第8章 2
暗闇の中にぽつんと佇む女性。火を入れたランプを右手にささげ持ち、まっすぐな姿勢が美しい。オグマは彼女と見つめ合い、あっと声を上げた。
「君は……!」
わたしとノールは顔を見合わせ、立ち上がった。
オグマが女性に入れと促す。明るい家の中に進み出た彼女の表情は硬い。
きれいな人だ。きりりとつり上がった瞳はヘーゼルナッツ色に輝いている。焦げ茶色の長い髪は邪魔にならぬようきっちりと編んで頭に巻き付けて、ほくろ一つ、しみ一つない滑らかな肌を惜しげもなく光の下にさらけ出して。
「ロザ」
オグマがそっと呼びかけた。「無事だったのか……本当に良かった」
ロザ?
ベガ家の長女だ。オグマは彼女が小刻みに震えているのを見て取ると、どこからともなく用意したショールを肩にかけてやった。ノールがそっとお茶を出す。
椅子に座ったロザとわたしの目が合った。その瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。
「ど、ど、ど……」
オグマが気遣わしげにロザを見た。ロザはわたしだけを見つめている。半開きになった口から、驚きがこぼれ出る。
「どうして……あなたが、ここにいるの……」
「え?」
わたしは間抜けに聞き返す。
「だって……あなたは、」
「なに?」
オグマが眉をひそめた。
「ロザ、ちょっと待て」
だけど彼女は止まらない。激しい勢いで立ち上がり、わたしの肩を掴んで揺すぶった。その拍子にショールが床に落ちたのを、わたしはぼんやりと眺めていた。
「あなたは……」
駄目だ。これ以上聞いちゃいけない。この先は危険だ。誰でもないわたし自身がわたしに警告してる。
ロザが唾を飲み込んだ。その小さな音さえはっきりと聞こえた。
「やめろ!」
オグマの制止が遠く聞こえた。
(だけど、知らなきゃ先には進めないよ)
知りたい。知りたくない。二つの気持ちがぶつかっている間に、ロザが声を発した。わたしの耳はそれを決してこぼさなかった。
「レイラ……わたしの妹。あなたは死んだはず。父さんを道連れにして!」




