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神-U.E.Remains.Nonorema  作者: 一鸞一
第一章-カイコリオ浮遊諸島
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第一話 遺物と龍の申し子


四十年前、突如地上に『遺物の雨』が降り出した。

地上に衝突した遺物は人や物、その他多くのものに『能力』の片鱗を与え、それらの恩恵を上回る災害や混沌を世にもたらす。


遺物が人を悪夢へ誘う。

それが世界の常識となる中、新たなる勢力が人の世を立て直すべく設立された。


その組織の名は『武人連合』。

武術を極めし者たちが集い『神の遺物』への対処と確保を行うそれらの組織は、獅子奮迅の活躍と共に地上にて『英雄軍団』としての地位を確立していった。


そして武人連合設立から幾らかの月日が経ったある日のこと、武人連合に偶然スカウトされた一人の男は選ばれし英雄軍団エリートたちの一員として身を粉にして戦う決意を固め、主要都市『ルートゥシィ』の『とある建物』を訪問していた。


ーー


標高七千メートルに浮かぶ島『カイコリオ諸島』。

その島の中心地には『カイコリオ大遊国』と呼ばれる大国が強者たちと共に栄えていた。


そんな中、ワシ『武人モンズ』は師のムンガと別れ、一人王都の中心地にある『武人連合本部』に辿り着いた。


「はぁ、緊張する。

ワシみたいな辺境の田舎者がどうしてスカウトされたのか、まるっきり謎のままこの日を迎えてしまった。

我ながら、頭痛が痛くなる話じゃ.......」


ワシは憂うような表情で目的の建物の屋根上を見上げる。

なんというか、田舎では決して見ることのない高さの建物だ。


「ここは宿舎?

それで向こうのが『遺画いかくの塔』という建物か?」


ワシは心機一転し朗らかな顔をしながら正面の建物の玄関口を開扉しようと手を伸ばす。

途端、ワシは思いがけない騒動を目の当たりにしていた。


正面向かって左側の方角、遺画の塔の窓が爆発し、一人の少年らしき人影が手のひらサイズの岩石を運び出そうとしていた。


「遺物が盗み出された!!!

警備隊、直ちに出動せよ!!!」


ワシは即座に現場である遺画の塔の正面へと駆けつける。

『遺物』と呼ばれている岩石を盗み出した少年は自身を取り囲む警備の武人たちを睨みつけ、息を切らしつつ憤慨した顔を見せていた。


「ハァ、ハァ.......止まれ!!!

警備隊、お前たちと少し話をしたい.......!」


「.......!?

どうしてお前がこんなことをしている、ルマ!!!」


「弁明させろ。

できればヨムドさんを呼んでくれ。

今すぐ確認したいことがある.......!」


周囲の警備員たちは愕然とする。

そんな中、遺画の塔の玄関口から人相の悪い黒髪の男が現れた。


「おいおい、まさか『龍の申し子』ともあろうお前が塔から遺物を運び出そうとするとはな。

一体、我々にどう説明する気だ、ルマ?」


「説明も何もない!!!

そこの黒髪とその部下たちがヨムドさんの遺物を盗もうとしていたからだ!!!

たとえ上層部の人間とて、そのような愚行が許されるはずがない!!!」


「はぁ、まったく不可解だ。

この私が盗みを働いた証拠があると?

それなら今すぐ見せてもらいたいものだね?」


男は薄気味の悪い笑みを浮かべ、ルマを即座に問い詰める。

この流れは、なんとなく嫌な予感がするものだ。


「証拠がないと、そう主張する気か?」


「言うまでもない話だ。

私は武人連合の『武豪』という職種に就いている。

つまり、私は高潔な立場なんだ。

たとえ間違っても遺物を盗む理由なんてない。

そうだろ、君たち?

私はそんなくだらないことのためにリスクを犯すような男か?」


「いいえ、そうは思いません.......」


男は周囲の警備員たちにそれらを尋ねる。

どうやら、彼はこの組織においてかなりの権力を保持した人物であるようだ。


「見え見えの嘘を。

じゃあどうして現場にいたんだ!!!」


「たまたま通りかかっただけじゃないか。

それに、私は君と違って遺物の力に執着するような下賎な人間ではないんだよ」


男はルマに対して明らかに重圧を与えにきている。

これは、あまり良い予感はしない話だ。

巻き込まれないうちに宿舎に戻ろう。

そんなことを考えている最中だった。

二人の口論は更に激化の一途を辿り、そしてついには爆発していた。


「ちなみに証人だっている。

その気になれば私はいつでもそれらを証明するお手伝いをできるが、君はどうかな、ルマ君?」


「じゃあ力づくで吐かせてやるよ.......!!!

アンタの黒い噂はよく聞いてるからな、武豪エドナ!!!」


「名誉毀損罪も報告に追加するとしよう」


戦闘は突然始まる。

ルマがエドナに対して戦闘態勢に入ったところで、周囲にいた警備員たちはルマへの攻撃を開始した。


「ルマを取り押さえろ!!!

エドナ様への無礼、これ以上は看過できん!!!」


「テメェら、揃いも揃って腑抜け野郎が!!!

覚えてろよ、クソ野郎ども!!!」


ルマは全身で小刻みにステップを踏み、そして遅いくる警備員たちに数発良いのを叩き込む。


「ぐはっ!!」


「これで暴行罪も追加だな。

ほらさっさと働け、警備員ども!」


警備員はエドナの手となり足となり、ルマを追い詰めていく。

ルマは多対一では分が悪いと思ったのか、一目散に撤退して警備員を蹴散らしながらワシの元はと突撃する。


「退け退けえ!!!」


そしてワシの腹にルマの蹴りが入りかけたその瞬間、ワシは咄嗟にルマへカウンターを決めていた。


「ちょっ、こっち来るなボケ!!!」


「があっ!!!」


ワシは渾身のカウンターでルマを空中へ蹴り上げる。

が、それと同時にいかにも希少そうな『遺物』までも宙に浮いていることに気づく。

あれ、あの石、落ちたら壊れるっけ?

そんなことが脳裏によぎったその直後、ルマが地面にぶつかり、そして遺物は粉々になって地面の上で砕け散っていた。


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