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教会 一般開放 1

少し間が空いてしまいました。お久しぶりです。

実は「第11回ネット小説大賞」に応募していました。落選してしまったのですが、1次選考だけ通過してました。ちょっと嬉しいです。

この話は、まだまだ続くので、気長にお付き合い下さると嬉しいです。


 この日の朝は少し違っていた。

 前日、ガイエス様の邸宅でゆっくりとさせて頂いたので、いつもの時間にきちんと起きる事も出来た。

 けれど、それだけでは無かった。


 いつも通りに早朝の掃除へアキと向かったのだけど、いつもはシスターエメニしか居ない筈の教会に、5人のシスターが、既に居て掃除を始めていたのだ。

 驚いてアキを見ると、アキが小さな声で言った。


「司祭様が、解禁したからね。これからは一般のシスターと一緒に仕事をする事になるんだよ」


 私は、少し緊張しつつも、シスターエメニの前へ行き、朝の挨拶をした。


「おはようございます」

「おはようございます。エリン」


 どうやら緊張していたのは私だけでは無く、他のシスター達もだったようで、私達の挨拶を聞いて、ちらちらとこちらを伺い見ている。


「見ての通り、本日より他のシスター達と一緒に仕事をする事に成ります。ですが、私語は厳禁です。ご奉仕をする為に来ているのですからね。やる事は同じです。」

「はい。畏まりました」


 私は、シスターの挨拶をし、いつも通りシスターエメニが指定した場所を丹念に掃除した。1時間はあっと言う間で、私の周りには誰も寄っては来なかった。

 私は仕事を終えたのだけれど、先に来ていたシスター達はまだまだ仕事を続けていた。私は仕事を終わっていいものかと悩み、シスターエメニを見た。


「エリン。司祭様の指示で、他のシスターと一緒に仕事をする事には成りましたが、食事はまだ自室で取って貰います」

「はい」

「では、帰ってよろしい」

「あ・・・あの」

 

 まだ他のシスター達が働いているのを見て私が戸惑っていると、シスターエメニが続けた。


「貴方の奉仕と他のシスター達の奉仕は別物です。貴方は決められた時間を守りなさい」

「・・・畏まりました」


 ここで生活するものと、罪を償うものでは働き方が違うという事なのだろうと納得するしかない。私は、一礼をするとアキと一緒に部屋へ戻る事にした。

 いつのなら、途中でアキが食事を取りに別れるのだけれど、道々、今までどこに隠れていたのだろうと思う程のシスターが、掃除に走り回っている。ちらちらこちらを見ているのも感じた。


「これからは、エリンを部屋まで送り届けてから食事を取って来ないといけないから二度手間だぁ」


 後ろからぼやくアキの声がして、くすくすと笑ってしまった。

 部屋へ戻ると、私はいそいそと鳥のエサ入れも用意する。奉仕へ行く前に窓は開けて行ったのだけれど、青い小鳥は来ていなかった。

 程なくしてアキが食事を持って来てくれた。毎回あまり変わり映えのしない食事だが、小食の私には問題ない量だった。

 私は、鳥のエサ入れにパンと果物と葉物野菜を少し取り分ける。いつ来てもいい様に、これはそのまま夕方の掃除までは部屋に置いておく。



 朝食を取りながら、私はぼんやりと思いを巡らせた。

 オルケイア国に来てから、目まぐるしい毎日だった。どちらかと言うと付いて行くのがやっとだった。

 出来れば、魔法が使える様になりました・・・なんて言って、魔法を生業にしたいと思っていたのだけれど、教会で魔力も加護も無いとはっきり出てしまった以上、別の生業を探さないといけなくなった。

 貴族として生きていく方法しか知らない私に出来る事は、とても限られていた。


 しかも、前世の記憶では、この異質な能力を気取られない為に、街を転々として生きて行かなければいけない運命だと言うのだ。

 事実、上手く隠せていない。バレているのはガイ様と多分、キハラ様だけだと思う。お二人とも私の味方に成ってくれそうな方々なので、幸いだった。とは言え、ここの国へ来て1か月余りで、2名にバレてしまっているのは、とても良い事とは言えない。これからは気を引き締めなくては!


 それにしても、私の前世の記憶では、誰でもポーションを作れるみたいだったのに、この世界では、ポーションが作れるのは聖女様だけだったのね。それなら、作っても売れないって事ね。転売していると思われたら事だもの。

 そうなると、やっぱり粉薬を造るのが良さそう。作り方は分からないけれど、前世の記憶に有る錠剤がつくれるなら尚良さそうね。けれど、問題は効能。ガイ様が仰った話では、治癒速度が速すぎて、激痛を伴ってしまうみたい。成分に睡眠薬を入れるべきか、それとも、睡眠薬とセットで販売する?

 購入した方が、きちんと用法を守ってくれなければ、これまた大事に成ってしまいそう。


 あの時、瓶をそのまま渡してしまったから、量も考えずに飲んでいたわ。量をきちんと調節したら、あそこまで酷い状態には成らないのかも知れない。その為には、実験が必要だわ・・・・。


 ガイ様にお願いしたら、自分で人体実験を繰り返しそうで怖いわ。けれど、キハラ様にお願いするのも、考え物ね。通常の薬草を調合しただけでは、あの薬は作れない。聖女の祈りが練り込まれているから、劇的な治療薬に成ってしまったのだもの。難題が山盛りだわ。


 取り合えず、キハラ様と作る薬は、手元の薬草だけで作って効能を見て貰いましょう。聖女の祈りを入れなければ、普通の薬だし、他の人達が使わない薬草を混ぜて効能を高めれば、独自の薬として売れるかも知れない。


 最後の一口をパクリと食べて、窓の外を眺める。残念ながら、青い小鳥は来てくれなかった。そろそろ、仕事の時間に成ってしまう。私が居ない間に食べに来たりもするので、窓は閉めないつもりだけれど・・・。


「一緒に朝ごはんを食べたかったわ」


 昨日は、ガイエス様もそうだけれども、ムルダ様や執事さん、メイドや侍女や使用人の方々が、皆私と普通に話をしてくれて、楽しかった。それだけに、この一人きりの空間は少し寂しく感じてしまう。


 ウイスタル国に居た時だって、そんなに人との交流が有った訳では無いのに、オルケイア国に来て、私はとても甘やかされている気がする。けれど、きっとそれは18歳までの事。独り立ち出来る様になったら、皆様とはお別れする事になる。だからこそ、今この時を大切にしよう。一人に成った時、私の大切な思い出となるように。

 

 私は、プレートを持って、仕事をする為に、部屋の扉を開いた。

 

 


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