第106話 露天風呂はイチャつくところ
露天風呂に現れたのは、生まれたままの姿の妖精女王。
冬の澄んだ月明かりの下、ダイヤモンドの様に輝く銀髪の後ろを結い上げている。
神様の最高傑作と言わんとする、整った顔立ちを恥じらいの火照りで赤く染め、年不相応な色気を醸し出している。
しかし、俺という男は本当に単純な男である。
愛らしくも色気のある顔立ちより、俺の視線は彼女の身体の方へと向かってしまう。
大きく実った柔らかそうで張りのある二つの山。その頂にあるピンクの山頂は、まだまだ成長期を表すように上向きに立っていた。
メロンなんかじゃない……。スイカ、か……?
そのまま視線を下ろしていくと、可愛らしいおへそに、抱きしめると折れてしまうかと思ってしまいそうになる、くびれがある。
更に下を向ければ、そこには小さなジャングル──。
ダッ!!
二次元の世界から飛び出して来たかのような、神作画の妖精女王は回れ右をして露天風呂から出て行った。
一瞬、なにが起こったのかわからなかった。
だけど、ほんの少しだけ冷静になった時、有希が男湯と女湯を間違えたのだとわかった。
同時に、ちょっと冷静になったからこそ、彼女の裸を思い出して呼吸が乱れる。
あんなもん、高校生には刺激が強すぎるだろ。
あれが俺の彼女? まじで? 本当に彼女なの? いや、俺の専属メイドでもあるのか。ん? 専属メイドで彼女だな。は? え? 俺と有希って恋人だよな。
頭の中は大パニック状態となってしまうと同時に、思春期男子の性欲というのはどんな場面でも働くのだと実感する。
だって、もうね、今までにないくらい息子が成長してる。湯船の抵抗もなんのその。人生で最高の目の保養、脳のリラクゼーション、股間の覚醒が行われている。
有希を思い出せば出すほど、覚醒は強くなっていく。
スタスタ。
頭の中で9割5分2厘エロいことを考えていると、凛と視線を正して露天風呂を歩いてくる妖精女王の姿があった。
先程の恥じらいとは打って変わり、ランウェイを歩くトップモデルよろしく、裸という芸術を見せつけるように湯船へとやって来る。
右足から湯船に浸かると、湯の波紋がこちらまで届いた。彼女から作られた波紋を受けると、なんだかやたら神秘的感情が芽生えてしまう。
呼吸をするのと同じくらい、さも当然のように隣へ腰掛けると、妖精の羽を休めるみたいに、「うーん……」と伸びをした。
「良い湯加減ですね」
腕を伸ばして、右手て左腕を軽く洗うような仕草を見せつけられてしまう。
「……有希さんやぃ」
「なんです?」
本当にさっき、俺と目が合った時に恥じらって逃げ出した女の子と同じなのか疑うレベルで平然と聞き返してくる。
「ここ、男湯だよな?」
「はい。先程、のれんを確認しに行きましたが、間違えなく男湯でした」
「なんで!?」
露天風呂に俺の声が轟く。
「なんで確認したのに、さも当然のように男湯に入って来てんだよ!?」
「それは、私があなたの恋人兼専属メイドだからです。こんなに美しく、儚く、愛らしい彼女と混浴が不服です?」
「いいえ! 私はとても嬉しいです!!」
習いたての英語の翻訳みたいなセリフを放った後に、付け加える。
「でも! でもよ! この奇行の真実には辿り着いてないんよ! いや、本当に嬉しい限りで、語彙力を失いそうになるほどのご褒美なんだけどね! でも、こっちはもうパニックもんよ!? なんでこんなことになった!?」
「晃くんとのお風呂のことを考えてたらこうなりましたっ!!」
響き渡る彼女の言葉夜空にこだました。
有希は観念したように、駄々っ子みたいな声で真実を語ってくれる。
「あ、明日、晃くんとお風呂の約束しましたので……。それで、晃くんとどんな風に洗いっこしようか考えていたら、ボーッとしてたので、のれんの男湯と女湯の案内を見ずに入ってしまいました……」
「え、有希ってむっつりなの?」
「なっ……!?」
のぼせてしまいそうになるくらい顔を真っ赤にした後に、可愛らしく睨みつけてくる。
「むっつりなんかではありません!!」
「でも、明日の俺との風呂のことを考えてたんだろ?」
「そ、それは……」
「俺の恋人兼専属メイドはむっつりだったか……。すげー萌えるぜ」
煽るように言ってのける。じゃないと俺の理性が持たない。ちょっとでも油断したらもう我を忘れそうだ。
「むぅ……」
拗ねた顔を見せて、ぶくぶくと湯船に潜っていく。相当恥ずかしかったのだろう。それは俺も同じなんだけど。
「えいっ!」
ザバァと勢い良く出てくると、俺にしがみついてくる。
「おj;whcblcwlんlnl Ka!?」
声にならない声を発してしまう。
有希の柔肌が、きめ細かい身体の感触が。メロンだが、スイカだがの──。
ええいまどろっこしい!!
おっぱいが!! 有希の大きな生のおっぱいが俺の腕にダイレクトに当たってりゅ!!
もうFカップはある! 絶対それくらいの大きさのおっぱいの感触を腕に感じる!
あかん……。のぼせてきた。谷間に腕が挟まって、もう、気持ちが良い。
「ど、どうです!? むっつりな女の子はこんなことしません!」
「あ、ああ。うん。でも、これはちょっと……。刺激が……」
「嫌味なことを言ってくる晃くんには罰です」
罰と書いてご褒美と読むくらいにご褒美なんだけど……。
「今日、晃くんは私の身体を触ったらダメです。私は触りますけどね」
あ、これ、あれだ。生殺しってやつだ。
「ふふふ。好きな人の身体に触れないなんて、可哀想なご主人様ですね。でも、純粋なメイドをからかうからこんなことになるんです」
言いながら有希は俺の身体を触ってくる。
指で優しくなぞるような仕草は、この状況と相まって、ゾクゾクしてしまう。
「晃くんって筋肉凄いですね」
感心したような声を出されてしまう。
「中学の時に比べたら贅肉が増えたけど……」
「中学生の頃はこれよりも? 中学生の晃くん見てみたかったですね」
「筋肉フェチ? スケベなメイドさんなこって」
「むむむ。まだまだ余裕がありそうですね」
有希はちょっと怒ったように、更に身体を密着させてくる。腕から心臓の鼓動を感じ取れるけど、それが俺のものか、有希のものかは定かではない。
こっちはもう余裕がなくなってきた。
「ゆ、有希ちゃん!」
「ちゃん付けで呼ばれるのもアリよりのアリですね」
呑気に呼び方を喜んでいらっしゃる。
「これ以上やられたら理性が……」
「ダァメ♡」
もの凄く甘い声を出して顔を近づけてくる。
「メイドをからかったご主人様への罰です。我慢してください♡」
「大好きな人にこんなことされたら……俺、もう……」
「しょうがないですねー」
瞬間、有希はキスをしてくれた。
「ちゅーならいくらでもしてあげます♡」
「有希……」
「もう1回ちゃん付けで呼んでみてください」
「有希ちゃん♡」
「えへへ♡ なんです? 晃くん」
「大好き」
瞬間、有希は激しいキスをしてくれた。
こいびとをあわらすきすにもうおれのあたまはとろけてしまったよ。
「私も大好きですよ。晃くん♡」




