第6章 夢を見るまでは
わたしが完全に泣き止んだと見るや、オグマは広間の捜索に取りかかった。
「精霊のいた跡が残っている」
「え、どこ?」
オグマが指差した辺りの床に目を凝らす。様々な色の細やかな光が見えた。
「きれい……」
それからはたと気がついた。
「こんなことしてる場合じゃないわ。一刻も早くリート君を……」
「落ち着け。今できることはない」
「でも! あの人たち、リート君にひどいことをするわ」
さっきは失敗しても、逃げた先で成功してしまうかもしれないではないか。
「大丈夫。何故失敗したのだと思う? ああいうろくでもない魔法にかからぬよう、俺がリートに魔法を施した。リートを狙う奴はいくらでもいるんでな」
「それは、リート君が魔物だから?」
オグマの顔がこわばった。その瞬間、失敗したことを悟った。理由はどうあれ、わたしに知られたくはなかったんだろうから。だけど、一度言ったことは取り消せない。
「あの母子から聞いたんだな?」
「……ええ」
「そうかい。まあ、隠し通すのは難しいだろうと思っていた。確かにあの子は魔物と人間の子どもだ。随分小さい頃からひどい目にあってきた。ろくでもない連中が生贄にしようとリートを火で炙りかけたこともあった。そのせいであの子は火をすごく怖がる」
「質問してもいい?」
「するのは自由だ。必ず答えるとは限らないが」
わたしは「どうしてリートを連れてるの」と聞こうとした。だけどその直前に喉がきゅっと締まって、最終的には「魔物ってどんな人たちなの」となった。
「君は、魔物のことをどう思っている?」
わたしは首を横に振る。
「何も知らないもの。だからどう考えていいか分かんないの」
「それは仕方がないさ」
「大体、知らないことが多すぎるわ。魔物って何、魔法って何? 訳分からないことばっかり」
オグマは黙り込んでしまった。
「ねえ、わたしはリート君を助けたいと思ってる。でも、何も知らないから、今のわたしじゃ何もできない」
「何もしなくてもいいんだがね」
「そんなの嫌」
口調がついきつくなってしまう。
「田舎っぺの小娘だって見くびられるのは嫌いだわ。思い通りに動くお人形さん扱いも」
オグマは、灰色の瞳を瞠った。
今までで一番間抜け面だ。ぽかんとだらしなく口を開けて、二の句も継げないでいる。恥ずかしさの中にちょっぴり誇らしさが混ぜってわたしの中に溜まっていく。__オグマさんを言い負かした!
やがて彼はうなずいた。
「分かった。出来るだけ説明しよう」
よし、勝った。
「君に知ってもらいたいことは幾つもある。まずは魔法の……」
「待って。リート君を助け出すのは?」
オグマは絞り出すようにゆっくりと答えた。
「あいつはしばらく放っておく」
「どうして!」
すごく心配してるんじゃなかったの?
「もう一度眠る時間が来るまではあいつにも我慢して人質になっていてもらう。それまでに動くのは得策ではない」
「それでいいの?」
よくない証拠に、オグマは眉根に皺を寄せた厳しい表情を崩さない。




