第7章 驚愕
完全に二人の姿が見えなくなってから、オグマは刃物を降ろしわたしを解放した。
「あの人たち、どこに行ったのかしら」
「賢明にも逃亡したのか、あるいはガイールの元か」
「ねえ、さっきは本当に殺すつもりだった?」
「まさか。はったりだ」
オグマは仏頂面で言う。「いずれ彼とは戦わなければならんだろうがな、子どもたちは誰一人犠牲にしたくない」
「そう。……わたしの家に行く?」
「ああ」
もし誰か邪な魔術師がそこで待ち受けていたら。血で血を洗う悲惨な光景が繰り広げられるのかもしれない。
それでもいい。そんなことを思っている自分が嫌になる。だけど、家に帰ってはい、さよならとなるのは嫌だった。古井戸のように停滞した日常に戻りたくなかった。自分をきちんと扱ってくれる人たちと一緒にいたい。外を気のむくままに歩きたい。わくわくする冒険の中にいたい。
オグマは短剣を抜き身のまま握り、ぴったりとわたしの隣についている。最初に抱いた嫌悪感はなんだったのだろう。今では、ずっと前から知っている人のように信頼してる。
歩き慣れた小道、見慣れた風景、嗅ぎ慣れた匂い。わたしの家が見えてくる。こんな夜更けなのに明かりが灯っている。
「誰かいるわ。魔術師かもしれない」
わたしはオグマに囁く。「もう一度わたしを人質にとる?」
「君が許すならば」
「許してあげる」
恋人みたいに寄り添って、そのくせ緊張でこわばった表情で、わたしたちは家に向かって歩いた。
扉を叩くと、すぐに内側から開いた。その瞬間、わたしは絶句した。
家の中にいたのは、もう一人のわたしだった。




