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11話「反省とこれから」

 ──その日の夜のことでした。

 あれから、クラスメイトがひそひそと話をし始めて、とても怖くなってしまった私は、魔法の反動と嘘をついて、仮病を使ってまで早退をしました。

 寮には入らなくてもいいと結論が出たのが、唯一の救いです。


「……もう、嫌になってきました」


 せっかくお友達ができましたが、あんな光景を目の当たりにしては、もう二度と近寄ってはくれないでしょう。

 トップを目指せと言われましたが、結果的には悪目立ちして、目標である友達作りの計画も水の泡。


「はあ……」


 ため息をつきながら、ダコさんと一緒に食堂へと向かいます。


「もう準備できてるよー!」


 食堂に入ると、ニオ様がこちらに向かって手を振りながら呼んでいます。

 早歩きで机に向かうと、今晩の料理が並んでいました。

 お肉にお野菜など、栄養バランスが考えられたメニューです。


 昨日は計画の都合上、カロリーの高いものをたらふく食べましたが、普段はこんな感じなのでしょう。

 私達は、食事を始めます。


「いただきます……」


 パクパクと、無言で食べ続けます。

 ドレッシングがかかったサラダが口の中でシャキシャキと鳴ります。

 美味しいです。けど、気まずいです。


 やはり、今日の出来事を引きずってしまいます。

 いつまでも、くよくよしてはいけない。そんなことは分かっているのですが……。

 暗い顔を隠しながら、淡々と食事を進めていると、


「それじゃあ、聞かせてもらおうか。今日の学校はどうだった? 詳しく聞かせてくれ」


 聞かれてしまいました。

 オウマ様が、子供と話したいけれど、とくに話題の無いお父さんがするような問いかけ方で、聞いてきます。

 本当は言いたくないですが、言わなければなりません。

 私は、今日あった出来事を詳細に報告しました。


「──ほう。それで、ダコの忠告を忘れて、初級魔法で容易に壊せない的をぶち壊してしまったと……」


「はい……。地球人らしさとはかけ離れた行動を起こしてしまいました……」


 私は、縮こまりながら言います。

 そう、これはすべて私のミスなのです。

 ダコさんの言うことさえ守っていれば、こんなことには……。

 ですが、返ってきた答えは、


「それは素晴らしいな。よくやった」


 想定とは違って、私の行動を称賛するものでした。


「え、良かったんですか?」


 私は、思わず素で反応してしまいます。

 まさか、あれだけのことをやらかして褒められるとは思いませんでした。

 なぜ、何も問い詰められないのか。疑問を浮かべていると、オウマ様が話し始めます。


「ああ。そもそも、どれほどの力を得て、それを()(かざ)した場合にどうなるのか、詳しく説明していなかった俺に責任があるしな。むしろ、人に危害を加えることなく、皆にその力を見せつけることができて良かった。最善の手だったぞ」


 オウマ様なりの優しさなのでしょうか。

 私を気遣ってくれているようにも思えます。


「ありがとうございます……。でも、留学したばかりのただの地球人が、いきなりあんなことをしでかしたら、何者かの干渉を受けていると疑われませんか?」


「それについては、これからも留意する必要があるが、今は才能ということにしておけばいい。何せ、この世界は才能がものを言うからな」


「そう……します……」


 何か雑なような気もしますが、それ以上に適した理由は無かったので、そうすることにしました。

 ずるしてるみたいで、とても気が引けますが……。


 とりあえず、才能があったと誤魔化すことで、話は終わりになりました。

 しかし、


「あの、オウマ様。一つだけいいっすか?」


 ダコさんが珍しく、食事の途中で口を開きました。


「どうした。調査の報告はあとでも構わないが」


「いや、今後のことを考えると今話さないとまずいんすよねー……」


 どうしたものかと思えば、私と関係があるのか、そう言って何かレポートのようなものを取り出して、今度はダコさんが話を始めます。


「報告しますよー……。私は、今日はご主人の快適な留学生活の確保のため、学園に関する情報を、外部から得られる限り集めました。そこで得た情報で、今後に関係してきそうな情報が一つ。……それは、二翼の存在です」


「二翼?」


「ええ、学校の中でもトップに君臨する二人のことです。一人は、狂人のジーキョ。パワー型の男だと聞いています。もう一人が、狡猾(こうかつ)のコーカ。頭が切れて厄介な女だと聞きました。──本題はここからで、もしこのままトップを目指すのなら、この二人との衝突は避けられません。いずれは接触することになりそうですし、今日のどでかい魔法の件で、向こうに知れ渡る可能性もあります。なので、対策を打つべきかと……」

 

「そうか……。たしかに、今の状態でその二翼とぶつかるのはまずいな。アヤミは、パワーはあっても技力は下の下だ。このまま接触が起きれば、向こうに干渉を疑われる可能性がある。つまり、力の加減が必要だな……」


 オウマ様は、食事を少しやめて、考え込みます。

 幹部の方々も、それに合わせて一旦食べるのをやめたので、私もそれに合わせます。

 しばらくして、結論が出たようです。


「よし。アヤミには、これから毎日、訓練を通して力の加減ができるようになってもらう。その指南役をツキナ、お願いできるか?」


「はい。承知いたしました。それと同時に、魔蝕計画をフェーズ2に移行させます」


「ありがとう。では、頼んだぞ」


(え、フェーズ2……?)


 魔蝕計画はあれで終わりではなかったようです。

 何が何だか分かりませんが、とにかく二翼という人達に疑われないように、力の加減を覚えればいいのです。

 今はもう、それだけを考えましょう。


「あ、そうだ。魔蝕計画の続きの話も兼ねて、指南について話したいことがあるから、このあとで私の部屋に来てくれるかしら?」


「はい、分かりました!」


 力を調整できるようになれば、今日の一件を誤魔化すことで、もしかしたらクラスの皆さんとも仲良くできるかもしれません。

 まだ希望はあります。頑張りましょう。


 私達は、食事を再開しました。

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