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生徒会長の秘密を知ったら専属メイドになってくれました  作者: すずと


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第111話 物を美しくさせるチートのメイド

 振替休日。レアな平日休み。


 家の中に閉じこもって有希と、イチャイチャ過ごすのも魅力的。

 

 でも、せっかくレアな休みなので出かけよう。


 ということで、足を伸ばし、繁華街に行くこととなった。


 電車を利用する日ってのは平日の放課後や休日が多い。

 そのため、親子連れやら、カップルやらが大量に乗っているのを見かけるのだけど、今日はその限りではない。


 いつもは座れない座席にも余裕で座れるし、1車両に乗っている乗客が少ない。年配の方や、スーツを着た人の姿が数名見えるだけだ。俺達と同世代は1人もいない。


 今頃、俺達と同世代の連中は学校で勉学に励んでいるのだろうと思うと、ちょっと優越感であった。


 ゆらゆらと電車に揺られること数十分。目的地の繁華街へとやってくる。


 流石は繁華街だけあって、平日でも人の数は多い。それでも休日と比べると劣る。やはり平日休みというのは人が少ないので良いなと思いながら繁華街を歩く。


「ふふ」


 隣を歩く有希が、突然楽しそうに微笑んだ。


 今日の彼女は、ロングコートにマフラーを付けたシンプルなファッション。

 歩くたびに、ふわりと広がるスカートが、どこかプリンセスを思わせる。

 いや、そこらのフィクションプリンセスよりもプリンセスしてるんだよな。この子。


「どうかした?」


 彼女の微笑みに小首を傾げると微笑んだまま答えてくれる。


「いえ、恋人になって初めてのデートだと思いまして」

「……おっふ」


 いきなりぶっ込んでくるから、猛烈に照れてしまった。


 意識してなかったわけじゃないけど、今日は記念すべき、恋人になって初デート。


「今、照れましたねー」

「そういう有希こそ、ちょっと顔が赤いぞ」

「そりゃ、初デートですからね。照れもします」


 初期の頃の、ツンツンはどこへやら。すっかり丸く、素直になったもんだ。


「エスコート。期待してますね」

「うっ……。失敗できないな……」


 困惑の声を出すと、「冗談ですよ」と優しく言いながら手を握ってくれる。


「あなたとならどこでも楽しいから、どこへだって付いて行きます」


 ニコッと笑ってからトドメをさしてくる。


「あなたの行きたい場所が、私の行きたい場所ですので」

「本当、家でも外でも俺を甘えさせて。ダメになっちまうよ?」

「既にダメなご主人様ですので大丈夫です」

「返す言葉もありません」


 そんな言い合いをしながら、手を繋いで繁華街を歩く。







「あ」


 雑談をしながら繁華街を歩いていると、有希が声を漏らした。


 彼女の視線の先には、地元にもあるチェーンのスポーツ用品店。だが、その大きさは異常である。流石は日本有数の繁華街。チェーン店でも規模が違う。


「そういえば晃くん。今朝、学校のジャージで走ってましたよね」

「うん。練習技は実家に置いてきたからな」


 答えると、小さく手を合わせて提案してくれる。


「でしたら丁度良いですね。せっかくですので買って行きましょう」


 その提案は嬉しいのだけど、少し忍びない気持ちになる。


「良いの? せっかくのデートなのに俺の買い物に付き合わせて」

「なにを言っているのですか。晃くんの買い物に付き合うのも立派なデートです」


 それに、と付け加える。


「言ったでしょ? 私も晃くんの練習に付き合うって。お揃いのトレーニングウェアを買いましょ」

「お揃いのトレーニングウェアって存在すんの?」







「あるわ。お揃いのウェア」


 店内に流れるラジオのDJが、『今週のヒットチャート』なんて良い声を発しているのと同時に放ってしまう俺の言葉。


 トレーニングウェアのエリアにマネキンが2体並んであり、双子コーデみたいに白のトレーニングウェアをサンプルとして着ている。


 有希は女性のマネキンが着ているトレーニングウェアを触って、「おお」と声を出していた。


「これ、良いですね。これにしましょうよ」

「お主。ウェアの良し悪しがわかるのか?」

「わかぬ」

「どっち!?」

「こういうのは見た目で十分です」


 はっはーん。さてはこいつ、適当に選んだな。


 ま、学校のジャージよりはマシだろ。


 俺はサンプルのジャージを大量に並んであるウェアゾーンから探す作業に入る。


 こういうのって似たような物が多いから、サンプルと同じものを探すのに時間がかかるよね。


 ガサゴソとジャージを探していると、「げっ」と今まで聞いたことない有希の低い声が聞こえてきた。


「どったの?」


 有希はマネキンの着ているサンプルジャージの値札を見て、目を丸めているようだ。


「こ、ここ、こんなに高いのですか?」

「んぁ?」


 値札を見せられてその金額を見てみる。


 確かに、高校生の俺達からすると、値段だけを見た場合、高いと思ってしまうが、ウェアの標準価格だと思う。


「有名スポーツブランドだし、こんなもんだろ」

「そうなのですか……。うむむ……」


 いきなり真剣に悩み出す有希に尋ねてみる。


「意外だな。着るものには惜しみなく金を使うと思ってたけど」

「そんなことありませんよ」

「え?」


 彼女の言葉に耳を疑う。


 俺は今来ている服を指差して尋ねた。


「それとか、どっかのハイブランドでは?」

「まさか。違いますよ。これ、全部激安ファッションです」

「激安……だと……?」


 今来ている服がハイブランドじゃない……? これが激安……? なんなんだこの子。


 有希という素材が良すぎて、服がハイブランドにジョブチェンジしてるってのか。


 恐れ多い。恐れ多いよ、有希ちゃん。最早、美の女神だよ。物を全て美しくさせるチートの持ち主だよ。


「あ、すみません。晃くんとのデートに安いファッションをしてしまい……。失礼でしたね。しかし私は、安い服しか持っておりません。ハイブランドは、もう着たくありませんので……」


 ちょっと寂しげに言い放つ彼女の言葉は家庭の事情だろう。有希はお嬢様だ。もしかしたら無理矢理に着せられたのかもしれない。


「どんな格好でも俺の大好きな有希には変わりないよ。自分の好きな服を着て、隣に立ってくれたら俺は嬉しい」


 今は、こんな安っぽい言葉しか言えない。


「ありがとうございます」


 彼女の礼で、この話題にピリオドを打ち、ウェアを買うかどうかの相談が始まった。

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