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神-U.E.Remains.Nonorema  作者: 一鸞一
第一章-カイコリオ浮遊諸島
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第三話 粛清の遺物


ワシは首を傾げ案内人の言葉の意味を熟考する。


「嘆願したいこと.......?」


「無論、その言葉に強制力はありません。

あなたの希望に沿えた場合のみ、それらの話を検討すると仰っていましたよ」


ワシは階段を怪訝な表情で一段、一段と登る。

もしかして騙されているのではと脳裏に憶測が飛び交うも、気がつくとワシは本堂らしき場所に辿り着く。


「来たね、モンズ。

君に会えるのを楽しみにしていたよ」


「恐れ多いお言葉です」


「さて、早速本題に入ろう。

実は君には預かって欲しいものがあるんだが、それを話す前にまずは『この組織』の役割について話しておこうと思う」


「この組織、ですか.......?」


「この組織というのは言わずもがな『武人連合』のことだ。

君はこの組織に所属して日が浅い。

だからこそ、私が直接話すべきと判断した」


「ヨムドさんが直接.......?

そんなに重要な話をするんですか?」


「ああ。

しかしその前に、君には武人連合の『経営理念』を知ってもらわねばならない。

武人連合の経営理念、それは『人々の安全と秩序の保全』だ。

武人連合は公共機関として多くの国々に支援され、そしておよそ四十年前に設立された。

しかし依然として遺物の脅威は収まらず、世界中の至る所で『外敵』と呼ばれる敵が出現し始めた」


「外敵........謎多き未確認生物ですね?」


ヨムドはふうとため息を一つつき、そして話を始めた。


「未確認生物.......我々武人連合の経営理念を最も脅かす強敵だ。

四十年前、突如地上に降り注いだ遺物たちによって地上は混沌の時代を迎えた。

そんな時、国家が連動して生み出した格闘技を極めし者たちを集めそれらを主力にした組織こそ、『武人連合』と呼ばれる新勢力だ」


「武人連合がそんな経緯で........!?」


「そう。

そしておよそ四十年の月日が経ち、今もなお我々は外敵なるものに立ち向かっている。

これが武人連合の成り立ちだ。

さて、ここから本題に入ろう」


ヨムドはこほんと一度咳払いをすると、自身の背後から見覚えのあるガラクタのような物を引っ張り出した。


「これ、君が昨日誤って壊した物なんだけど、覚えてるかな?」


「えっ!?

まさか、弁償!?」


「いやいや、いいんだ。

私としては渡って欲しくないヤツに渡らなかっただけマシだと思ってる。

ただ、この遺物に関しては武人連合に属する以上、知識として知っておかなければならない」


「遺物?

それが遺物なんですか.......?」


ワシはぎこちない表情で、うーんと顎に手を置き熟考する。

遺物という概念は自分の中でも正直ふわふわした概念で、あまり詳しくは知らない。


「これは『神の遺物』。

地上に飛来した遺物の中で特に希少な物であり、触れれば一度だけ能力を獲得できるという危険極まりない代物だ」


「能力を、獲得ですか?」


ワシはヨムドによって明かされた事実に怪訝な表情を露わにする。

しかし、ヨムドは続けざまにそれらの遺物の概要を語り出した。


「見覚えはないか?

先日、君が蹴り飛ばしたという武人も『遺物の力』を得ている。

一人、龍の姿をした者がいなかったか?

それだ」


「それって、あの龍が.......!?

遺物による能力なんですか!?」


「そう。

アイツは特例の遺物の保持者。

『龍の遺物』を体内に吸収した、強力な龍に変身できる武人連合きっての逸材だよ」


「逸材.......彼が.......ですか?」


ヨムドは自慢げに笑みを溢しながら、悲哀の雰囲気を微かに醸し出した。


「彼は今、幽閉塔に監禁してる。

彼は私の自慢の弟子なんだがね、少し暴走気味なのが玉に瑕だ。

しかし、彼なら必ず、人々を守る立派な武人になれると信じている。

だからこそ、私は一つ君にお願いしなければならないことがある」


「お願い.......ですか?」


「本来は新参の君に頼むことではない。

しかし、決断は早い方がいい。

モンズ、私の能力の元である『粛清の遺物』の能力を継承してはもらえないだろうか?」


「遺物を、継承ですか.......?」


「先述した通り、遺物は危険な力を持つ存在だ。

だからこそ、武人連合の目の届く所で管理しなければならない。

私は危惧してるのだよ、この力が悪用されることを」


「悪用されたら、どうなるんですか?」


「力によっては世界が滅ぶ。

そのくらい危険だ」


「世界が、滅ぶ.......!?」


ワシはヨムドの発言に瞠目する。

ヨムドはそんなワシを見ながらふっと笑みを浮かべると、真剣な眼差しをこちらに向けた。


「今、武人連合は人員が不足している。

外敵との戦い、遺物の管理、そして闇の勢力との勢力争い。

背負うものがあまりにも多すぎるんだ。

だから、どうか私に手を貸して欲しい」


「......けど、どうしてワシなんかにその遺物を託すのですか?

ワシは武人とはいえ、まだ組織に馴染んでいない新参者ですよ?

そんなワシになぜ遺物を.......?」


「遺物の保持者というのは必然的に『自身の後継者』を直感で見つける力があるんだよ。

そして私は君こそが私の後継者、粛清の遺物の使い手に相応しい人物だと感じた。

それが君を選んだ理由だよ」


「ワシを、選んだ理由.......」


ワシはヨムドの本音ことばを聞いた瞬間、話を承諾する決意を固める。

そして.......。


「なら、ワシにその遺物をください.......!

きっと、この組織の役に立ってみせます.......!」


気がつくとワシは、自分でも予想外の言葉を

咄嗟に口に出していた。


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