部に白銀色の光が収まると、ワシの中から何かが溢れ出すような感覚がした。


「よし、譲渡成功だ。

なんとか上手くいったね。

賭けが成功した」


「.......すみません、体から何か白い力が溢れ出てる気がするんですが.......?」


「それは『神気』だよ。

遺物を手にした者にのみ使える特殊なエネルギー。

遺物使いはそのエネルギーを使って能力を操る。

ただし、最初は神気の操作は難しいから、なるべく神気は使わず、上司の許可を得て使うこと。

それがその能力を使う条件だよ」


「分かりました。

危険な力、正しく使う努力をします」


「よろしい。

で、早速だけど、君に仕事が来たようだよ?」


ワシは「へ?」と声を出しながら、ヨムドが指さす方向へ目を向ける。

途端、ヨムドの指先の方角から強い衝撃音が鳴り響き、遺画の塔の本堂全体へ行き届いた。


「この衝撃音.......ほぼ間違いなく『天使の槍』だ。

ダーティス、武官を招集し、ただちに出撃命令を.......!」


「はっ!」


ワシを本堂へ案内していた武人『ダーティス』はヨムドの指令を受けるや否や、至急武官らへ伝達しに姿をくらます。

事態の急変を前にワシは慌ただしく取り乱していると、ヨムドはワシの両肩を掴み、真剣な瞳で強く訴えかけた。


「モンズ、これしきで狼狽えては武人にはなれん。

武人なら、非常時ほど心を押し殺し、堂々と立ち振る舞う努力をしなさい。

我々武人はいつだって経営理念の『人々の安全と秩序の保全』に徹底して努める責任と義務がある.......!

最初から上手くやれとは言わない。

しかし、失敗と向き合い、大変な時ほど基本の心構えを思い出しなさい。

それがきっと、君を窮地から救ってくれるはずだ」


「は、はい.......」


ワシはヨムドの唐突なアドバイスに戸惑う。

たしか、えっと.......堂々と立ち振る舞え、経営理念の責任のために頑張れ、失敗と心構えをなんとか身につけろ、ってことかな?

そんなことを考えながら、ワシはヨムドの指令が下るまで脳裏でそれらを何度か復唱し続けていた。


「第七班、リーダーを務める武官のラルカだ。

君がヨムドさん推薦のモンズ君だね?

我々はこれより外敵である『侵略天使』の討伐作戦を遂行するが、質問はあるか?」


ワシは武官ラルカの質問を聞き、あたふたしながら右手を挙手した。


「はいっ!」


「モンズ君、何かな?」


「侵略天使ってなんですか?」


「そうか、君は侵略天使のいない地域出身だね。

それならば説明しよう。

侵略天使とはいわば『敵性遺物』から作られた空飛ぶ槍使いの総称だ」


「敵性、遺物.......?」


「敵性遺物というのは外敵を生み出す遺物の総称だ。

外敵は遺物のエネルギーによって構築され、生み出される。

我々武人の任務は基本、『敵性遺物の駆除や無力化』がゴールとなる」


「なるほど、その敵性遺物を排除することが今回のミッションなんですね!」


「端的に言えばそうだ。

だが、一つだけ注意点がある。

それは『侵略天使』の持つ外敵としての特性だ」


「外敵としての、特性.......?」


「通常『外敵』と呼ばれる存在は気候や土地、その他様々な条件の違いによって出現するものが大きく異なるものだが、今回討伐を行う侵略天使と呼ばれるものは攻撃性が非常に強く、その上で気性が荒い。

それに加えて槍術の練度も地上の武器使い顔負けの力を持つんだ。

ゆえに、彼らを攻略する上で重要なのが『囮役』、すなわち『盾役』だ」


「盾役?」


「ああ。

今回の作戦ではベテランの『ウーイズ』氏に担当してもらうが、彼が天使を引きつけたところを我々がすかさず不意打ちしトドメを刺す。

もとい、天使の群れを弱らせ無力化させる。

この一連の動作が作戦成功の鍵を握るのだが、ここまでは分かるか?」


「はい。

ただ、肝心の『敵性遺物』というのは群れの中にあるって認識でいいんですか?」


「その通り、我々のゴールである敵性遺物は天使の群れが守っている。

ゆえに、我々はそれらの群れを順次遺物から引き剥がし、遺物までのルートを確保するという過程が要求される。

ここまでが主な任務の内容だ」


武官のラルカはワシの質問を最後に第七班の指揮を取る。

そしてワシらに任務開始の合図を送った。


「それでは、これより敵性体『侵略天使』の討伐作戦を開始する!

全員、僕の号令に従い、チームワークを怠らず職務を果たせ!

以上、では現場に突入する!」


「「「はっ!」」」


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