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18話「説教の時間です」

 夜。

 私は、食堂でオウマ様達に、今日あった出来事を話していました。

 新しくお友達ができたことや、コルオットさんとの戦いに勝利したことについて、時間をかけて説明します。


「──そうか、かなり順調のようだな。期待以上の成果だ」


 オウマ様が、笑みを浮かべてそう言いました。


「あ……ありがとうございます!」


 報告するまでは不安でしたが、いざ褒められると、やはり嬉しいです。

 人類からみれば、この方々は間違いなく悪なのでしょうが、こうして忠義(ちゅうぎ)を尽くせるのであれば、そんなことはどうでも良くなってしまいます。

 愛は、時に敵味方の概念をも(くつがえ)してしまうのです。

 

「だが……」


 前言撤回です。逆接でした。

 嬉しくないですし、どうでも良くないですし、愛なんて、所詮(しょせん)はお金で買えるような欲に(まみ)れた汚い感情なのです。


「やはり二翼が気になるな。どの程度の実力や権力を有していて、どういった出方をしてくるか予測できない以上、こちらもどの程度仕掛けるべきなのかまるで分からん」


(あ、そっちでしたか。良かったです……)


 否定されるのが嫌な現代人の私は、ほっと胸を撫で下ろして、すぐに反応を返します。


「そうですね……。学年一になるためには目立つ必要がありますが、それまでに二翼の目を()(くぐ)るのはまず不可能です。なので、徹底的(てっていてき)に対策をとる必要がありますが、何せ情報が足りませんからね……」


 すでに目をつけられているのか、つけられていないのか。また、つけられているとしても、いつどこで私を監視しているのか。

 不確定要素が多いので、自由に動くことができません。まるで、見えない鎖に縛られているみたいです。


「ああ……。だが、そこまで心配する必要はない。だって、アヤミは学年でもトップの奴に勝ったのだろう? 今日から、力の加減も行っていくし、ゆくゆくは固有能力を扱えるようになってもらう。だから、二翼にも劣らないさ」


「心強いですね……」


 でもまあ、たしかに私は心配しすぎなのかもしれません。

 幸先(さいさき)のいいスタートを切れて、クラスにも少しずつ溶け込み始めています。

 魔王軍の道具であることがバレればその時点で終わってしまいますが、逆に言えばそれさえバレなければ、どれだけ不利な状況に(おちい)っても問題ないということです。


 何より、オウマ様や幹部の方があまりにも強すぎます。

 力の一部を受け取った私ですら、これだけ人間離れしているのですから、本人の力も相当なものに違いません。

 もしかしたら、バレても何とかなってしまうのでは? と、そう思ってしまいます。


「あ、そうそう。食べ終わったら、一時間後に訓練室に来てくれるかしら? 場所はダコに案内させるから」


 ツキナ様が、お味噌汁をすすって、そう言いました。


「は、はい……!」


 嫌い宣言をされたのと、初めての訓練による緊張が、声にはっきりと出てしまいます。

 その一方で、


「はあ? めんどー……。自分でやれよー……」


 ダコさんは、メイドらしからぬ口答えをします。

 幹部の仕事が嫌でメイドになったのでは?

 そう思いましたが、言っても有耶無耶(うやむや)にされるだけなので言いません。

 これにはツキナ様も呆れて、


「あなたね……。もう少し、自重を覚えたらどうかしら? わがままが過ぎるわよ。大体あなたは……」


 ダコさんに対して、ごもっともなことを述べ始めました。ガミガミ言っていますが、すべて正論です。

 見た目が幼女のツキナ様が、女性の中では身長が高めなダコさんを(しか)りつけているので、面白い光景です。


「うへえ……。正論ぱねぇ……」


 (するど)い言葉が矢印となって、ダコさんの頭や背中にぐさぐさと刺さります。

 説教は長時間に及び、やがて食後まで続きました。私の報告の時間よりも、はるかに長かったです。


 そのうち、解散の流れになり、オウマ様やニオ様達は、各々(おのおの)の部屋へと戻っていきました。

 私は、部屋の外に出るときは、ダコさんを横につけなければならないので、連帯責任で仕方なく残っています。

 少々面倒なことですが、必要なことなので我慢です。

 しばらくして、


「これからは、メイドとしての自覚を持つことね。それが嫌なら、幹部に戻ってバリバリ仕事をしなさい!」


 長時間にわたる説教が終わり、ツキナ様は部屋へと帰っていきました。

 ようやく説教から解放されたダコさんは、


「もう嫌だ……。ご主人、(なぐさ)めて……」


 私に抱きつきながら、ぐったりと体の力を抜きます。この反応、あまり効いてなさそうですね。

 せっかくですし、私もお(きゅう)()えてみましょうか。


「まずは、待たせてしまってごめんなさい、ですよね? 私からも言いたいことがあるので、部屋に行きましょうか」


 私は、そのままダコさんの体を片手で肩に乗せながら部屋へと歩き出します。


「ええ……。もう嫌だああああ……!!!!」


 ジタバタしながらダコさんは泣き叫びました。

 そんなダコさんの心情を察する義理はまったく無かったので、私はその後、訓練の時間になるまでダコさんを説教し続けました。

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