コスプレサミット続続
演技の先発隊はブライトを除く連邦軍で、ちょっとした日常生活の様子を演技することになっていた。そんさんのナレーションに続いて僕らが舞台に上がって行く。その演技ではセイラさんが圧巻だった。またフラウ・ボゥさんやミライさん、アムロさんも学校の演劇部ですか、というような見事さだった。その中で僕はハロを操り要所々々でアクセントを加えた。少しは貢献できたと思う。
舞台の前には観客席が沢山並べられており、一般のお客さんで満席だった。その周囲にはコスプレイヤーさん達が多くいて、舞台をながめている人もいたけれど大体は歩いていたり写真撮影を受けたりしていた。
この寸劇が終わると僕らは退場し、次のシャアさんとララァの番になる、これも大好評という風に、それから順次そんさんのナレーションに沿って演技が披露されて行った。
そしてそろそろ終盤になり、ブライトとギレンがメインの場面になった。これはそんさんのナレーションに続いて、ギレンが身振り手振りを交えながら口パクで演説をしているところの傍らで、ブライトがその演説内容を説明しつつ批判的な演説をぶつというものだった。これは原作にはないけれど、最後の場面への導入に必要だということで急遽組み込まれた。その演説はそんなに長いものではなく、そしてブライトのコスプレイヤーたるお父ちゃんがこの演説をしっかり覚えている―――はずだった。
その場面の順番になると、そんさんのナレーションに促されブライトとギレンが舞台に上がり、ブライトが前方に、ギレンがそのちょっと後方に用意されていた演壇に立つ。特にギレンの存在感は圧倒的だった。そしてサービス精神の旺盛なお兄ちゃんが観客席に向かって大真面目に見得を切ると、お客さん達はおおーと声を上げ喜んだ。
で、ここからブライトが一言口上を述べ、続いてギレンの口パクの演説演技を背景に相手を批判するカウンター演説をぶつ、はずだった。ところがブライトの口上がない、というか数秒間の沈黙があった。その顔はというと、視線を少し斜め上に向けている。明らかに台詞を忘れた顔だ。ギレンも、どうしたという顔をしてブライトの方を目だけで見やる。ブライトはそこで、これも目だけで視線を落とし、それから再び目を大きく見開いて前方を見ると口元をへの字に曲げた。これはお父ちゃんが、まあしょうがないという時にする表情だ。僕はちょっと嫌な予感がした。そしてその予感は的中してしまった。ブライトがこう叫んだんだ。
「我々の正義の戦いは、今まさに佳境にある。そしてまた、どうやら敵の側でも同じことを考えているようだ。総帥であるギレン・ザビが演説をするらしい。一度彼らの言い分を聞いておいてやるのもいいだろう。さあ、その演説が始まるようだ。」
そう言ってブライトは演壇上のギレンを指さす。観客も一斉に、ギレンに視線を集める―――僕らチームは全員凍り付いた。
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