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輝ける明けの明星  作者: 六福亭
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第1章 3


 それにしても、ここはどこなのかしら。


 こんな部屋がありそうな家、昔ならいざ知らず、今のオルバにはない……はず。父さんが家を建てる大工だったから、わたしをよく仕事、つまりオルバに家を建てるところにつれてってくれたの。だからわかる。窓がない小部屋なんて普通は作らない。納戸は別だけど。(こんなに広い納戸なんて見たことない)それに、外の音が一切聞こえないのもヘンだ。村の一番大きな(村長さんの)家でもそんなに広くはない。ということは、ここはオルバの外かもしれない。……なかなか名推理じゃない? ま、その他一切のことは見当もつかないけど。


 父さんの話で思い出した。父さんはれっきとした村生まれ村育ち。三人兄弟妹の真ん中。上が伯父さんで、妹の方は……わたしは会ったことがない。じいちゃんばあちゃんもいない。これは母さんも同じだ。親を早くに亡くした母さんは、街の金持ちの家で小さい時から働いてたんだって。その時の話を何度か聞いたことある。とっても変な主人だったんだって。子どもは成人するまで家から一歩も出ないとか、おつかいから帰ってきたら懐を徹底的に調べられるとか、魔法使いだって噂もしょっちゅうたってたらしい。よく無事に辞めることができたものよね。


 母さんと父さんが知り合ったのは、その金持ち宅の修理の時。「のっぴきならない」事情で派手にぶち壊れた家の壁を直すために父さん一人が呼ばれた。ずいぶん無茶な話だけど、そのおかげで母さんが父さんを手伝うことになり、そして愛が生まれたの。ふふふ。


 母さんは結婚してお暇をもらった。働いていた間のことは決して口外しないように主人かに約束させられた(でも、今思えば、わたしたちの前で破ってたわね)。そうして幸せな若夫婦の間にわたしが生まれた。


 父さんはとっても働き者だった。大工の腕だって村で一番だったんだから。お金が貯まったら自分で家を建ててくれる約束だった。


 いけない。また悲しくなってしまう。あんまり考えないようにしてたのに、することがないと思い出したくないことばかり浮かんでくるのね。


 そうだ、馬鹿馬鹿しいけど、さっきみた夢のことでも考えよう。これがね、同じような夢を何度も繰り返し見てるの。だから、ちょっと頑張ればけっこうはっきり思い出せるはず。


 待って! 愛想つかさないで。くだらない話なのは百も承知。それでも、夢の中ではすごく真剣に立ち回ってたの。話題が尽きるまではつきあってほしい。まだ粘れるはず。


 夢の種類はだいたい三つ。いつも出てくるのは同じ人。夢の中ではわたし、自分が誰でどんな役割なのか、不思議と分かってた。時々村にやってくる人形芝居みたいに。


 一つ目の夢では、わたしは幸せな家族の一員だった。父親と母親がいて、娘がわたし。でも、本当の父さん母さんじゃない。なぜか伯父さんにすごくそっくりな「父親」と、みたことない美人な「母親」だった。いや本当に知らない人なんだけど、すごくきれいだった。長い長い黒髪がたっぷりと背中に流れてて、目ははっとするくらい透き通った琥珀色で。そんな人がわたしを娘と呼んでた。夢ってほんとに都合が良いものね。


 当然、わたしもそんな方々のご自慢の娘になってたんだと思う。わたしたちは三人でご飯を食べた。テーブルの上にはランプが輝いていた。


 二つ目。一転して、わくわくする活劇だった。前の夢の父さん(伯父さんにやっぱり似てる)が敵と一騎打ちしていた。わたしは後ろで応援している。どちらも見たことない武器を使っていた。ぶつかりあうたびに火花が激しく飛び散って少しはわたしにも降りかかってきて、でもあんまり熱くはない。怖いけど楽しかった。


 どうして戦っているのかは分からないけど、相手がとんでもなく悪い奴なのはなぜかわたしも承知してた。そいつを倒さなければわたしと父さんが死んでしまうんだって覚悟で父親は戦ってた。最初は少し劣勢だったけど、声を張り上げて応援しているとだんだん押していって、いつも最後には父親が勝った。敵の顔には見覚えがない。金茶色の短髪の若い男だ。ひどく悪人面に思えた。現実でも会ったら多分一発でわかる。もう何度もその顔を見て、飽き飽きしてるくらいだもの。


 夢はいつも、父親が勝ったところでおしまい。その先は知らない。武器を取り落とし丸腰になった敵が膝をつき、命乞いをするところまで。そこでわたしはほっと安心して、次の夢に移るのだ。


 で、最後の夢。わたしと父親が手をつないで母親を迎えに行く。三人が一緒になったらもう二度と離れることはない……そうわたしは分かっている。そして、平和な日常が始まる。これにはいくつものパターンがあった。お茶を飲んでたり、三人で旅に出たり、いちご摘みに出かけたり……ほんとうにいろいろ。この夢には、何か意味があるのかしら? 


 正夢だったら嬉しい。けど、そんなことはありえない。父さんと母さんはもういないもの。わたしの願い……親子で暮らしたい、それでなくとも誰かと食卓を囲みたいっていう願いが形になってるのかもしれない。 


 だとしたらこの夢は「未来」では決してないはず。きっと見れば見るほど後でつらくなる類いのもの。母さんたちが実は死んでなかった! なんて夢は今までに何回も見た。けどこの一連の夢は最近になって初めて見るようになった。



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