表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝ける明けの明星  作者: 六福亭
16/66

第3章 7

 食事の後、寝具の中で。熱さと悪夢で目が覚めた。窓からわずかに射し込む星明かりでうすぼんやりと他の二人の寝姿が見える。


 喉が猛烈に渇いている。夢の中で声が枯れるまで叫んでいたせいかしら。嫌な夢だった。それなのに、ちっとも内容を思い出せない。誰かがものすごく怒っていたことだけは確か。


 頭が重い。汗で全身がべたべただ。このままだと寝直すこともできやしない。夜風にでもあたればましになるかしら。わたしは、二人を起こさぬようそっと部屋を出た。明かりがなくても階段を降りることくらい簡単だった。大抵の人間は、長く続く夜に動く。


 裏口から出ると涼しい風が迎えてくれた。腕を伸ばし思いっきり深呼吸した。

「……変な一日だったな」

 もう十年分くらいの冒険をした気がする。勿論、怖かった。だけどやっぱり__たまらなくわくわくしてる。朝になってオルバに帰れば何もかも終わってしまうのが少し悲しい。

 空を見上げる。満天の星空__さっきまではそうだったのに、いつのまにか雲が出て星たちを隠していた。

「どうりで、暗くなったと……」

 目線を空から下ろし、わたしはやっと異変に気がついた。


 目の前の暗がりに、誰かいる!


 聞こえるの。息づかい、足を踏みかえる苛々した音。


 そいつはあっという間にわたしの鼻先に顔を突き出した。影にふくらみができたような真っ黒な人間だ。細い手を伸ばしわたしの髪に触れる。ぬるりと髪が湿っていく気配がした。うわあ。ぞぞっと鳥肌が立つ、なのに体が動かない。そいつが次はわたしの腕を掴む。その手は冷たくぬめっていた。

その時、裏口が勢いよく開かれた。肩を後ろから荒っぽく掴まれ、背中から倒れかける。だけどそのおかげで黒い手から離れることができた!


 地面にぶつかる前に支えてくれた人がいた。振り向くと、オグマだ。険しい顔で黒い化け物を睨みながら、わたしに囁いた。

「怪我は?」

 首を振った。オグマはうなずき、わたしを建物の中に押し込んで扉を閉める。わたしは扉の前でうずくまった。全身の震えが止まらない。掴まれた腕や髪はまだ濡れていた。

 しばらく経って、オグマが扉を開けた。

「あ……あいつは?」

「もういない。安心しなさい」

 よかった。安堵で力が抜ける。オグマが手を差し出した。

「立てるか?」

 だけど、その手を取る気にはまだなれなかった。

「あいつは……何だったの?」

「怪物だ」

 リートの言っていたことを思い出す。まさか本当だったなんて。

「ところで、どうして外にいた?」

「……」

「逃げるつもりだったのかね?」

 わたしは顔を膝にうずめた。オグマの顔を見られなかった。

「違うの。ただ嫌な夢を見て……気持ち悪かったから」

「気持ちは分かるが、軽率だったな」

「だって、怪物が来るなんて……」

「リートから忠告されなかったのか?」

 聞いてた。だけど、信じなかった。


 涙が溢れ出る。何とか顔は隠しているけど、鼻をすする音で気づかれているだろう。


 聞こえてきたオグマの声は意外にも優しかった。

「よほど怖かったんだな。夜中だがここを出よう。安全な場所を少なくとも一つは知っている」

「外に出るの? まだヘンなのが沢山いるんじゃ……」

「まさか。皆何のために外に明かりを灯していると思う? ああいった怪物を近寄らせないためだ。だから普通こんな街中まで入ってはこない」

 それからオグマは険しい表情で続けた。

「誰かが意図的に怪物を招いたんだ。君か俺たちを狙って」

 リートを起こしに行く間、わたしはその言葉の意味を考えていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ