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12話「明かされる能力と計画」

 食事が終わって部屋に戻り、少し休息を取った後に、私はダコさんと共にツキナ様の部屋へと向かいました。


「今回は、私とツキナ様と二人でお話をするので、ダコさんはここで待っていてください」


「んっ。早くしろよ〜」


 私は、扉を三回ノックしました。


「べつに、そんなにかしこまらなくてもいいわ。どうぞ」


「失礼します……」


 部屋の中に入って、扉を閉めます。


「……むむっ?!」


 すると、部屋の中には、アンティークな椅子や机、ベッドなどが置いてありました。

 ……それも、天井にです。


 吊るされているわけでもなく、まるで初めからそこに置いてあったかのように、家具が天井で固定されています。

 部屋の主であるツキナ様も、天井で逆さまになって立っていました。

 まるで、私だけが逆さまになっているのではないかと錯覚してしまいます。

 そんな私の反応を見て、


「ああ、気にしないで。こういう部屋なの」


「は、はい……」


 そう言いましたが、当然気にします。

 やがて、ツキナ様はバク転をしながら、天井から地面へと降りました。


「お待たせ。それじゃあ話をしましょうか。魔蝕計画フェーズ2と、これからの計画について」


「フェーズ2……。また死にかけることになるのでしょうか……?」


 当たり前ですが、もうあんな嫌な目には二度と遭いたくないです。

 元々、オウマ様の契約が無ければ、私は死んでいた身。

 だからこそ、命は大切にしたいのですが、そのオウマ様が良しとするならば、やはり私の意思に関係無く計画を進めるのでしょうか。

 現に、その話をこれからするわけですし……。

 そう思っていたのですが、


「いや、もう死にかけたりはしないわ。あれは力を得る過程で必要だったことだし……。それで、今回話すフェーズ2の話なのだけど、あなたにはフェーズ1で得たその力を、使いこなせるようになってもらう」


(ほっ……)


 どうやら、危険が及ぶ心配は無いようです。

 話は続きます。


「あなたは、オウマ様や私達魔王軍幹部の力の一部を取り込んでいる。つまり、あなたは私達の固有能力を、扱うことができるの」


「固有能力……ですか?」


「そう。優秀な個体であれば、種族に関係無く誰もが持つものよ。たとえば、私の固有能力は『陰陽(おんみょう)』。詳しく説明するとこんな感じ」


 そう言って、紙を取り出しました。

 そこには、ツキナ様の固有能力の詳細が載っていました。


陰陽(おんみょう)

(おん)】身体能力が著しく向上し、一時的に陰の力を得る。陰は光を喰らい、光からの危害を軽減する。また、負の感情が増大するほど効果が増す。

(みょう)】身体能力が著しく向上し、一時的に陽の力を得る。陽は闇を喰らい、闇からの危害を軽減する。また、正の感情が増大するほど効果が増す。


「……陰と陽に分かれていて、用途に合わせて使い分けられるんですね。要約すると、体が強化されて、陰か陽の力を使えるようになる、でしょうか。お強いですね……」


「うん、大まかにはそんな感じ。ただ、弱点もあってね。陰陽というのが、この場合は光と闇のことを指しているから、吸血鬼ってこともあって、陰にカテゴリーされる私が陽を使うと、負荷がかかってしまうの」


「ふむ……。となると、実質、陰しか使えないんですね。つまり、その能力の一部を有する私は人間なので、陰を使うとダメージを受けるんですか?」


「それは分からない。あなたは人間だから、陽が適しているかもしれないし、魔蝕の影響を受けているから陰が適しているかもしれない。試さないと分からないわ」


「試す過程で負荷がかかってしまうのは、少し怖いですね……」


 何にせよ、そんなすごい能力が私の中に宿っているとは……。

 魔蝕計画であれだけ苦しむのも納得がいきますね。


「……それで、ツキナ様を含め、他の方の固有能力を持っているので、それを使いこなせるようになりましょう、ということですか?」


「うん、そういうこと。魔蝕計画フェーズ2の内容はそんな感じ。まあ、今は力の加減ができるようになるのが優先だから、後回しにはなるけどね。そして次が、これからの計画の話。しっかり目を通してね」


 そう言って、ツキナ様はまた別の紙を取り出しました。

 用意周到なのが分かりますが、どこからそのサイズの紙を取り出したのでしょう?

 紙には、その計画の内容が書かれていました。

 以下は、その内容です。


『これからの計画!』


 1.力の加減をできる限り早くできるようになって、学校最強の二翼に魔王軍の干渉を疑われないようにする。(アヤミは地球出身なので、力はあるのに戦闘技術が無いと、怪しまれてしまう)


 2.力の加減ができるようになったら、普段はほどほどに。そして、要所要所でその力を見せつける。(ダコが得た情報では、トーナメント戦やグループを組んでのモンスター討伐などがある。そこで力を発揮)


 3.戦闘技術を身につけていって、二翼を圧倒して自身の存在をアピールする。


 4.学校のトップになる。(頂点に君臨することで、学校と連携している機関からの情報を受け取れるようになる。また、単純に魔王軍からの干渉を受けているアヤミが最上位に位置することで、魔王軍は世界征服に向けて行動しやすい)


 まとめ

 強くなって、トップになって、魔王軍の世界征服に協力してね。もしトップを取れば、この世界への貢献度の高さから、留学期間が伸びる、あるいは行き来や永住ができるようになるかも……。


 時間をかけて読み終えたので、率直な感想を述べます。


「オウマ様は世界征服を目論(もくろ)んでいらっしゃったのですね……。先ほどの固有能力の話も踏まえると、現実的なプランに思えてきます」


「でしょ? これをよく頭に入れて、これから行動してね」


「はい、頑張ります!」


 話が終わったので、これで失礼することにしました。


「それでは、失礼しました!」


 そして、扉に手を触れると、


「あ、そうそう。一つだけ言い忘れてたんだけど……」


 ツキナ様がそう言葉にします。


「はい、何でしょう?」


 私が聞くと、ツキナ様は笑みを浮かべながら、


「オウマ様との契約が交わされている以上、あなたに手を出すことはないけど、私はあなたのことが大っ嫌いだから、覚えておいてね?」


 いつもと変わらない口調でそう言いました。


「へっ……?」


 私が困惑していると、


「じゃあ、おやすみ。明日から指南を開始するから、明日は大人しくね」


 向こうから話を切り上げられたので、大人しく引き下がることにしました。


「は、はい……。失礼しました……」


 私は、訳も分からないまま恐る恐る扉を秘めました。

 廊下には、ヤンキー座りをするダコさんがいて、


「おっ、どうだったー?」


 メイドらしからぬ態度で、立ち上がって話しかけてきます。

 でも、今の私にはそんなダコさんが心強くて……。


「え、えっと……」


 そこで私は、ダコさんに中で起こったことを話しました。

 できるだけ詳細に、そして最後に突然嫌いだと言われたことも伝えました。

 一連の流れを聞いたダコさんは、


「ああ……そういうことね。あいつ、オウマ様のことが好きだからなー……。多分、ご主人とオウマ様の結婚が嫌だったから、嫉妬してんじゃねーの? 今朝も当たりきつかったしな」


 合点がいったのか、なぜ私にあんなことを言ったのか、私が知り得ない事情を含めて教えてくれます。


「そうなんですね……」


(まさか、ツキナ様がオウマ様のことを好いていたとは……。言われてみれば、そんな気も……。申し訳ない気持ちもありますが、私は別に何もしてませんし……)


 複雑です。どうすればいいのでしょう……。

 そう考えていると、


「まあ、そんな気にしなくていいぞー。ご主人の安全は確約されてるわけだし、ずっと生活を送っとけば、排他主義のあいつも次第に心を開くさ。人生のんびりいこうぜー」


 私の心を読んだのか、励ましの言葉をかけてくれました。

 ダコさんらしい呑気なメッセージが、私の心に響きます。


「ありがとうございます……。ダコさんの言葉は、軽いのか重いのかよく分かりませんけど、安心できますね……」


「はっ? 何言ってんだご主人。私は大天使様だぞ。全部重いに決まってんだろ。しかと受け止めよ」


「……堕天使、ですよね? ……ふふっ、あはははは!」


 私は、思わずダコさんの小ボケで笑ってしまいました。

 ツキナ様との一件で困惑していた私にとって、その突然のギャグが心に刺さってしまったのです。

 柄にもなく大笑いをして、私はその場で女の子座りをして顔を下に向けながら、笑いました。

 恐怖による涙と、笑いによる涙が入り混じり、まるで情緒不安定みたいな状態になりました。

 お笑いって、人を救えるんですね。


「どツボにハマっちまってんなー……」


 私とは対極に、すごく冷静なダコさんを置き去りにするように、私はひたすら笑い続けました。

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