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輝ける明けの明星  作者: 六福亭
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第6章 10

「話を戻そう。宵空を取り返すべく俺たちはある男の家に忍び込んだ……だが、予期せぬ大事故が起きた。何人もが命を落とし、家は瓦解した。その後、当時、隠れ家の跡地が散々捜索されたが、宵空の影も形もなかった。捕縛された悪党どもを尋問しても何の情報も得られない。だが、肝心の宵空を強奪する計略をたてた魔術師はどんなに探しても捕まえられず、この男が宵空を持って逃げた説が濃厚だった。」

 男はそのまま消息を絶っている。オグマはなぜか苦しそうに顔を歪めて言った。

「その事件があってからというもの、ルートの人通りはほぼ絶えていたそうだ。しかし最近、一人の男が頻繁に通路を使い出した。それも一月ほど前__ラバンと二人の娘が姿を消す前後からだ」

 怪しい。すっごく怪しい。だけどわたしにはまだ足りない情報がある。

「その事件はどこで起きたの? アマンドラじゃないの?」

 オグマは首を振った。

「オルバ村だ」

 信じられない。わたしは咄嗟に笑った。冗談だと思ったの。だけどオグマは笑っていなかった。

「オルバですって!」

 ありえない。そんな話、一度も聞いたことない。ああでも、村の大人たちが魔術師の伯父さんを嫌う理由が少し分かったかもしれない。昔村が悪い魔術師の溜まり場になっていたのなら、すごく怖い思いをしただろうから。

 それにしても……

「あのオルバに、今も悪い魔術師がいるっていうの?」

「君には酷な話かもしれないが」

「ううん、今は気にしない。誰? わたしの知っている人?」

 地図の番人がぼそりと呟いた。

「ガイール。そんな名前だ」

「冗談でしょう? わたしの伯父さんと同じ名前だわ」

「残念だが……」

「やめて、聞きたくない」

 ハルアが身を乗り出した。

「で? どうするつもりだ。そのガイールとやらをとっ捕まえて吐かせるのか?」

「それはまだ。十四年前の男と繋がりがある可能性は高いが、まだ断定はできない。それに俺には先にやることがある」

「何だよ」

 オグマはちらりとわたしを見た。

「弟子が性悪女どもに捕まっている。夜のうちに助けに行きたい」

 そうだ、リート君。忘れちゃいけなかった。魔物との子どもだってことを話すと、ハルアたちは俄然真剣になった。

「救出するのに爆竹でも貸してあげようか?」

「オレの牙はどうだ」

「いや……どちらも結構」

 ハルアたちは口をとがらせた。魔物って意外と好戦的。オグマが苦笑した。

「なるべく隠密に助けに行きたいんだよ」

「アマンドラ・ルートを通っていけばいい」

「馬鹿だなクレー、通路は見張られているんだぞ」

 わたしは、どうしても気になっていることを尋ねた。

「ねえ、「鳥の王国」って……何者なの?」

 オグマは苦笑した。

「あれは……地上で見たとおり、各地で悪事を働く悪党どもだよ。大昔に滅びた帝国の皇帝の末裔だと自称しているが、しかし……」

「あながち大法螺でもないかもね」

 ハルアが口を挟んだ。

「奴らの今の首領の顔を見たことがある。まだ子どもだが、かつての皇帝に瓜二つだよ」


 やいのやいのと言い合っている間に、魔物の子どもたちが食べ物を持ってきてくれた。蒸した芋や冷えた果物に香ばしく焼いた羊肉、砂糖と蜜を固めたお菓子なんかもあった。他の魔物たちもちょうど仕事を終えたのだという。狭いところで押し合いへし合いしながら食べる料理は、何だかどんな料理よりも美味しい気がする。思えばこんなにたくさんの人と一緒にご飯を食べるのも初めてだ。


 ここんところずっと、初めてのことばっかり。オルバを出たのも、一日中何の家仕事もしなかったのも、本物の魔法を見たのも__楽しいだなんて口に出したら、きっとオグマに怒られるわね。


だから、オグマに

「リートを取り戻したら、オルバ村に行こう」

 と言われた時、わたしは本当は寂しいのを押し殺してうなずいた。


 お腹いっぱいになってからしばらく談笑していたら、いつしかうとうとしてしまっていたらしい。魔物たちが一人、また一人と出て行くのを尻目に固い地面の上で丸まった。またオグマとハルアが真剣に話し合っている。なんの話? また、鳥の王国って聞こえた。だけど肝心の内容がうまく聞き取れない……



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