表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

第8話

投稿が遅れてしまいました……。

 人ごみをかき分けて、私達は貼り紙の前から離れる。そこまで苦労せずに抜けられた。そこで気づいてしまった。


 平民は何故か私たちに道を譲ってくれていた。もしかしたら先程の話が聞こえていたのかもしれない。

 辺りを見回す。私達を見つめる眼差しは、嫉妬よりも羨望や憧れの方が強い。もしかして……



 「……私って人気者?」


 『それはない』



 少しの期待もすぐに潰された。何も2人同時に言わなくてもいいじゃないか。ふくれっつらをしても肩をすくめられるだけ。



「ひどくない! 希望くらい持たせても……」


「ダメです」


「調子に乗るからねー」



 言い終わらないうちに否定された。ぐぬぬ、私は別に調子に乗らないよー! ……すこーし自分カッコいいなーと思うだけで。


 というより、何故か2

二人の息が段々あってきた気がする。これは近い将来私の敵になりそうだ。

 近い未来を見据えて、キリッと顔を引き締める。するとやっぱり二人で呆れた顔をされた。酷くない!?



 「あっここがクラスだよー」



 いつの間にかクラスに着いていたらしい。

 ソーニャの指の先を目で辿ると、[A] と書かれた木の板がぶら下がっていた。

 

 流石国立の学園といったところだろうか。廊下は横に両手を広げても三人は通れそうなくらい広い。

 壁にはアンティークな金色のランプが掛けられていて、大理石の床を照らしている。何より窓が大きいので余計に広く見える。レステリア国第二の城と呼ばれているのも頷けた。


 見惚れながら足を進めて教室へと入る。意外とドアは小さく、スライド式なのだが二メートルも無い。

 私とソーニャは普通に、アルガスは少し屈んで入った。うー、ドアに屈んで入るのは私の幼い頃からの夢の1つなのに。

 

 恨みがこもった目でもあげてたら、あたかも今気づいたように私の前で屈んで身長を合わせてきた。へ?



 「大丈夫ですよ。平均身長より低くても気にしなくていいです。成長期になったら姫でも伸びますよ。……私とは違いますし」


「うるっさいな! 姫でもってなによ!」



 にこやかに慰めてきたようだが私は沸騰寸前だ。ゆるさない、絶対に私で遊んでる。現に私が起こる様子を見てクスクス笑ってる。あっソーニャも笑ったな!


 うるさくしながらも教室に足を踏み入れた。その瞬間、今までザワザワとうるさかったのが、ヒソヒソと静かに囁いている。まるで私達を噂しているような。

 

 希望や憧れではない、侮蔑や嫌悪が混じっている。


 やはり貴族はこんなもんだ。人の価値を権力で値踏みするよう見定めて。


 真面目に聞くだけ時間の無駄だ。早く席に座ろうとアルガスの袖を掴む。顔を上げて瞬いた。

 彼の顔は黒く歪んでいた。折角の綺麗な顔が台無しになるほどに。

 え!? ど、どうした……



 「こいつら……やってしまうか」


 「えっ!?」



 危ない言葉が聞こえた気がする。さっきからアルガスの呟きには物騒な言葉しか聞こえない。

 私は貴族が何を話しているのかまでは聞き取れなかったので、耳が良いのかもしれない。


 そういえばソーニャもこういう時の反応が……。思い出すだけで悪寒がする。おそるおそる見上げると、アルガスとは正反対に綺麗な笑みをつくっていた。いや、怖いよ!?

 震えている私に気づかず、声をかけてきた。



 「ねぇ、フェリアー」


 「う、うん?」


 

 何をするのかと身構えたが声色は穏やかだった。なーんだ心配して損した。



 「多分こいつらはフェリアのこと知らないんだねー。ただ平民って事で差別してるねー」


 「えっ、私のこと知らないの?」



 色んな意味で有名だと思っていたが知らない人がいるとは。世界は広いなぁ。

 感傷に浸ってるとソーニャが人差し指を口に当てた。



 「こういう奴らにはー格上の力を見せつければいいんだよー」



 そう言う彼女は魅力的で、大層悪どい笑みを浮かべた。



 「フェリア、よろしくねー」



 何に対しても怒らない友人だとは大間違いだった。それでも私の親友の頼み。答えようと口を開くと同時に、聞き覚えのない声が聞こえた。



 「皆さん席に座ってください」



 教室に入ってきたのはロングスカートのスーツに、鍔の広い三角帽子をかぶった女性。赤いメガネをかけて髪を一つに結んでいる。


 彼女の指示に従って生徒は席に着いた。


 黒板の前までやってきて、生徒を見渡した。



 「私はミランダ。このクラスの担任を務めます。ここでは50年間務めています。よろしくお願いします」



 その名前を聞いて生徒は全員怯えた。対して私は尊敬の眼差しを向けていた。


 ミランダ先生だ! この方は国で一桁に必ず入る程魔法の腕前がある。平民なのに強い姿が憧れなのだ。



 「サインもらえるかな……」


 「……私はそう言うフェリアを尊敬するけどねー」



 ソーニャは先生が怖いらしい。なんでかな? ただ貴族を含む悪い奴を全員粛正しただけなのに。


 ミランダ先生は怯える生徒をものともせず、説明を始める。



 「では初回の授業を始めます。初回の授業は……使い魔召喚です」



 さっきの静かな空気は霧散して、喜びと活気に満ち溢れた。周りの人達でこんな使い魔がいいなーとかを話しているのだろう。

 だって使い魔は魔法使いの化身と呼ばれるほど大切なのだから。でも……



 「楽しみだねー、フェリアー」



 私はそおっと左隣を見る。目に映るのは燕尾服を着た黒髪に紅の瞳を持つ男。

 人間離れした容姿で、耳は先が尖ってる。



 「どうかしましたか、姫?」



 私にはアルガスという使い魔が、もういるのだ。


 喜ぶ空気に私は馴染めなかった。

読んでくださりありがとうございました!

面白いと思ったら、下の★★★★★で評価してくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ