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第3章 8
しんと静まりかえった町をつつがなく通り抜け、辿り着いたのは大きな館だった。オグマが躊躇いなく扉を開けるのには驚いた。
「そこ、オグマさんのお家なの?」
「いいや。知り合い……友人の家だ」
たしかにそうだ。
「家の人に怒られないかしら。こんな時間に……」
「今ここには誰もいない」
「泥棒でもするんですか?」これはリート。
「違う!」
やけに強く打ち消し、オグマは中に入れと促した。明かりをつけてさらに驚く。ありとあらゆる家の中の物が床に散乱している。まともに定位置に収まっている物は一つもない。
「師匠……これ、どうしたんでしょう?」
「気にするな」
「そんなの無理だわ」
わたしの抗議を無視し、オグマはどこからともなく寝具を取り出す。
「明日……いや、今日か? 一眠りした後に話してやろう」
「今知りたいです」
「勘弁してくれ。眠いんだ」
これ以上口を割る気はなさそう。仕方なくわたしたちも横になる。なんだか強烈な、だけど懐かしいような匂いがした。




