第10章 9
わたしは……何をするつもりだったんだろう。いつの間にか手から滑り落ちた短剣が、宵空の光を反射して鈍く輝いた。
自分が情けない。どうかしてる、こんなちっぽけな命を出し惜しむなんて。だけど、怖い。死にたくない。ここを出て皆に会いたい!
オグマの顔を触った。もう温もりを失いつつある。さっきまでのわたしと同じだ。
そうだ、オグマは「ここを出ろ」と言ってくれてた。でも、どうやって脱出する? わたしは魔術師じゃないのに。
考えて。夢を終わらせる方法を。
頬をつねる? やってみた。けど何にもならない。出口を探して走り回ってみる? オグマを置いて遠くには行きたくない。
わたしには羽も魔法の灯火もない。だから奇跡を起こすことはできない。暗い闇の中で、祈ることしかできない?
ただ側には宵空だけがある。わたしを元気づけるように輝いてくれている。人間みたいに意思を持った宝石。横たわるわたしの代わりに、どうやったんだかあの部屋を抜け出していったんだっけ。
待って。
頭の中で何かが灯った。
あの時も、わたしは暗闇の中にいた。だけど、上手いこと抜け出して、アマンドラまでたどり着くことが出来たんだ。
だけどあの時は__クレーがいた。ちょっとがっかりする。今ここに彼はいない。クレーは魔物だから、闇から逃げ出す方法を知っていたけど。
あの時、クレーと初めて会った時、わたしは何も知らなくて、見るもの全てが面白かったっけ。ランプを持って、クレーの美しい毛並みを照らした。クレーを繋ぐ鎖をほどいた後、クレーはわたしが持っていたランプを__ランプを壊した!




